1章

二重でパーティー追放!?


 パーティ追放宣言を受けた俺は、そのまま路地裏にて状況把握をしていた。



「武器の切れ味普通、装備特に異常なし。……所持金1,023G」



 とはいえ、把握することは少ない。

 

 俺の住んでいる大国リムモでは年々モンスターが増加傾向にあり、冒険者志望の猛者たちも自然と集まってくる。

 故に、ギルドが新しくて使い勝手が良いのはもちろんのこと、武器屋、防具屋、マジックアイテム売り場などなど施設も周辺国と比べて一番って言われるほど整っているんだ。すごいだろう。


 ……まあ、金がなければただの建物だ。


 今、俺が把握しなきゃいけないことといえば、ソロハンターになってしまったことくらいじゃないか?

 他に、何を把握すれば良いんだ?



 宿の宿泊料金か?

 素泊まりでも3,000Gほどかかるのは知っているぞ。


 武器の切れ味を上げる手入れ料か?

 砥石はジャンに預けっぱなしだから買わないとな。でも、安くて10,000G、依頼すれば5,000Gはかかる。


 それとも、ジャンを庇った時にできた足の怪我を治してもらうか?

 でも、ヒーラーのセリーヌはもう居ないし、医療施設に駆け込むしか……ああ、金がないんだった。



「やめろ、俺。考えるな、考えるな……」



 この世は金が全てなのか?


 いや、違うはず。だって、この心配性ステータスは「どれだけ金を積まれでも治せない」と言われているしな。

 金が全てなんて、そんなこと……。



 なんて、本当はわかってる。お金がないと、何もできないことくらい。

 でも、深く考えるとキリがないんだ。



 パーティを一旦追放されると、迷惑防止法によって2週間は自らの申請でダンジョンに行くことが許されないのだとか。


 過去に、追放された腹いせにパーティメンバーを八つ裂きにしたやつがいたんだと! 全く、迷惑極まりないよな。



 そのせいで、俺は金欠だ。

 ……やべ、腹が減ってきた。



「とりあえず、落ち着いてモンスター討伐して飯を……ダメだ、ダンジョンに行けねえ。じゃあ、木の実を……いや、それもダンジョン内だ。大人しく、川の水でも飲もう」



 何か行動していた方が、気が紛れそうだ。


 立ち上がった俺は、路地裏を抜けて城下町の外れにある河川敷を目指す。



 この1,023Gは、最後の砦だと思おう。絶対に使っちゃダメだ。


 そうだ。俺に何か会った時のために故郷に置いてきた妹に取っておこう。

 それは、幼馴染のセリーヌに……おっと、それはダメだ。これ以上迷惑をかけてどうする。



 ああ、セリーヌのお母様ごめんなさい。「頑張っておいでね」って背中を押してくださったのに俺ときたら。


 やはり、「セリーヌの婚約者はイヴしかいない」って言われた時に断っておいて正解だった。

 こんなことが起きるとは思っていなかったが、まあ心配性もたまには役に立つもんだな。



「お前、今日からパーティを抜けろ。この役立たず」

「……はい、ごめんなさい!」



 なんて、悶々と考えながら移動していると、俺の耳に今一番聞きたくない言葉が入ってきた。



 反射的に言い返したけど、そもそも俺はすでに追放されてますけど……?

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