第101話 第六話:みさきとアイドル
「るみみん☆ ……るーみみみん☆ ……るっみ☆みみん! ……うーん」
授業の間の休憩時間。
瑠海は様々なポーズでるみみんるみみん☆
しかし、どうやら納得できない様子。
「……みみ?」
「るみみん!」
瑠海と近い席に座っているみさきが呟くと、その隣でゆいはるみみん☆
二人の声を聞いた瑠海はサッと体の向きを変えて、笑顔を浮かべる。
「るーみみん☆」
「るみみん!」
瑠海のマネをしてポーズを取るゆい。
みさきも少し遅れて、恰好だけマネしてみた。
「みんなのアイドル、るみるみだよ☆」
みさきの目には、瑠海の周りにキラキラ輝く星が見えた。
なんだろうと思いながら、みさきはポツリと言う。
「あいどる?」
「るみみん!」
アイドルって何? 首を傾けるみさきの隣でゆいはるみみんした。どうやら気に入ったらしい。
「アイドルはね、みんなをえがおにするの!」
みさきの質問に答える瑠海。
「うたって、おどって、にっこりして、る~みみみん☆」
それは瑠海の中で完璧な、これ以上は無い回答。
だがみさきには上手く伝わらなかった。
「……んー?」
難しい顔になるみさき。
瑠海は
「るーみみん☆ みさき、にっこりして!」
「るみみん!」
みさきと目を合わせて、るみみん☆と笑う瑠海。
その隣でゆいはるみみん☆
「にっこり?」
「るーみみん☆」
「るみみん!」
みさきに向かって瑠海はるみみん☆。
みさきは良く分からなくて、パチパチと瞬きをした。
その隣でゆいはるみみん☆
「……」
表情の変わらないみさきを見て、瑠海の笑顔がちょっぴり硬くなる。
どうして? 瑠海と一緒にるみみんして笑顔にならなかったファンなんて今迄いなかったのに……みさき、強敵ね!
「るみみんっ☆」
「るみみん!」
「……」
瑠海は元気にるみみん☆
その隣でゆいもるみみん☆
みさきは……。
「る~みみみん☆」
「るみみん!」
「……ん?」
瑠海は元気にる~みみみん☆
その隣でゆいもるみみん☆
みさきは……。
「る、るーみみんっ☆」
「るみみん!」
「……」
瑠海は少し苦しそうにるーみみん☆
その隣でゆいもるみみん☆
みさきは……。
「るみ、みん☆」
「るみみん!」
「……」
瑠海は少し声を震わせてるみ、みん☆
その隣でゆいもるみみん☆
みさきは……。
「る、るみ、み……うわああん、みさきがわらってくれないぃぃぃ」
「るみみ――っ!?」
ついに泣き出してしまった瑠海。
その隣でるみみんしていたゆいは困惑してポカンと口を開く。
流石のみさきも驚いて瞬きの回数が増えた。
瑠海がピギィと大きな声で泣くから、周りに居た子供達もなんだなんだと注目し始めた。
それでようやく異変に気付いた岡本が、慌てて瑠海に駆け寄る。
「どうしたの? 大丈夫?」
ピギィとさらに大きな声で泣く瑠海。
「大丈夫だよ、泣かないで」
「ないてない!」
と泣きながら言う瑠海。
「アイドルは、いつも、わらってるの! るみみんっ☆」
グッと力強く唇を噛んで、精一杯の強がりをみせる瑠海。
しかし涙は次から次へと止まらない。
「えっと、何があったの?」
「これは、るみのしれんっ」
何が何やら分からなくて困惑する岡本。他の子に事情を聞こうと、いつも一緒に居る戸崎姉妹の方を見るけれど、二人も上手く状況が出来ていないような表情をしている。
瑠海はズズズッと鼻を鳴らして、ハンカチでペチペチ涙を拭いた瑠海。
ニコっと笑って、
「るみみんっ☆」
アイドルの笑顔は皆を笑顔にするもの。
それが出来なきゃ、瑠海はアイドルに何かなれない。
だからこれは試練! 瑠海がアイドルになるための試練!
「る~みみん☆」
「……」
やはり笑ってくれないみさき。いや、この状況ではみさきが相手でなくとも笑顔にすることは難しいだろう。だけど、瑠海は諦めるわけにはいかない!
「る~~みみん☆」
「えっと、瑠海ちゃんごめんね。そろそろ授業が始まる時間だよ」
「ロスタイム!」
「えぇぇ」
「ロスタイムぅ!」
有無を言わせぬ迫力を感じて苦笑いする岡本。
岡本には分からないが、瑠海の中にはどうしても譲れない理由があるのだ。
「……じゃあ、あと二分だけだよ?」
「るみみん☆」
***
果たして、みさきは笑わなかった。
そもそもみさきは滅多に笑わない。
嬉しいと自然に頬が緩むし、龍誠に褒められたらコッソリ飛び跳ねて喜びを表現するくらい感情豊かではあるのだが、それを人に見せることは少ない。というか、ほぼ皆無である。
るみみんしながら瑠海は何となくそれを悟った。
しかし、そんな相手を笑顔にしてこそ真のアイドル!
打倒みさき!
一方でみさきは……。
「みさき、今日は学校どうだった?」
「んー、あいどる?」
「アイドル? 芸能人でも来たのか?」
ふるふる。
「あー、そういや瑠海ちゃんだっけ? その子と何かあったのか」
「ん、いろいろ」
「へー、何があったんだ?」
「るーみみん?」
「ははは、なんだそれ。可愛いな」
「かわいい?」
「おう、超かわいいぜ。みさき」
「……ひひ。るみみんっ☆」
龍誠に可愛いと言われたのが嬉しくて、にっこり笑ってるみみんしていたのだった。
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