第161話 未来のこと(中)


 その日、みさきはずっと机に突っ伏していた。

 普段はキリッとしていて、授業も真面目に聞いているみさきがダラーンとしている姿は、ちょっとした事件でもあった。


 みさきちゃんどうしたのかなー?

 ねぶそくかなー?


 クラスメイト達はみさきのことが気になって仕方ない。


 みさきちゃんだいじょうぶー?

 みさきちゃんげんきー?


「……りょーくん」


 りょーくんかー!

 ゆいちゃんのせいかとおもった。

 なにもしてません!


「ゆいちゃん、うそつき」

「ええ!?」


 やっぱりー!

 あやまれー!

 ゆいちゃんあやまれー!


「じじつむこん!」


 なにがだいこんだ!

 はなしそらすなー!


「なにもしてません!」


 あーやまれ!

 あーやまれ!


「な、なにも……」


 あやまれよ!

 わるいことしたらあやまるんだよ!


「……うぅ、ぐすん。なにもしてないもん」

「みんな! ちょっとしずかにして!」


 ゆいちゃんないてるよー!

 いいすぎだよー!


「うぅ、るみちゃん。ありがとう」

「るみみん☆ るみるみはえがおのアイドル!」

「るみちゃん……」

「で、ゆいちゃんなにしたの?」

「…………」


 うわ、とどめさしやがった。

 なるほど、絶望は希望の上にあるとはよく言ったものだ。


「ええっと、皆? 授業中だから後にしようね」


 せんせーどらーい!

 かわいてるー!

 おはだもー!


「はい中断、授業を中断します。今お肌が乾いてるって言った子、正直に手を挙げなさい」




 ということがあって、




「きいてください!」

「はい、どうしましたか?」


 その日の夜、ご飯を食べた後。

 ゆいは結衣に相談した。


「がっこうでいじめをうけました!」


 結衣は耳を疑った。

 いつものように帰宅して、ゆいの姿をひと目見た時から何かあったことは分かっていたけれど、まさかこんな言葉が出てくるとは思わなかった。


 いじめ。

 それは親が最も敏感になる言葉だ。とりわけ娘を溺愛している結衣が受けた衝撃は大きい。


 ……おち、お、おち、おちつきなさい。

 ま、まず、まずは事情を聞きましょう。


「詳しく話してください」


 娘が安心出来るよう努めて優しい表情を浮かべる結衣。

 ゆいは険しい表情をして、学校で受けた屈辱的な仕打ちをありありと話した。


「なるほど、そんなことがあったのですか」


 話を聞き終えて、結衣は安心感と共に脱力した。

 いじめなんて表現をするから警戒したけれど、蓋を開けてみれば微笑ましい内容だった。娘の人望については嘆くべきだろうけれど、むしろ級友達と気の置けない仲であるのが伺えて嬉しくもある。


 さておき、返事を考えよう。

 ゆいの話では、なんだか知らないけれどみさきが怒っていて、その原因がゆいにあると言っているそうだ。しかしゆいには全く心当たりが無いらしい。


 結衣はゆいのことを誰よりも大事に想っている。

 だから、ゆいの言葉なら無条件で信じる。


 みさきという少女のことも少しは知っている。

 複雑な関係ではあるが、戸籍上は親であり、半年間は共に過ごしたのだ。印象としては、とても大人しくて、とても大人びた女の子だった。


 その二人が喧嘩した。

 ゆいは身に覚えがないけれど、みさきちゃん曰く、ゆいが嘘を吐いたらしい。


 結衣は娘の話を思い出しながら何度か頷いて、とても優しい声で言った。

 

「ゆい、いったい何をやらかしたのですか?」

「ママまで!?」


 まさかの裏切りを受けて、ゆいは涙目になる。

 特大の色眼鏡を持ってしても、結衣はゆいが何かしたのだと判断した。


「ゆい、たとえ悪気の無い言葉でも、嫌な思いをさせてしまうことがあります」

「……なんで?」

「なぜ、ですか。良い質問ですね」


 結衣は冷や汗をかく。

 親として適切な発言を試みたものの、その言葉は自らの胸に突き刺さっている。なぜ悪意の無い言葉が他者の気分を害するのか。それが分かるのなら、きっと結衣には多くの友人がいたはずだ。


