第6話「前途多難?」
魔王城に向けて私たちは足を進める。そこで気付いたことが有る。そう、フェンさんだ。
道行く女の人や女の子を見ては鼻の下を伸ばしている。やれやれ……と思いながら、フェンさんのそばに行く。
「ちょっとフェンさん……いくら勇者様だからといって、そんなに女性を見つめては……。」
「……シェナ、お前ここにいる誰よりも……。」
「はい?」
フェンさんは私の肩をがっしりと掴む。力強……! ぎちぎちと握られた箇所が悲鳴を上げる。
「ここにいる誰よりも……。そう、だな……。」
彼の視線が蠢く。私の顔から下へ。その視線の動きでなんとなく分かった。
「お前胸でけぇな!」
ばしぃぃぃぃぃん!!
「いってぇえええええええええええ!!」
ぱんぱんと平手打ちした手を払う。全力で叩きに行ったらすごい勢いで頬を抑えて目の前で転げまわるフェンさん。
やっちゃった。そう思ってクラークさんを見るとけらけら笑っているし、エリックさんは私の胸を凝視している。視線が合うと逸らされたけど。
流石男だなぁ……。としみじみしていると、下から風圧を感じた。
「えっ。」
その風圧の正体を理解する前にスカートを抑える。
だってその風圧は、私のスカート全体を勢いよく巻き上げたのだから。
顔が真っ赤になっていく感覚を味わう。フェンさんがにやにやと笑っている。エリックさんは鼻血を出しているしクラークさんだって釘付けになっていた。
み、見られた~!!!!
「み、見ました?」
「見た。」
「み、見えちゃいました。」
「見えたな……。」
「フェンさんのばかぁあああああああああああああ!」
どごぉおおおおん!
「いてぇええええええええええええ! この暴力女! なにすんだ! たかがパンツだろ!」
「乙女の純潔がぁあああああ!」
しゃがみ込みみっともなく泣き始める自分。えぐえぐと嗚咽を漏らしているとぬくもりを感じる。
涙を零しながら上を見上げるとジャケットを私に着せてくれて優しく抱きしめてくれるクラークさんがいた。
「く、クラークさ……っ……。」
「泣くんじゃない……シェナ。なんか君に泣かれると調子が狂うのでな……。」
「は、い……っ。ぐすっ。」
目を擦る。手を握られハンカチで優しく涙を拭かれる。
「ひどい顔だな……。メイクが落ちてしまうぞ?」
「それはヤダ……。」
「フェン、度が過ぎるぞ。相手は女の子だ。胸を凝視したりスカートを捲るなど言語道断。そういうことがしたいのなら正式にお付き合いをだな。」
「それもちょっと違いますからね!?」
クラークさんを止めに入る。付き合っているからといってしていいものでもないと思うのだけど……。
はぁ……。前途多難だな。
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