第13話◆市場堪能しますた!
◆◇◆
ちょうどお昼になったので、市場からギルド本部に繋がる大通の道すがら軽く腹ごなしをした。
屋台通りと言うだけあり、30台ほどの屋台が並ぶ。
中には小型の幌馬車を改造したものまであり、バラバラの見た目も楽しめた。
幌馬車の屋台では毎朝焼いてきたパンを売っているようで、丸くて平たくて、飾り模様の綺麗なパン(オイルと塩がかかったもの)を1枚と、他の屋台では野菜のスープとワイルドボアの串焼きを買った。
近くにはいくつかのテーブルと椅子も出されており、そこで買ってきたものを広げた。
あーこれこれ、この野趣あふれる素朴なご飯。
魔王時代でもよく街に行っては買い食いしてたなぁ。
「美味いな。この雰囲気も含めて」
「そうですねぇ。私はこういう方が好きですけど、御屋敷の賄いも好きです」
「賄いって何がでるんだ?」
「ちゃんと3食おやつ付きで出るんですけど、朝は忙しいので簡単に食べられる物ですね。小さめの焼いた薄い黒パンに前日のあまり野菜の塩スープ、チーズがつく時もあります。昼はそれに卵料理とハムかベーコンがつきます。おやつは小麦粉を水で溶いた生地を焼いただけのものにジャムを付けたものが多いです。夜は昼と同じですが、その日に使わなかったお肉やあまり食材を炒めたりしたものがつきますね」
「·····うん、とりあえず後でパパに相談しておくよ·····」
みんなそれで満足しているんだろうけど、現代日本の変態的食文化でぬくぬく育っていた俺は少し不安になる。
「お茶もご飯もおかわり自由ですので問題はないですよ?」
「限度があるんだよなぁ·····」
とりあえず、もう少し従業員への食費の増加や福利厚生を相談しておこう。
お休みはその都度相談らしいが、何もすることがないアリスは200年間働きっぱなしらしい。
おまえ、日本だったら労働基準法違反で雇い主が吊るされる案件だぞ。
「メル様と一緒に居られるなら一日中張り付いてても苦ではありません!」
「お、おう·····」
ごめんよ·····、200年も放置しててごめんよ·····。
他の分身体と会ったらハグしていい子いい子して膝枕してやろう、そうしよう。
「さて、食べたしギルドに行くか。その前にこの飾り付きのパンはいいな。在庫あるだけ買っていくか」
「私の分もお願いします!美味しかったので御屋敷のみんなへのお土産にしたいです」
「了解了解。これは俺からのお土産にするさ」
「ありがとうございます!」
これ、本当に美味しかったな。
あの世界で言えば中東系で良く作られるノンというパンと同じだろう。
少し甘くバターとミルクが使われているっぽい。
それにフレーバーオイルや塩、砂糖、木の実やドライフルーツなどで種類も豊富だったのもいい。
店主に相談すれば、お得意様が買いに来る分+各3枚の在庫を保護出来れば残りは全て売ってくれた。
プレーン12枚、オイルと塩20枚、木の実を練りこんだもの15枚、砂糖をまぶした物が8枚、ドライフルーツが6枚。
甘いやつは人気で朝イチで買われていくらしい。
今度出発前に朝イチで来るか。
それと口の中でゆっくりと溶かしながら食べる固いクッキーと普通のクッキーも全部買った。
何気に作業中のちょい食べに良いしな。
固いやつは日本でも勉強のお供に齧ってたくらいだ。
市場最高!
近いうちにまた来るからな!
◆◇◆
冒険者ギルドに行くと昼前なのに活気に満ちていた。
中には朝のひと仕事を終えて、併設されている酒場で飲んでいる奴もいる。
入ってすぐの右壁全体が依頼掲示板になっていて、朝、昼、夕方に順繰りに手前から新しい情報に詰められていく。
つまり、奥の方にあるやつは受け手が居ないままのやつだ。
大体が修理やドブ掃除などだった。
ゲーム脳としては片っ端から潰して行きたい。·····やるか。
「お忙しいところ恐縮ですが、今お時間大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
俺は受付にいる茶髪のお姉さんに声をかけた。
「僕はヴァンメルク・ライズと申しますが、こちらに我が父であるアリュサリウス・ライズがいると思いますので、取り次ぎをお願いしたく存じます。宜しいでしょうか?」
なるーべく丁寧に、と心がけたのになんか眉を顰められている·····?
