第11話「魔王とは。」

「クラークさんは魔王様はどんな人だと思いますか?」


「ふむ……女喰らいで、魔力が凄くて、暴力的で、残忍なのではないか? そう聞くが。」


「伝わってる伝承は同じのようですね。」


んーと伸びをする。私は口を開き、語りだす。


「ただその伝承は本当なのでしょうか。そのような人物は確かにいると聞きます。ですが魔王様がそうとは思えません。力の頂点に立つものというのは孤独だと思います。」


クラークさんは私の話に耳を傾ける。続けて言の葉を紡ぐ。


「力が有るからこそ頂点に立てる。それは事実です。ですが故に孤独です。信頼関係も並大抵の努力では得られないものですし、いつ仲間が裏切るか分からない。それに、人を信頼するのはとても難しいことです。諜報員もあり得ることですから。」


手を合わせ目を瞑る。そして息を吸い、吐く。


「悪の頂点に立つということは人から疎まれるということ。恨まれるということ。普通の精神では耐えられないことです。魔王というのは努力家だと思いますよ。私はね。」


そう言って笑うとクラークさんはにこりと微笑んだ。


「そうかもしれないな。重圧というのはつらいものだ。さすが聖女だ。視界が広いな。」


「いえ、そんなことはありませんよ。私なら無理だなと思ったんです。だって耐えられないですし。私は聖女ですから……魔王ですと逆に自分の魔力や聖力に耐えられずすぐ死ぬでしょうね。人付き合いもうまくない、周りすら見る余裕もない人に誰も付いて来ませんから。」


「……シェナ、本当にそう思っているのか?」


クラークさんの表情が暗くなる。どうしたんだろうと思っていると、クラークさんは起き上がり私の肩を掴んだ。


「シェナには力が有る。原動力もさることながら、人のことを大事に思える力が有るではないか。人を大事にできない人にこそ人は付いてこないものだ。俺はシェナに付いていきたい。そう思っている。紛れもないシェナにだ。聖女だからではない。シェナにだからこそついていきたいんだ。君には力が有るんだよ。人を動かし、説得し、周りを見て人々を救う。そんな力だ。だから君は、自分を卑下しないでくれ。俺のようになるな。」


私の肩を掴む力が強くなる。そしてぽたりと雫が落ちてくる。な、泣いてる!?


「クラークさん……どうしたんですか、泣かないでください。」


「え……? こ、これは汗だ!」


ごしごしと目を擦るクラークさん。そんな手を優しく止める。


「擦ったら腫れますよ。」


目に触れ聖力を引き出す。

見る見るうちに少し腫れた目の腫れが引いていく。

が、少しクラークさんは具合悪そうになる。

聖力に当てられて、具合悪くなるというのはつまり――。

”魔族”の可能性が有るということだ。

まさかね、とその思考を振り払う。余計なことは考えるな。

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