第14話◆200年ってつい最近のことですよね?
※一話で説明したレア度の説明をちょいと変更しました。
◆◇◆
「……」
「……」
「……はぁ……」
オーウェンさん、メイフェさん、パパと三人が呆れたような顔をこちらに向けてくるんだけれど……。
「メルくん、君、自分が何を出したかわかってる?」
「暗黒邪竜……イービルドラゴンです」
「そのドロップなんだよねぇ?」
「そうだけど?」
え?何を言ってるんだパパよ。
こんなの大陸の中心……魔族国のちょい右にある森や火山地帯に行けばゴロゴロいるじゃない?
別に珍しい物じゃないし、俺が魔王だったころはうちの騎士団でもドロップ品の恩恵には預かってたぞ?
「あのね、メル君。いま暗黒邪竜は希少種なのよ……」
「は?200年前は石投げれば当たる感じでしたが?」
「あ、それ歴史書で見たことがあるよ。『魔族国の竜種大量発生』だよね」
「え?そんなこと言われてたの?」
初耳なんだが。
俺らとしてはなんか竜が増えたし生態系が崩れそうだから間引いとくか~、っていう雑草抜きの感覚だったよ……。
「しかもSランク冒険者が数パーティ組んで討伐準備に1ヶ月かかってやっと、っていう感じだぞ?」
「へ?」
俺、右腕と騎士団長と三人で気分転換にやたらいたあいつらを、森や火山地帯で石投げておびき出して狩りまくってたぞ……?
一応竜なのでドロップ品はおいしいし、鱗も肉も骨もすべて使えて無駄なところがないからありがたかったなぁ。
尻尾の先端部分の数列しかない小ぶりの鱗は熱加工すると色が変わり、腕輪や首飾りに加工したのが人気だった。
俺も自分で加工して付与術を施したものを作ったこともある。
いま空間収納をあさればあるんじゃないかなぁ?
「……200匹分はあるんですが……」
「「「は???」」」
なんだよそんな化け物を見るような目で見るなよ、ただの元魔王ですよ!
「だって気分転換に殴るにはちょうどいい相手だったし……」
「「「気分転換????」」」
「パターンさえつかめちゃえば1匹1分かからなかったし……」
「「「1分???」」」
武器防具ステータス上昇系アイテムや継承された魔王のスキルなんかもあって、こう、さっとできたんだよ。さっと……。
「で、買い取ってくれる……のかな?」
正直、自分で稼いだ分でのお小遣いは欲しい。料理をするためにな。
そしてろそんスイーツやそろんごはんの再現を試みるんだ。
「1匹分……だけな。他にもあるんだろう?」
「もちろん!ただちょっと、量が……ね」
たくさんあるんですよ、やんちゃした余り物が……。
「ギルドマスター、第三倉庫が今何も入ってませんので、そこで広げてもらうのはいかがですか?」
「そうだな、サリ。その方がいいか。メイフェ、第三倉庫に今から誰も入るなと徹底しろ」
「わかりました」
メイフェさんは部屋から出るとギルド職員に伝えるために小走りで去っていった。
◆◇◆
「とりあえずこんなもんかなぁ」
と、予めよけておいたものを項目別においていく。
武器、防具、魔石、鉱石、宝石、魔道具、素材、もろもろ。
武器防具に関しては200年前だし、今の方が技術も進んでるから、鋳造して作り直してくれて構わないやつだ。
魔法が掛かっているものや、等級が高いものもあるので、その辺は個別で説明をする。
「こりゃぁまた……すごいな」
「売る暇もなかったから貯める一方だったんだよ……。いくらになりそう?」
俺は総額いくらくらいになるか聞いてみた。
出来れば白金貨30枚くらいあると、食材買いまくれるんだけどなぁ。
「そうだな、この暗黒邪竜の逆鱗だけで白金貨300枚だろうよ」
「……」
……ん?
聞き間違いかな?