なんでだ?
「あのですね、君がどこの誰かは知りませんが、うちの副マスターに子供はいません。誰か!この子を捕獲して!後ろに付いている馬鹿を炙りだしますよ!」
あれぇぇぇ!!!!???
なんでぇぇぇ???
ちょっとぱぱーーー!ちゃんと報連相しといてよぉぉ!!!
「どうせあの辺のアホ貴族共の嫌がらせでしょう?いい加減逮捕されて落ちぶれればいいのに!」
受付さんは更に言い募る。
ぱぱ、あなた敵おおいの??
その辺の情報も教えといてよぉぉぉ!!
逆にいえばパパはこのギルドでちゃんと信頼を得ていて偉いとおもいましたまる。
「ゲルダ、そこまでにしておきなさい。メル様は正真正銘、サリ様のご子息様ですよ」
と、助け舟を出してくれたのはメイフェさんではなく·····。
「アリス?」
「アリスお姉様?!」
·····お姉様。いい響きですね。好きな言葉です。
「貴方が知らないのも無理はありませんよ。先日やっとご親戚の療養地から戻ってきたばかりです。また療養地に戻られますが、少しの間、書類等の手続きの為にだけこの王都に戻られているのです」
「アリスお姉様、それは本当の事ですか?今までお子様の話を聞いてなくて·····」
あ、ゲルダさんがオロオロと困っている。
「サリ様のお家の事情です。ゲルダが知らないのも無理はありません。私がゲルダに嘘をついたことがあって?」
「ありません!お姉様、メル様、誠に申し訳ありませんでした!」
物凄い勢いで謝られたぞ??
いや別に気にしてないからね?
大丈夫だからね?
この件でお給料減らされないようにパパに言っておくからね?
ゲルダさんは慌ててパパに連絡しに行ってしまった。
「所でアリス、さっきの事は·····」
「サリ様が冒険者ギルドで疑われたらそう説明するようにと」
「ゲルダさんとの関係は?」
「彼女が小さい頃、街の外で魔物に襲われている時に助けて以来、色々と勉強やら学校等の手続きの援助をしてました。彼女、ああ見えて才女なので時期ギルド員総括候補ですよ。ただ、自分で見たもの聞いたもの以外信じない所がたまに傷なので、今後に期待です」
ほほう。
情報収集解析型分身体のアリスがそう言うなら才能ある人物なのだろう。
あとは経験と起こりうる全ての予測事項を磨いていけばいいんだろうな。
「お待たせ致しました。メル様、アリスお姉様。応接室までご案内致します」
「よろしくお願いします」
「すぐにお茶をお持ちしますね」
「ありがとう、ゲルダさん」
案内された応接室は飾り気はないが広くて、ソファも良いやつだった。
すぐにお茶とお菓子が運ばれ、次いでオーウェンさん、メイフェさん、パパがやってきた。
「おう、メル坊。なんか面白いの持ってるんだって?」
「オーウェン様、言い方」
「すまんすまん。何せ200年前のものだって言うから朝から待ちきれなくてなぁ」
メイフェさんに突っ込まれたオーウェンさんは豪快に笑った。
「僕も中身を聞いてないからねぇ。オーウェンさんと一緒に見た方が確実だと思ったんだ」
「おうよ、鑑定スキル持ちだからな!ある程度のアンティークやレジェンドアイテムなら見抜けるぞ」
おお!それは交渉しやすいな。
俺も鑑定スキルを持っているが、説明を見てもよくわかんないのあったしな。
俺は空間収納に予めより分けておいた武器防具、アイテム、宝石魔石鉱石類をテーブルに起き始めた。
「まず、魔王時代に倒した暗黒邪龍のドロップ品から·····」
俺の言葉にアリス以外が言葉を無くした瞬間だった。
え?暗黒邪龍なんてそこらに居るでしょ?
適当に石投げれば当たるもんでしょ?
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