 つまり彼女は答えを持っていないのである。


「それは、つまり、そう……一人前のレディになる為に、自ら答えを見つけなければならないことです」

「なるほど!」


 果たして彼女はごまかした。

 キラキラした娘の目を見て、結衣の心がチクチクと痛む。

 

「かんがえます!」


 ああ、どこまでも純粋なゆい。

 どうか私のように狡猾な大人には育たないでください。


 そう願いながら、結衣はウーンと声を出す娘に声をかける。


「ひとまず、昨日みさきとした話を思い出してみましょうか」

「おもいだします!」


 元気よく返事をして、ゆいは回想を始めた。


 きのうは、いつものようにがっこうへいった。

 みさきとあって、おはようっていった。

 みさきも、おはようっていった。

 そのあと、きのうジュースをのんだはなしをした。ファンタシリーズにはいろんなあじがあって、あたしはオレンジがすきだといった。


「はっ!? もしかしてみさきはオレンジがきらいでおこってる!?」

「それは無いと思います。続けてください」

「はい!」


 ビシっと手を挙げるゆい。続けて帰宅するまでの会話を伝えたけれど、結衣には特におかしな点が見つけられなかった。


 ……確か、みさきはゆいに「嘘つき」と言って怒っていたはずです。


 みさきが怒るような嘘とは何だろうか。

 それ以前に、みさきの怒る姿が想像できない。


 一緒に暮らしていた時、ゆいが勝手にみさきのプリンを食べてもケロッとしていたし、みさきが読んでいた漫画をゆいが「かして!」と言って強奪した時も表情ひとつ変えなかった。


 結衣は娘のガサツな部分をどう矯正しようか考えつつ、みさきが怒る理由を探すけれど、やはり見つからない。


「そういえば、みさき、ぼーっとしてた」

「というと?」

「きのうね、なんかね、ふわふわしてた」

「なるほど」


 上の空だったということだろう。

 つまり、ゆいの知らないところで何かあったということだ。


 ……天童くんに、何か。


 一瞬だけ考えて、雑念を払うために唇を噛む。それと同時に、真っ先に考えるべき可能性を無視していたことに気が付いた。みさきが態度に現れる程の感情を持つとすれば、それは彼と関係することである可能性が高い。


 ……電話してみましょうか。


「ママ?」

「はい、どうしましたか?」

「……ねむい?」

「いえ、まだまだ元気ですよ」


 ゆいの言葉にハッとして、結衣はドンと胸を張って見せた。


「……」


 じーっと見ているゆい。

 笑顔の裏で冷や汗を流す結衣。


「おさらあらいます!」


 元気よく言ったゆい。

 今日もママは疲れてるみたいだから、お手伝いしよう!


「はい、ありがとうございます」


 苦笑いひとつ。

 注意してはいるのだけれど、最近は娘に心配させてしまうことが多い。

 

 ああそれにしても、なんと良い子に育ってくれたのでしょう。この優しさと心遣いを少しでも同年代の子に向けられたら……。


「そうだ!」

「どうしましたか?」

「えっとね、みさきに言った気がする!」


 何か思い出したらしい。


「おてつだい! りょーくんもよろこぶかもって!」


 なるほど、彼なら泣いて喜びそうなものだ。

 しかし手伝うもなにも、あの家での家事は彼女が担当しているのではないのか。


 ……やはり、電話してみましょうか。


 いやいや電話して何を聞くというのか。調子はどうですかと問うたところで求めている答えなど得られるはずがない。ならばとストレートな聞き方をしても、あやふやにされてしまうだけだ。


