第二話 俺が選んだジョブは......
「フンっ、フンっ、フンっ!」
ブォン ブォン ブォン
俺は一心不乱に鍛錬を行う。
30代のおっさんが今頃鍛錬をして何になるか?
体を鍛えることが趣味?違う。
いつもの日課を行なっているだけ?それも違う。
俺は、ある目的を明日までに果たすため、普段よりもペースを上げてトレーニングを行なっているのだ。
いつもはやっていないことだが。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『了解いたしました。今日からあなたのジョブは、<剣士>です。』
俺は、子供の頃一番なりたかったジョブを選んだ。
よくそこら辺にある木の棒を拾ってきては素振りまがいのことをしていたっけ。
そう懐かしんでいると、また声がした。
『セイジ=レイヴァンドのスキル ジョブチェンジ が使用されました。
次に使用可能になるのは、168時間後です。
おめでとうございます。
セイジ=レイヴァンドは剣士のジョブになったことで、スキルを手に入れました。
スキル名、剣術Lv1、見切りLv1、心眼Lv1、抜刀術Lv1です。
これらのスキルは、使用するごとに熟練度が上がります。
熟練度が一定の数値を超えると、スキルのレベルが上がります。
この時の熟練度は、ジョブポイントにもなります。』
へぇ、そうなのか、ってスキルを手に入れた!?
そんな、あり得るわけがない。だって俺は、あの時適正ジョブが無いって言われて、そして、
「俺は、何にもなれないって、思っていたのに.......。」
俺は、目の前にある白い板のような物に目を向ける。
そこには、
セイジ=レイヴァンド
<ジョブ> 剣士
<スキル>
・ジョブチェンジ クールタイム 168時間
・剣術Lv1
・見切りLv1
・心眼Lv1
・抜刀術Lv1
そう、書かれていた。
俺は、ジョブチェンジによって、職業とスキルを本当に手に入れていた。
「う、うぅぅぅぅぅ........。」
いい歳したおっさんだったが、俺はこの時、自分の願いが叶ったことに喜び、涙を流した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そんなこんなで今に至るのだが、では何故トレーニングを行なっているのか。
それは、俺が剣士のジョブになったことで変わったことがないかを確かめるためだ。
俺はジョブこそ今までなかったが、それなりにダンジョンで剣は扱ってきた。
最初の頃におった傷のせいでそこまで機敏には動けなかったが、やってきた時間だけは誇ることができる。
だから違いもわかるはずだ、と思っていたのだが、
「あんまり変わらないな。」
感覚的にはそこまで変わってはいなかった。
むしろなれ過ぎて変化していないように感じる。
いや、待てよ?
「俺、こんなに剣を振るうことに違和感を感じていなかったか?」
違和感がなさすぎる。まるで剣と自分の体が一体化したような、剣が手に吸い付いてくるかのような感覚だ。
先程までは剣を縦にしか振っていなかったが、今度はあらゆる角度から振ってみる。
「セイッ、ハァ!」
すると、俺はようやく自身の変化を見ることができた。
俺の剣術は、明らかに変わっていたのだ。
今までのような剣に振り回されていたような事はなく、しっかりと自分の意思で、自分の体で剣を操っていると言える物になっていた。
剣を横に振っても剣の重さによって発生するよろめきが無くなり、隙が生まれないようになっていた。
斜めに振ってみれば、今までなったことのない風切り音が響いた。
これが、剣士というジョブの力か。
「た、楽しい。剣を自由自在に振るえるのはこんなにも楽しいことだったのか!」
俺は、剣を振るえることが出来る楽しさを、その時はじめて知った。
だが、すぐに気を引き閉める。
「いけない、平常心。こんなことが何回もあったら、ダンジョンに入った瞬間に殺される。浮かれてはいられない。自分のスキルや剣士について、もっと知らなければ。」
すると、また声が聞こえた。
『ジョブとスキルの説明を行いますか?』
へ!?いきなりなんだ?ジョブとスキルの説明?してもらえるならありがたいが。
『了解いたしました。ではまず、ジョブ〈剣士〉について説明いたします。ジョブ〈剣士〉は、名の通り剣を扱うことに長けたジョブです。剣を使用する際、微弱ながら、攻撃力補正と筋力の増加、剣に秘められたスキルの一部を使用可能となります。』
ほうほう、聞いてみるとやっぱりジョブの恩恵って凄いんだなと思ってしまう。
『次に、スキルについてです。剣術は、剣を扱う技術が上がります。また、剣の型の覚えが微弱ながら、早くなります。見切りは、2秒間だけ、敵の攻撃の予測ラインが見えます。スキルクールタイムは5分です。心眼は、敵の気配を感知することができます。抜刀術は、抜刀する際の時間短縮と、抜刀攻撃の威力が30%上昇します。以上で説明を終わります。』
............とんでもないな、スキルっていうのは。たった四つだが、それだけでも十分過ぎるくらいの効果がある。
よし、頑張ってスキルレベルを上げたり、熟練度を上げたりしよう。
俺は明日の狩りの準備とスキルの感覚を知るために、ひたすらトレーニングを行った。
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