第9話「レッツ! クッキング!」

無事にキャンプを立て終え、簡易キッチンに向かう。

鞄からエプロンを取り出すとフェンさんに肩を掴まれた。


「どうしたんですか? フェンさん。」


「エプロンといえば裸エプロンだろ。脱ぎな。」


ごちん! とゲンコツを喰らわせてエプロンをつける。


「こんの暴力女……。でもエプロン似合うな!」


「そりゃどーも。」


すたすたとキッチンに向かう。何を作ろうかなぁと思案する。


「俺シチューがいい。」


はいはいはい! と勢いよくフェンさんが言う。

2人もそれに頷き、シチューを作ることになった。

野菜を手際よく切り、柔らかくなるまで煮込む。ミルクを入れ、胡椒も入れた。

3人は見惚れているのか「おおぉ……。」と声を漏らし、私の作業を見ている。

お皿にシチューを盛りつけ、パンを添えて提供すると拍手が巻き起こる。


「見直したわ、お前料理できたんだな。」


「失礼な、料理位出来ますよ。花嫁修業してるんですから。」


「お前がぁ? 貰い手居るのかよ? 貰ってやろうか?」


「結構です。」


「首から下だけならいいぞ。」


「聞いてます? 話。」


フェンさんが私の手を取り握ってくる。あったかい。

そんなフェンさんの手をエリックさんが止め、ぶーと膨れるフェンさんを皆苦笑いして眺めていた。


「しかし、花嫁修業とは。しなくても貰い手居そうですけれどね。聖女であるというのは、それだけで素晴らしいアドバンテージですから。触るだけで痛みや熱が引いていきますし、魔力の供給も受けやすいものです。聖女というのは素晴らしい存在ですから。無事にパーティを結成できるのも聖女が居なければ成り立ちません。」


「エリックさん……私、皆さんの力になれるよう頑張ります。私も本来冒険に出れるような家系や身体はしてないのです。」


「というと?」


「実は私、貴族なんですよね。」


「き、貴族!?」


皆が一斉に驚いた声を上げた。この世界では貴族はそんなに冒険者登録をしないのだ。己が身可愛さに、騎士等に冒険者登録をさせ、お金を稼ぐ方法が主流だ。

だが、私は違った。実は貴族なのだがその名を名乗ることはしなかった。

クリスティーナ家。名門であり貴族。侯爵の名を持つその家系で私はお荷物だった。

身体が弱く引きこもりがちだった私はたまたま聖女の能力があった、それだけで金稼ぎの道具に登録させられていたのだ。

そんな過去を言うわけにはいかず、貴族とだけ言った。

困ったように笑う私に皆は何も聞かなかった。


「さぁ、食事にしようではないか。シェナの料理はおいしそうだな。」


「ふふ、そう言ってもらえて光栄です。では神に感謝し命を頂き、生きながらえ己の命を全うします。」


手を合わせ皆食べ始める。シェナの料理が味が漕いだなんていうのは言わずもがなのはなしであった。

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