 そもそも彼の傍には大人がもう一人いるのだ。

 何か悩み事があったとして、ただの友人に出る幕は無いだろう。


「そうだ!」


 また何か思い出したらしい。


「みさきね、まゆちゃんがとーきょーいったって言ってた!」

「東京、ですか?」

「マンガかくって!」

「なるほど……?」


 つまり、今の彼はみさきと二人きりということだろうか。加えて彼一人では手に余る出来事が起きた。


 仮にそうなのだとしたら……いや、現状では何もかも憶測でしかない。


「分かりました。ひとまず様子を見ましょう」

「ようす?」

「はい、明日になってもみさきの機嫌が直っていなければ教えてください。ママに考えがあります」


 その言葉を聞いて、ゆいの目がパァっと輝く。


「はい!」


 これでもう安心ね!

 だってママに出来ないことはないんだから!


 そんな心の声が聞こえてくるかのような表情を向けられて、結衣は少しこそばゆい。


「それでは、お皿を洗いましょうか」

「はい!」



 *



 失敗は続くものだ。

 きっと人は失敗に関する何らかの要素を有していて、数値化されたこれが一定の値を超えた時に失敗する。そして、この値を回復しない限り失敗を繰り返す。


 手っ取り早い回復手段は休むことである。

 心安らぐ場所で、好きなことに時間を使えば良い。


 だが龍誠の場合、その回復手段こそが彼を追い詰める最もな要因となっている。


 では、回復手段を持たない人はどうなるか。

 最初は取るに足らない程度だった失敗。それが徐々に大きな失敗へと変わり、やがて取り返しの付かないような失敗に繋がる。


 そうなった時、人は自分を奮い立たせる。

 このままじゃダメだ。そう思った時、人は信じられないくらい大きな力を発揮する。


 だが、もしも初めから奮い立っていたとしたら?

 小さな失敗を自覚した瞬間から、このままじゃダメだと思っていたとしたら?


 それは重圧となり、最終的に人を押し潰す。

 そして龍誠にはその経験がある。


 だからこそ強く思ってしまう。

 だからこそ重くのしかかってしまう。


 龍誠がみさきの為に出来ることはなんだろう。


 勉強。

 みさきは一度見れば覚える。


 運動。

 みさきは一度見れば覚える。


 料理。

 みさきは一度見れば覚える。


 誰にも教えられていないことでさえ、常軌を逸した思考能力で解決してしまう。身長や腕力といった弱点でさえ、みさきにとっては手間をひとつ増やす程度の障害でしか無い。


 残っているのは金を出すことだけだ。


 それではダメだ。

 そんなのはダメだ。


 とはいえ他に出来ることは無い。

 ならば、せめて少しでも多くの金を稼ごう。


 こういった使命感から龍誠は仕事に驚異的な集中力を発揮した。しかしそれは、小さなミスが命取りとなる彼の仕事では致命的だった。


 ひとつのミスが集中を焦燥へ変え、焦燥は多くのミスを生み出す。何をしても上手くいかなくなる。暗い海の底から海面を目指しているかのように、出口の場所も自分が向いている方向さえも分からないまま、もがくことしかできなくなる。永遠と苦しみが増すだけの状況に、心が擦り減っていく。


 当然、彼の心境はみさきに伝わっていた。


 りょーくんがげんきない。

 なにかしたい。


 しかし、それは逆に龍誠を追い詰めた。

 みさきが頑張る程に、彼はみさきの為に金を稼ぐことしか出来ないと思い知らされる。そして、その為の仕事が上手くいかないことに焦燥する。みさきは頑張っても元気にならない龍誠を見て落ち込み、龍誠もまた落ち込んでいるみさきを見て自分を責める。


