第2話「初めての夜」
沢山お酒を飲んだ私たちは酒場備え付けの宿屋に集まる。
もちろん、飲み直しである。エール瓶やワイン瓶を大量に持って二階に上がる。
女ということもあってか私は持たせてもらえてないのだが。
クラークさんの横を歩きながらたわいも無い話をする。
「……でな、実は戦闘経験は俺にはないんだ。だがパーティのために証人として全力は尽くさせてもらう。」
「ふふ、素敵です! ありがとうございます!」
すこしでもクラークさんのことが聞けただけで幸せすぎる。クラークさんは私の中でどんどん存在が大きくなっていく。
フェンさんが「こっちの部屋だぜ」と案内してくれて私たちはその指示の通り部屋に入る。
エリックさんも「こちらですね。シェナさん気を付けてくださいね。」と声をかけてくれる。
良いパーティに恵まれたなぁとしみじみ一人で感傷に浸る。
「ここが俺の借りてる部屋でお前らは今日はこっちな。部屋数足りないから2人2人に別れるぞ。」
「なら私がフェンさんとご一緒します。」
「そうか。ならシェナとクラークは一緒だな。」
えっ? 私クラークさんと同じ部屋なの??
「だそうだ。よろしく頼むぞ、シェナ。」
「あ、はい……。よろしくお願いします!」
「とりあえず俺の部屋で飲み直すぞ!」
そう言いながらフェンさんは扉を開ける。ベッドが二つ、椅子が二脚ある質素な部屋だった。
私とクラークさんは椅子に案内され、フェンさんとエリックさんは酒場から借りてきた椅子を置く。
「改めて乾杯。」
「乾杯です!」
「乾杯……!」
「乾杯だ!」
暫く飲んでいると、フェンさんとエリックさんは2人して酔いつぶれてしまったようでぐぅぐぅと寝息をたたていた。私とクラークさんは困ったように目を合わせシーツを2人に掛ける。
2人して飲み直していると、クラークさんはぽつりぽつりと語り始めた。
「魔王討伐に意味が有ると思うか?」
「まぁ……魔王ですし。討伐した方がいいんじゃないでしょうか?」
「だよなぁ。」
うーんと考え込む姿勢を見せるクラークさん。それからまた彼は口を開く。
「俺はな、手を取り合えるなら討伐なんていらないんじゃないかと思うんだ。」
「ほう。それは確かに。」
「無駄に血を流すなんて見たくないのでな。」
困ったように笑う彼が眩しくて。ぐっと酒を嚥下する。
「それはたしかにそうですね……。私も職業柄、そういうのは見たくないですから。」
「シェナもわかってくれるか。もしよければ、2人でその方法を探さないか?」
「いいですね! 探しましょう!」
2人で笑いあいながら意見を出し合う。段々と夜が更けていく――。
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