第17話
だけどそんな決意も虚しく、月島はことある事に僕に絡んできた。
まあ絡んできても適当にあしらうから別にいい。ただ、旭といる時に絡まれるのが、すごく嫌だ。
だって月島は、僕と月島が特別みたいな、暗に含んだ言い方をする。
そのせいで日に日に旭が、僕と月島の関係に疑問を持ち始めていた。
今日も講義が終わって旭と待ち合わせている中庭へ向かおうとした所を、月島に腕を掴まれて邪魔をされた。
僕は、ムッとして腕を引くけど、月島は細身のくせに力が強くてビクともしない。
「なに?離してよ」
「嫌だね。なあ乃亜くん、たまには俺に付き合ってくれよ」
「はあ?なんで僕がそんなことせなあかんの?待ち合わせしてるから離して」
「待ち合わせって、あの兄貴だろ?君たち、いつも一緒にいるよな。でも乃亜くんの兄貴…人間だろ?」
「ちょっ…」
僕は月島に腕を掴まれたまま、人気のない廊下の隅へと移動する。
「そういうことを人の前で言うなっ」
月島の手を、腕を振って払い退けながら、僕は月島を睨みつける。
月島は、口端を釣り上げて尖る犬歯を見せた。
「なんで?俺は別に周りにバレてもいいんだぜ?」
「は?そんなことになれば、あんただって人間社会に居づらくなるやん」
「気づいた奴の血を、片っ端から抜けばいい」
「アホか…。そんなことをすれば鬼退治の奴が来るよ」
「鬼退治?」
いつもヘラヘラと人を馬鹿にしたような態度の月島が、険しい顔をする。
「知らんの?あいつ…問答無用で斬りかかってくる…。僕は、女の吸血鬼が殺されてる所を見たんだ。実際に僕も殺されかけたし…」
「なんだ、そいつ…。強いのか?」
「強い。僕は戦い方を知らないから何も出来んかったけど、あんたもヤバいと思うよ」
「ちっ…」
月島は小さく舌打ちをして、何かを考える素振りをする。
そして再び僕の腕を掴んで、鋭い視線を向けてきた。
「そんな奴がいるなら猶のこと、乃亜くん、俺の傍にいろよ。俺と乃亜くんが組めば、そいつをやっつけられるんじゃないか?」
僕はもう一度腕を振り払って、月島から距離を取る。
「いやだ。勝手に狩られればいいやん。だってあんた、人間を襲ってるんやろ?僕は人間を襲ったことは一度もない。鬼退治の奴も、そのことを知ってる。だから、あんたと一緒にいる方が僕は危険なんや」
「乃亜くん…俺ら一族を裏切るのか?」
「裏切るも何も…僕は人間や。血を吸うあんたらとは違う。だからもう、僕には関わらんといて…っ」
そう吐き捨てると、僕はその場から全速力で走り去った。
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