第13話「シェナの過去」

暫くして。

今私はフェンさんの上に座っている。星を本気で捕まえてゆっくり流すつもりらしく、それを阻止するためだ。

「重いだろクソ女!」と暴れるフェンさんの尻を叩き黙らせる。

ずっしりと体重をかけるが所詮40代だ、私の体重は。軽いでしょうが。


「シェナさん、そういえばどうして聖女を志したんですか?」


「え? まぁ……聖力が有るからと言うのもありますが、皆さんを助けるためですよ。私はもともと身体が弱くてですね。いつも寝たきりでした。両親も、姉弟も、そんな私を疎ましく思っていたんです。実は……私クリスティア家の人間なんです……!」


「知ってる。」


「知ってます。」


「知ってるぞ。」


「えぇ!? なんでぇ!?」


思わず驚いてしまう。なんで知ってるんだろう……社交界デビューしかしてないしパーティーにも一回しか行ってないのに。

そう思っているとエリックさんが口を開いた。


「クリスティア家の人間は意外と大胆に子どもの紹介をなされる家系なのですよ。なので町の人は知らないものは居ないでしょう。それに貴族感抜けてませんし……。」


「な、なるほど……。それは私のミスですね。しくじりました。」


こほんと咳ばらいをし話を続ける。


「疎まれていた私に待っていたのは騎士や侍女と同じ未来でした。金儲けのための冒険者登録……その未来のため、病弱な身体を鍛えられ、家事も叩き込まれ、勉学に励まされ、毎日大変でした。16歳の頃冒険者登録をし、其れからは家族にお金を振り込んでいます。それが私です。私のような者を一人でも出したくない。その思いから、私は聖女をしています。一人でも多く救うために。正直な話、私の守りたい対象は人族に限らないので……冒険者には向いてないのですよね。魔族ですら守りたいと感じるんです。流石に仕事と私情は分けてますけど。」


んん、と唸り話し終える。三人は黙ったままだ。

すると下から持ち上げられる。抱き上げられ、フェンさんはそのまま座り、私を膝の上に乗せた。

そしてその後私の頭を撫でた。暖かい……。


「よく頑張ったな、シェナ。お前は頑張り屋さんだな。努力家で眩しくて。だからこそお前には人が付いてくるんだな。」


「そうですよ! 今すぐ、家のことは解消しましょう。私に任せてください。大事な仲間をその場に投げ捨てなど出来ません。」


「な? シェナ。君には人を引き付ける力が有ると言っただろ? 皆君のために動ける人だ。君が惹きつけたんだ。」


皆が私の頭を撫でてくれる。どこかこそばゆくて暖かい。

あぁ、私産まれてきてよかった――。

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