「やだなぁ、オーウェンさん。こんな在庫過多の価値暴落素材相手に何言ってるんですか。これ込み総額で白金貨30枚位ってことですよね?」
おっさんジョークは心臓にわるいわー。
パパはさっきからメイフェさんやアリスと三人で、俺が出したアイテム類の一覧と個数を数えている。
ちょっとー、ぱぱー。たすけてよー……。
「お前な、暗黒邪竜は希少種になったって言っただろう?討伐が難しいことも……。それに加えて1匹に一枚しかない逆鱗だぞ?正直、白金貨300枚でも安いし、これは国王に献上して宝物庫いきだな」
げえぇぇぇ!あのバカ王に渡るくらいなら売りたくないんだけどぉぉ?
「そんなツラすんなよ……気持ちはわかるがな」
うげぇぇえ、と吐きそうな顔をしていたからだろう、オーウェンさんが気を使って頭を撫でてくれた。
俺、元魔王なんですけど?見た目につられてるのかなぁ。
まぁ、子ども扱いされることに慣れておいた方がいいんだろうけど。
「まぁ買い取られたものがどうなるかは任すよ……」
「俺もこのままギルド倉庫に死蔵しときたいよ……」
だよなぁ、というため息を俺たちは吐いた。
「その他のはどうだ? 正直200年前の武器防具なんてもう時代遅れのアンティークじゃないか?」
お安くでもいいので引き取ってください、という期待の目をオーウェンさんに向けると、ヒクリと頬を引きつらせた。
「メル坊よ……。鑑定眼あるんだろう?そこの槍でも鑑定してみろ」
ほらよ、と無造作に置かれた100本近い同じ槍のうちの一本を渡される。
確かこれってリザードのドロップ品だったよな。
「……鑑定……」
【エルダーリザードの水属性槍/SSR】
ATK:+300
AGI:+80
DEX:+50
スキル:ウォーターボールLV:3
……いや、普通だろこれ……?
「あのな、メル坊。今のこの時代にはSSR武器なんてこんなに転がってないんだよ……。なにせ200年前と比べて、魔物も冒険者も質が低下してきてるんだ」
「ナンデスト……?」
「メル様、オーウェン君の言う通りですよ。確かに200年前と比べてしまうと少々頼りないです」
アリスが戻ってきてそう付け加えるが、お前ギルドマスターを君付けって……。
「エルシー姉さんが言うならそうなんだろうな」
「アリス……オーウェンさんとは……?」
「冒険者になりたてのハナタレ小僧の頃から知っております」
「飲んだくれて酔ってやらかして叱られた回数なんか、10本の指じゃ足りねぇよ」
ハハハ、と笑う。
「……手持ちの武器防具なんかをセレンテスさんとルリチェさんに譲ろうと思ってるんだけれど、大丈夫かな?」
「護衛契約に武器防具の貸与と修理代はメル坊が持つって文言入れとけ。その辺はサリが説明するだろ」
「そうだな、契約書に書いてさえいればいいんだもんな……」
ちょっと不安になった空間収納付きの魔法鞄は貸与ってことにしといて、護衛報酬にそのまま渡せばOKってことだ。
その辺の契約書の書き換えや作成はパパに任せておこう。
「メルくん、なんか悪い大人の顔になってるけれど、どうしたの?」
「僕、子供だから契約書とか難しいこと解んない。パパに丸投げする~」
「……」
HAHAHA。
双方が得をする善き契約書を作成してくれ。
「一覧をざっと見たし、エルシー姉さんに協力してもらってランクの確認もしたが、えげつないなこれは……。あー、このまま死蔵しておきたい……」
「何本かは国王への献上品になるだろうね。この辺の宝石竜の鱗でできたアクセサリー類とかさ。きっと宝物庫いき……いや、皇太后様が気に入るだろうね」
そういってパパがネックレスの一つを手に取った。
それは光の加減で七色に光るネックレスで……。
「それ、僕が現実逃避で作ったやつなんだけど……」
そんな素人作りのもので大丈夫なの??
メイフェさんに他にも何点かあるし使わないからいる?って聞いたら即却下された……。解せぬ……。
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