第5話「出発!」
私たちは荷物を纏めていた。隣の部屋からは未だ呼吸音が聞こえている。
まだ寝ているのか、と思いながらも、旅の準備を続ける。
「シェナ、フェンとエリックを起こしてきてくれないか? そろそろ準備しないと間に合わなくなる。」
「あ、そうですね……。起こしてきますね!」
纏めていた荷物を置き、隣の部屋へと向かう。
コンコンコンと三回ノックをすれば部屋の中から返事が聞こえる。
「あ、おはようございます。シェナさん。少し助けてくれませんか?」
「え? どうしたんですか??」
「フェンさんを起こしてほしいんです。」
「なるほど……。」
そこにはいつの間に服を脱ぎ散らかしたのかパンイチになっているフェンさんがいた。
「うぇっ!?」
「気づいたらこの有り様で……。」
「あばばばばばば、が、頑張ります……。」
「お願いします……。」
ゆさゆさと身体を揺らしてみる。「うーん。」と唸るだけで起きそうにない。
ぺちぺちと頬を叩いてみる。「いてぇ……。」と弾かれてしまった。
「うーん。あ、ご飯ですよ~。」
そう声をかけるとガバッと勢いよくフェンさんが起き上がった。
「朝飯はどこだ!?」
「今から着替えていくんですよ~はい、服です。」
「む……めんどくせぇなぁ。着替えるか……。」
いそいそと服を着始めるフェンさんを尻目にエリックさんを見るとサムズアップしていた。
それに対しにへらと笑うとエリックさんは少し頬を染めて荷物を纏めに行った。
?? 何が有ったんだろう? 風邪かな?
「よぉし、荷物も纏め終えたし飯だ飯! 今日の飯は何かな~。」
ルンルンでエリックさんに荷物を押し付けたフェンさんがそういう。
クラークさんも部屋から出てきて、大きなバッグを背負っていた。
「あ、クラークさん。荷物ありがとうございます。持ちますよ。」
「女の子なのだから気にするな。これくらいは持てるぞ。」
「……! では、お言葉に甘えて……。」
どくどくと高鳴る胸を押さえつけながら私たちは酒場に向かう。
「……。」
向けられた視線にも気づかないで。
「飯はやっぱりうめぇな!」
ご飯を食べながらがはは! とフェンさんは笑う。どこでそんな笑い方覚えてきたんだろう……。
今日の朝食はハムエッグ、パン、サラダ、コンソメスープと朝らしい朝食だ。
旅に出たら私が作ることになるのか……と少し考え込む。実は私は料理が苦手なのだ。味が濃いらしい……。
うんうんと唸っているといつの間にか食事の時間は終わり出発する時間になっていた。
私たちは会計を済ませ魔王討伐のため、いや、魔王と和解するという目的をクラークさんと結んだ状態で旅に出るのだった。
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