第12話「君のためなら。」

「クラークさん大丈夫ですか?」


手をおろす。少しクラークさんのほっとした表情が目に入った。

クラークさんは「何でもない。気にするな。」とだけ言い、私から手を放す。


「シェナ、俺は君のためなら身を粉にしよう。何が有っても君を守り抜く。大事な仲間だからな。剣も振るえず、魔法も使えないが、守って見せる。」


真剣な眼差しでそういう。そんなこっぱずかしいことを平然と言ってのけるクラークさんはすごいと思った。


「ふふ、なら私だって。クラークさんを守って見せます。こう見えて私、強いんですよ?」


「知っている、聖力ランキングで一位を取っていたな。」


「え、なんで知ってるんですか?」


「俺は皆のことはよく知っているからな。」


そう言って不敵な笑みを浮かべる。まるで、何もかも見透かされているような瞳――。

ぞくりと背筋が撫でられる感覚を覚えた。まさか私の家のことも知っているんじゃないか、そう思うと身体が震える。


「シェナ、寒いか?」


そう言ってジャケットを私にかけてくれる。クラークさんの瞳は優しいものに変わっていた。


「寒くないですよ。」


「いや、震えていた。無理するな……ただでさえ薄着なんだから。」


そう言って視線を逸らす。そんなクラークさんの顔は少し赤く染まっていた。

確かに聖女という職業柄、筋力はそんなになく軽装だ。

鎧もろくにつけれない。

私を心配してくれるクラークさんはやっぱり優しいなぁと思っていると、フェンさんとエリックさんが来た。


「おーい! 何してんだよ~! こんなところで。風邪ひくぞ。」


フェンさんはそう言い私の横に腰を掛ける。


「風邪ひきませんよ、そんなやわじゃありません。」


「女なんだからよえーだろ。」


「夜は少しばかり冷えますから、お体は大事にしてください、シェナさん。聖女とはいえ風邪ひくときはひきますよ。」


そう言ってエリックさんは私に毛布を掛けてくれた。


「あ、ありがとうございます……。」


毛布をぎゅっと握る。やっぱり皆暖かくて。

一層思ったことは。


こ、このパーティ壊したくないから告白できない……!


心の中で涙を零しながら皆で星を見る。きらりと一つ、星が流れた。


「あっ、流れ星……!」


「おー、願えたか?」


「さすがに願えませんよ。一瞬ですし。」


困った様に笑えば、フェンさんは真顔になる。何事? っと思っていると。


「今から星を掴んでゆっくり流れるようにするわ。」


「馬鹿ですか!! 無理に決まってんでしょ!!」


「駄目だ。願い事させる。」


「無茶言うな!!」


ぶーと膨れるフェンさんの頬をつねり、引き留める。


「暴力女! やめろ!」


「減らず口が過ぎますね! この口はぁ!」


ぎりぎりと頬をつねる手に力を込めた。

痛がるフェンさんは面白い。

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