第10話「満天の星空の下君は。」
「ごちそうさまでした。食器洗いますね。」
私は食事を終え立ち上がる。するとエリックさんに肩を掴まれる。
きょとんとしていると。
「ごちそうになりましたのでこれくらいはさせてください。」
といって、食器を下げて洗い始める。申し訳なくて下を向いていると、「美味しかったです、とても。」と声が聞こえた。
「まぁ味は濃いけどうまかったよ、エリックこれもー。」
「少しは手伝おうとしてくださいよ! フェンさん!」
「俺戦いで疲れた。」
「えー。貧弱ですか?」
そんな会話が聞こえて少しうれしくなる。味は濃いけどおいしかったんだ……。
嬉しくて顔を綻ばせていると、クラークさんと目が合う。
伏し目がちの瞳はやっぱりサファイアで、口元についたシチューを妖艶に舐めとった。
「美味かったぞ。」と頭をポンポンされる。
顔から湯気が噴き出る感覚に襲われる。真っ赤にしているとクラークさんはきょとんとした顔になる。
「熱か?」
ピトリとおでこが引っ付く。
「ふむ、少し熱いな。」
「あばばばばばば。」
「休んだ方が……。」
「大丈夫ですので!!」
ばびゅんと勢いよくテントから飛び出す。外の空気は少し冷たく熱くなった顔を冷やしてくれる。
暫く走ってきたところで腰を下ろし、地面に座る。
川が流れており、自然豊かだ。水面に映る空は満天の星空で、思わず上を見上げる。
「きれー……。」
「あぁ、そうだな。綺麗だと思う。」
突然の声に振り向けばクラークさんがいた。あと追っかけてきてたの!?
私の横に腰を下ろし、そのままごろりと寝転がった。
「夜というのは嫌いだった。一人であると痛感させられるし、恐ろしい魔物が出やすいし。それだけで嫌いだ。だが時にはこういうものもいいなと思ったんだ。君達に出会えたから。シェナ、君は本当に眩しいな。君なら出来る気がするんだ。魔王との和解を。君に、出来るか?」
「……クラークさん、私って結構しつこいんです。必ず和解して見せます。和解だなんてどうすればいいかわからないけど、手を取り合えば私たちは仲良く暮らせるはずなんです。そう思います。魔王だってきっと悪い人じゃない。世の中には、完璧な悪は居ないと思うんです。誰だって表裏一体で、時には正義になり時には悪になる。そして見る人が違えばその解釈は変わる。そう思ってます。確かに魔王の評判がよくないことは聞いてますが本当に完全悪なんでしょうか。」
空を見上げながら、そう呟いた。クラークさんは「そうだな……完全悪なんてないのかもしれないな。」と返すと、私にお礼を言ってきた。
意図がわからなくて聞き返したがはぐらかされてしまった。
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