第8話「キャンプ!」
ゴブリンを倒し終わった後、特に何事もなく行程は進んでいた。
疲れてあくびを漏らすフェンさんに、呆れたように笑い「もう少しですよ。」とこぼすエリックさん。顔色一つ変えずに大きな荷物を二つ分持ってくれるクラークさん。
クラークさん素敵だわ! と手を組み合わせながら眺めていると、クラークさんと目が合う。
彼はにっこりと微笑んでまた視線を戻す。そんなのされたらドキドキしちゃうじゃない!
ぽーっとお花のエフェクトを飛ばしていると、「おい、シェナ。」とフェンさんに声をかけられる。
「はい?」
「ちょっと疲れた、手繋げ。」
「はい? なんで?」
「聖女だから触るとひんやりするんだよ! 察しろ!」
「仕方ないですねー。」
フェンさんの横に向かい、手を取る。「つめて。」と漏らしながらも手を握り返してくれる。
「あったかいですね。」
「まぁな。」
「……。」
「……。」
後ろから2人の視線がチクチクと刺さる。何事かと思って振り返れば、そこには目を逸らした2人がいた。
どうしたんだろ、と思っているとエリックさんが私の隣に立つ。
ん? と見上げると覚悟を決めたような顔をしていた。
「シェナさん、私もお手をよろしいですか。」
「いいですよ~。」
「では失礼して。」
そう言いながらエリックさんは私の手を取る。少し顔を歪ませたのちに微笑み、そのまま手つなぎは続行された。
なんだろう……エリックさんの顔。まるで聖力にやられてるような……。
「気のせい、かな。」
「なにがです?」
「ううん! なんでもないの! そろそろキャンプ地ですね! 私料理作りますよ。」
「シェナさんの手料理が食べれるなんて光栄です。」
ふふ、とエリックさんは笑う。私はそれがうれしくて妙に張り切ってしまう。
チクチクと視線を感じる。見ればクラークさんに睨みつけられていた。
ゾク――汗が伝う。どうして私、睨みつけられたの……(目つきが悪いだけ)
ぐるぐると思考は回る。嫌われちゃったかな……(目つきが悪いだけ 2回目)
もしかして告白しても振られたり――
「シェナ? シェナ! 聞いているか?」
「は、はひっ! 何でしょう。」
ぼたぼたと汗を垂らす。聞いてなかった――!
クラークさんの顔を見るといつもの笑顔になっていた。
ほっと一息つく。「ふは、間抜け顔だな。」と笑っていて、安心した。
「シェナの料理楽しみにしている。」
「は、はいいいいっ! 手に塩かけて作りまする!!」
「言語が可笑しくなっているぞ。」
くすくすとクラークさんは笑った。クラークさんが楽しみにしてくれている! それだけで料理を頑張れるものだ。
私たちは此処でキャンプをするためテントを張り出すのだった。
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