 急激なストレスが彼を襲っていた。

 いったいどうしてこんなことになったのだろう。


 その答えは簡単で、ずっと二人を支えてきた人がいなくなったからだ。それ程までに小日向檀という存在は大きかった。


 もちろん、龍誠はそれを自覚している。

 だが後悔はしていない。


 実のところ、彼には分っていた。

 いつか必ず自分の不甲斐なさを思い知らされる日が来ると心のどこかで確信していた。


 そもそも、本来なら最初からこうなっていたはずなのだ。無計画に子供を育てると決めた直後には、現実に打ちのめされるはずだった。だが奇跡的な出会いが連続したことで、彼は今日までやってこられた。


 逆に言えば、それくらいの負担を彼女に肩代わりさせていたのだ。それを自覚しているからこそ、彼は彼女と共に生きることを選べなかった。自分のことを誰よりも分かっているからこそ、その全てを背負わせる覚悟を決めることなんて、彼には出来なかった。


「……」

「……」


 いつも楽しかった夜食の時間。

 今日は、とても居心地が悪い。


「……みさき」


 やがて沈黙に耐えかねた龍誠が声をかけると、みさきは嬉しそうに顔をあげた。その無垢な表情が眩しくて、彼は直前まで浮かんでいた言葉を失ってしまう。


「……悪い、なんでもない」

「……ん」


 しょんぼりして下を向いたみさき。

 いつもなら二杯目に突入しているはずのご飯は、しかし未だ一杯目が半分にすら減っていない。


 檀が部屋を去ってから僅か三日。それだけの時間しか経っていないにも関わらず、まるで堰き止められていた物が流れ込んだかのように事態は急変した。


 どうにかしたいという思いがある。

 元気になって欲しいという思いがある。


 ただ、二人とも方法が分からない。

 結果として、重苦しい空気を受け入れざるを得なかった。


 そして、

 すっかり静まり返った部屋に、来客を知らせる音が鳴り響いた。


「誰だろう。ちょっと見てくる」

「……ん」


 龍誠は重たい動きで立ち上がった。

 その背中を目で追いかけるみさき。


 なんだかそのままりょーくんが居なくなってしまうような気がして、みさきも慌てて椅子から飛び降りた。


「どうした? 食べてていいぞ」


 足音に振り向いた龍誠。

 みさきは口を一の字にして首を振った。


 その様子を見て、龍誠は懐かしいと思った。

 出会った頃のみさきはいつも口を一の字にしていて、意思表示は頷くか首を振るかだけだった。


「お客さん、みさきの友達かもな」


 静かに微笑みかける。


「んっ」


 みさきは元気良く頷いた。

 りょーくんが少しでも笑った。それだけで嬉しい。その笑顔の裏側に何があるかなんてみさきには想像も出来ない。逆に、みさきの笑顔の裏側には同じ笑顔だけがあると龍誠には分かる。それがまた自己嫌悪へと繋がった。


 そのまま二人は正反対の笑顔を浮かべて見つめ合っていた。そこへ、二度目の音が鳴り響く。


「あーはいはい。どちら様ですか?」


 ハッとして、龍誠は来客に問いかける。

 機械には外の映像が映し出されていて、そこには一人の女性が立っていた。


「こんばんは」


 仕事帰りといった格好の戸崎結衣。

 時刻は九時を回ったところで、こんな時間に彼女が訪れるのは珍しい。


「どうした、こんな時間に」

「クレームです」

「クレーム?」

「文句を言いに来ました」


 何かしたか? 龍誠は自問するけれど、心当たりは無い。


「とにかく部屋に上がらせてください」

「……分かった」


 どういうことだろうか。心の中で首を傾けながら機械を操作して、セキュリティを解除した。あとは少し待てば部屋のドアがノックされるだろう。


「ゆいちゃん?」

「ゆいちゃんのママの方だ。何か話があるらしい」

「……ん」


 みさきは何か察したような表情をして、口を一の字にしたまま静かに頷いた。

 

「ゆいちゃんと何かあったのか?」

「……」


 みさきは何も答えず、クルリと後ろを向く。

 そのままとてとて走って、ソファの裏に隠れた。


 ……なんなんだ?


