第3話「長い夜」
酒を飲み交わしているとうつらうつらとクラークさんは船を漕ぎだした。
そろそろ夜も遅い。眠くなっても仕方ない時間帯だ。
「ねぇ、クラークさん。部屋に戻りましょうか。」
「や! まだだ! まだ飲み足りぬのだ!」
「そんなこと言って……ふらふらじゃないですか。」
彼の身体を支え立ち上がる。やめろーと言う彼を無視して部屋から出る。
隣の部屋まで歩いていき、扉をゆっくり開ける。
そして彼をベッドまで運んだ。「ぬー。」と謎の声を発しながら彼はベッドに潜り込む。
「シェナ……飲み足りないぞ……。」
「酔っぱらいすぎですよ。お水持ってきますね。」
「どこへ行く……。」
ぐいっ。
腕が掴まれる。そしてそのままベッドへと引きずりこまれていった。
「きゃっ。」
「そばに……。」
「そ、そばに?」
「い、て……すぅ……。」
とくんとくんと心臓が早鐘を打つ。顔がだんだん真っ赤に染まっていく。
そんなことをつゆ知らず彼は眠りについた。
緩くなった力を確認して私はベッドから這い出る。
フェンさんの部屋に向かいまずは片付けだ。
空いた瓶を纏め、食べ終わった食器を重ねる。
ぼんやりと外を眺める……。綺麗な夜空だ。
私もそろそろ眠ろう。そう思いながら隣の部屋へ戻った。
クラークさんは何かを探す様に手を動かしながら眠っている。
少し手に触れてみたくて。手を伸ばし、指先に触れた。
心臓がまた早くなる。あぁ、私、恋してる。
駄目なのに。パーティが壊滅する話はよく聞いているのに。
私の心臓が止まることは知らない。
きゅっと心が締まる。「クラークさん……好きです。」と勝手に口から洩れる。
とっさに口を押えるとそれに呼応するようにクラークさんが私の手を握った。
「あ、あら……?」
その手は離れることを知らない。ぎゅっと紡がれた手。
「うーん……困ったなぁ。」
頭をポリポリと掻き、少し考え込む。考えた結果、諦めてこのまま眠ることにした。
床にしゃがみ込みクラークさんの眠るベッドへ頭を乗せる。
「眠れるかしら……。」
少し心配になりながらも、隣のベッドからシーツをはがす。
それを自分にかけ、目を瞑る。クラークさんの寝息だけが耳に届く。
「おやすみなさい……クラークさん……。」
「……すぅ……。」
それに呼応するように手を握る力がまた、強くなった。
暖かさを感じながらまた私は心臓を早く鳴らしながら眠りへと落ちていくのだ。
安眠パワーとはこのことかと感じながら……。
いつか私の恋は、実るときが来るのかな……。
今はそんなこと考えてても仕方ない。魔王討伐を終えたら、告白しよう。そう胸に刻みながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます