第21話 人生ゲームを作った日(3)

 * 3日目 *



 パソコンは0と1しか理解できない。

 だが人間は0と1だけで記述された命令を理解できない。そこで生み出されたのが、プログラミング言語だった。


 プログラムとは計算機である。数字を保存して、人間が決めたルールに基いて計算をするだけの存在である。


 他の機能は、一切存在していない。


「……マジかよ」


 一通りの勉強を終えて、俺は途方に暮れていた。どれだけ本を読んでも、書いてあるのは計算の方法だけ。


 俺は、既にプログラミングの全てを理解したと言っても過言ではない。


 教えてやろう。

 プログラミングの全てを!


 そのいち。

 変数を作る。


 変数ってのは数字に名前を付ける機能だ。


 例えば、


 a = 10;


 この一行で、以後 a は 10 と同じ扱いになる。もちろん値の変更も可能で、その場合は、 a = 5 とか、 a = a + 1 とか書けば良い。ただの算数だ。みさきでも分かる。


 その2、ルールを作る。

 

 if ( a > 5 ) a = 5;

 else a = 0;


 この二行で次のルールが定義された。


 aが5より大の場合、aが5になる。

 aが5以下の場合、aが0になる。


 流石に中学生レベルだろうか。いや、数学的な表現があるだけで、みさきでも分かるレベルだろう。


 その3、そんなものはない。


 以上なのだ。

 他の機能は、同じ処理を繰り返す機能とか、ある処理をまとめる機能とか、プログラミングを簡単にする為の機能だ。


 数字を決めて、ルールを作る。

 これがプログラミングの全てだった。


 もちろん数字とか文字を表示する機能は用意されているが「サイコロを振る」みたいな魔法の機能は存在しない。

 

「……どうすりゃいいんだよ」


 三日目。

 俺に与えられた時間は、半分を割り込もうとしていた。


 もちろん進捗はある。タイピングを覚えて、プログラミングの基礎を知った。しかし分かったのは、何も分からないということだけだった。

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