 龍誠はみさきの背中を見ながら困惑する。

 みさきは隠れているつもりだが、丸見えだった。


「みさき、どうしたんだ?」


 返事は無い。

 龍誠はいっそ困惑しながら、なんとか頭の中で状況を整理しようとした。


 突然結衣が現れて、文句を言いに来たと一言。

 みさきは何かを知っている様子で、だけど話したくないらしい。


 やがて、コンコンという音がした。

 果たして何も分からないまま、龍誠はドアを開ける。


 外は暗くて、だけど渡り廊下は各部屋から漏れ出た光で少し明るい。そこに背筋を伸ばして立っていた戸崎結衣は、龍誠を一目見た途端に唖然とした表情を見せた。


「どうした?」

「……いえ」


 結衣は人の感情を色として認識している。そうでなくとも、ゆいの話からある程度のことは予測していた。そのうえで、今見た彼の状態は想像を遥かに超えていた。


 いったい何があったのですか?

 直ぐにでも問いたい気持ちを抑えて、結衣は用意した言葉を言う。


「ゆいとみさきのことで、お話があります」

「そうか。それ、みさきの居るところでも大丈夫か?」


 結衣は少し考える素振りを見せて、


「場所を変えましょう。近くの公園で待っているので、みさきには上手く伝えてください」

「分かった」


 その返事を確認した後、直ぐに踵を返した。

 彼女の姿が見えなくなった後、龍誠もみさきの元へ向かう。


「……ない」


 龍誠の足音を聞いたみさきは、少し大きな声で言った。


「ええっと……みさき?」

「いないっ」


 どうやらここにみさき居ないらしい。


「りょーくん、ちょっと出かけてくるな」

「……」


 返事は無い。

 龍誠は少しの間みさきの背中を見つめて、やがて俯きながら目を逸らした。


「……それじゃ」


 小さな声で言って、ドアを目指す。

 その気配を察したみさきは、ひょっこり顔を出して、その背を見送った。


 とん、とん、バタン。


 足音が遠ざかって、ドアが閉じる。

 みさきは部屋で一人になった。


 部屋は静かで、とても広い。

 広くて、広くて、寂しい。


 みさきは立ち上がって、檀の部屋を目指した。

 ドアを開けて、中に入る。


 いつもの場所に目を向けても、そこには何も無い。

 暗くて見えないだけかと思って、電気を付ける。


 やっぱり、何も無い。

 クローゼットと箪笥、それからベッドが置いてあるだけで、足場を埋めるようにして置かれていた漫画と、沢山の道具はどこにも見当たらない。


 みさきは部屋を出て、自分の部屋まで走った。

 前の部屋に居た時に作ったダンボール箱に手を入れて、大きな封筒を抜き出す。


 その中には、紙が入っている。

 紙には、りょーくんの絵が沢山かいてある。


 最初は下手くそで、少しずつ上手くなった絵。

 まゆちゃんに教えてもらった絵。


 まゆちゃんは東京に行った。

 漫画を描いて、夢を叶えて、沢山の人を笑顔にするって言ってた。


 沢山の人って、誰だろう。

 しらない、わからない。


 みさきはただ、りょーくんのことを笑顔にして欲しいと、そう思った。


「……ゆいちゃん」


 縋るような思いで、みさきは呟いた。

 結衣が来たと知った時、みさきはゆいが呼んだのだと気付いた。

 

 そして、ゆいはいつも言っていた。

 ママはすごいんだから!


 なら、りょーくんも助けてくれるかもしれない。

 そう思って、みさきは隠れた。邪魔になるかもしれないと思ったから。


「……うそ、じゃない?」


 半信半疑で呟いて、みさきは封筒をダンボール箱にしまった。

 それから急いで歯磨きをして、お風呂に入って、着替えて、ベッドに飛び込んだ。


 布団に潜って、頭を隠して目を閉じる。

 一人で待っているのは怖かったから、寝ることにしたのだ。


 きっと目が覚めたらりょーくんが元気になっていると、そう信じて。


 

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