第215話 10:ゲーム!


 土曜日。

 コンクール開催まで残り四週間。


 めきめきとレベルアップしているゆい。コンピュータのように完璧な演奏を繰り返すみさき。そして、遊びに来た瑠海。仲良しトリオに龍誠と結衣を加えて、


「マリアパーティ?」


 と呟いたのはゆい。


 本日の練習はおやすみ。

 この日、天童家はゲームをすることにした。


 マリアパーティ。

 大人気マリアシリーズのパーティゲーム。


 ルールは簡単。

 サイコロを振ってスゴロクをクルクル。ミニゲームと各マスのイベントでコインを集めてスターを手に入れる。最終的にコインとスターが多かった人の勝ち!


「このゲームは四人用です」


 結衣は重要なことを伝える。


「プレイヤは五人います。意味は分かりますか?」


 五人の間に緊張が走る。

 ゆいはゴクリと喉を鳴らして、震える声で言った。


「……わいろ、ですか?」

「昭和ですね。令和は実力主義の世界ですよ」

「……ほう!」


 ゆいちゃん絶対分かってないでしょ。

 瑠海はニコニコ笑顔の裏で毒を吐いた。


「瑠海さん、なにか?」

「えっ、なんでもないですよー?」


 ドキッとする瑠海。

 瑠海は観察眼の鋭い結衣が少しだけ苦手だ。


 ……かっこいいけど、ちょっと怖いんだよね。


「最初は私が譲ります。次からは、ビリだった人が交代です」

「じゃあ次はゆいちゃんで決まりだね」

「弱い犬ほど声が高い」

「るみみんの声は低い方だと思うけど?」


 笑顔でバチバチする二人。周りにゆいとみさきしか子供が居ない状況では、瑠海も猫を被らない。


「私は、あーくんの相手をしていますね」

 

 まもなく一歳になる長男のあーくん。まだまだ夜泣きをするけれど、起きている時は元気いっぱい。目が離せないお年頃。


「俺が見てようか?」

「龍誠くんはダメです。いつも泣かせますから」

「そんなに泣かせてないだろ」

「お客さんの前でワガママ言わないでください」


 分かったよ、と納得する龍誠。

 そんなやりとりを見て、瑠海はラブラブだな羨ましいなあと思いながら、コントローラを握る。


「まずはキャラを選ぶのか」

「あれ、りょーくんもやったこと無いんですか?」

「おう、全員初プレイだ」

「やっぱりゆいちゃんがビリか」

「なっ!」


 左端に座ったゆいが遺憾の意を示す。

 瑠海は涼しい顔でキャラを見て、一番アイドルっぽいキノコの女の子を選んだ。


 瑠海の右隣に座る龍誠はマリアを選択して、龍誠の膝の上に座るみさきは、マリアの妹であるルイズを選択した。


 ところで、なぜゲームをすることになったのか。

 

 もちろん偶然ではない。

 背景には、龍誠と結衣の作戦がある。


 題して、みさきを本気にさせようプロジェクト。

 

 遡ること数日。

 始まりは、緊急保護者会議だった。

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