第五話 ギルド

宿から出て十分程度。俺はギルドに来ていた。カタリスが誇る中央ギルドだ。❲暁の集い❳の時からお世話になっている。

今はもう抜けてしまっているが、まぁ俺の実力じゃそんなもんかな。自分で自分を卑下して気持ちが暗くなりながらも俺はギルドに入った。

相変わらずここの扉はでかいな。

俺は扉を開けると豪華な空間が広がるホールに向かった。

たくさんの冒険者が今か今かと掲示板の前に群がっている。


「今日の目玉のクエストはこちらでーす!」


「「「「「うおーーーー!!!」」」」」

受付嬢の高い声が聞こえると共に冒険者達が我先にと掲示板に張られた紙を取ろうと争いを始めた。


「相変わらずやってるなぁ.........」


「もう一種の恒例行事みたいになっちゃってますけど、本当は止めてほしいんですよねぇ。」


「フィルミナさん、おはようございます。いやぁ、これがなくなるということは無いんじゃないですかね?」


「セイジさん、おはようございます。でも、これが続いちゃうと新人の子が怖がっちゃうんですよ。」


「まぁ、これも一種の通過試練と考えればいいんじゃないですか?」


「これが試練の一種になってもらっちゃ困るんですよ。」


苦笑しながら俺と話してくれているこの人はフィルミナさん。

このギルドの受付嬢兼看板娘である。

本人はそんなのじゃないんですー!、と否定しているが、実際可愛いし男性冒険者達からの人気がすごいのでそう言われても仕方がない。


「おっといけないいけない。セイジ様、今日はどのクエストを受けますか?」


「そうですね..........今日はソロで討伐を」


「え?」


「えっと、ダメですかね?」


「い、いえいえ全然ダメじゃないです!でも珍しくて。」


すると、フィルミナさんは俺の体を心配そうに見つめた。


「貴方の身体が傷付いてから結構経ちましたが、貴方はあれ以降、ソロで討伐クエストに行かなくなったので。」


「あぁ、まぁ僕にも転期が訪れたんですよ。」


「そうですか.........でも気を付けてくださいね?無茶して傷だらけになって帰ってきてほしく、ないですから。」


涙目になって俺の手を優しく握るフィルミナさん。女性の柔らかい手の感触にドキッとしてしまう。

イカンイカン、俺はおっさんだぞ?こんなのでドキドキしてたらいけない。


「そ、それじゃあ行ってきます。取り敢えずホーンホース、ファングボア、ブラッドラットの討伐で。」


「分かりました。それではカードをかざしてください。」


そう言われ、俺は自分のカードを宝玉にかざす。


「ありがとうございます。お身体に気をつけて下さい。貴方にバルバドスの加護があらんことを。」


受付嬢の定型文だ。だが、これを言われるときと言われないときの差は大きい。


「はい、行ってきます。」


俺はその言葉に答えるようにフィルミナさんに笑顔を向け、ギルドを後にした。










「いやぁ、今日も見せつけてくれますねぇ!」


「だなだな。フィルミナさん、あんな顔セイジさん以外に向けることなんてないしな。」


「いつになったら彼らは結ばれるのだろうか?」


「確かに確かに!早くくっついちゃえばいいのにね!」


「まだまだ時間はかかるんじゃないか?セイジさんはかなーり鈍感だし、フィルミナ嬢は面と向かって言えるほど強くはねぇし。」


「じれってぇよなぁ。」


「てか、本当に気付いてないの?」


「あの様子じゃ多分そうだろう。異性としては見ているようだが勘違いしちゃいけないって思考をそっちに向けようとしていない感はある。」


「あー、確かにそう言うとこあるよね、セイジさん。」


「あーあ、私も彼氏持ってなかったらセイジさんに猛アタックしてたのになぁ......」


「それ彼氏の目の前で言うか?」


「でも実際そうだよな。セイジさんの周りの人って大抵セイジさんのこと..........」


「おっとおっと?このままだとセイジさんが他の人に取られちゃうかも?フィルミナちゃん大丈夫かなぁ?」


「そこ!変なこと言わにゃい!」


「あ、噛んだ。」


「うにゅーーーーーーーー!」







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我ながら書いているフィルミナさんが可愛すぎるのだが?

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