第12話◆下準備はこれでもかとする真面目タイプなんです
近況ノートにサリさんの絵姿をUPしました
◆◇◆
パパからあっさりと外出の許可が出た。
ついでに在庫を色々と売りたい、と言えば冒険者ギルドに持っておいで、と言われたので買取予約をお願いした。
お昼くらいの時間にくれば自分も見させてもらう、とも。
たすかるなぁ。今の時代だとすでに型落ち品だろうけれど、討伐で拾ったドロップアイテム、魔石宝石鉱石類は腐るほどあるので小銭にはなるだろう。
それに、拾った武器防具とて二束三文でも溶かして鋳造すれば再利用可能だろう。
リサイクルですよ、リサイクル。再資源万歳。
「明日が楽しみだなぁ」
「そうですね、私もお供いたします」
「案内頼んだ」
「はい!」
◆◇◆
さて、早朝から開いている市場でまず向かったのは両替所だった。
あの国王から路銀を貰って気が付いたが、この国の通貨の形状が切り替わっていたのだ。
俺がこの世界に居た時に使っていた通貨は古銭状態になったわけだ。
使えることは使えるが、古銭を知らないと通貨偽造の疑いをかけられてしまう。
日本でいう、旧500円札、旧500円玉、2000円札、過去の記念硬貨や穴の開いてない5円玉の様な扱いになる。
なのでその道のプロであり色んな国の通貨を取り扱っている両替所なら、多少のマージンは取られようとも安心して両替ができるというものだ。
とりあえず、各50枚ずつ用意したので、市場で食事作りの材料を買うのに問題はないだろう。
アリスなんか「材料費だしますので!」と自分用のおやつを作ってもらう気満々だ。
まぁ長い事放置してたしね……、うん……つくりますよ?
「両替をお願いしたいのですが」
両替所に行き、アリスが受付のおじさんに声をかける。
するとおじさんはにこりと微笑んでこちらにどうぞ、と椅子をすすめてくれた。
いいね、女子供だと侮らずににこやかに対応してくれる。
従業員の教育が徹底してるのには好感が持てた。
4人掛けのテーブルにつくと、まずはおじさんが話しかけてくれた。
「本日、担当を務めさせていただきますマグスと申します。当店では他国の通貨や古銭、さらに貴金属の査定・買取・両替もさせていただいております」
「ご丁寧にありがとうございます、マグスさん。今日はこちらの……古銭扱いになるのでしょうか? それの査定と買取両替をお願いしたく思います」
おおお、ちょっと緊張する。
買取額は低くてもいいんだが、古銭過ぎてないだろうか。
ジャラリと麻袋に7種類の通貨をそれぞれ50枚ずつに分けて机の上に置く。
「何分古い通貨なので、申し訳ない」
「いえいえ、古銭はコレクターが多いのでありがたいです。拝見させていただきますね」
と、麻袋の一つを紐解き、中のコインを確認する。
「これは……約200年前のものですな。かの賢王・コルデル様時代の」
そういやあの前国王、そんな名前だったな。
各国の合同王会議で意気投合して、月一で夜中に酒盛りしてたのが懐かしい。
「ああ、こちらとしてはコレクションの整理ついでに他のコレクターに渡ってくれればいいと思っている」
嘘も方便。
まぁ手っ取り早く現金が欲しいんですよ。食材と趣味もの買うための。
形式上の親子とはいえ、パパにはあまり負担を掛けたくはないしな。
「かしこまりました。只今査定と買取額とその詳細を記入してまいりますので、お待ちいただいても?」
「ああ。宜しく頼む」
「お茶とお菓子を持ってこさせます」
「お構いなく」
マグスさんが店の奥に姿を消したと同時に、お茶とお菓子が運ばれてきた。
暖かい紅茶とクッキーやパウンドケーキ等の焼き菓子の味はそれなりに美味しかった。
他の客をこっそりうかがっていると、お茶とお菓子をふるまわれているのは俺たちだけだった。
女子供には甘い店……ではないんだろうな。
確実に上客扱いになっているのだろう。
お茶を飲み終われば、すぐに暖かいティーポットを机の上に置かれた。
この茶葉、常飲用に欲しいな。
マグスさんが戻ってきたら売っているところを聞いてみよう。
「お待たせしてしまって申し訳ありません。査定額が出ましたのでお知らせいたしますね。それと、こちらがそれぞれの査定額となります」
そういって算出された金額を見て驚く。
全体的に持ち込んだ金額の3割増しだった。
「内訳の前に説明させていただきますと、まず賢王様の時代に発行された通貨は純度の高い貴金属で作られているのが特徴です。それに加え、金貨の中には賢王様が60歳の時に作られた記念金貨も混ざっておりました。それで全体的に買取金額が上がった、という訳です。こちら、査定の詳細です」
と見せてもらった内容は納得のいくものだった。
かくして、俺はお小遣いをてにいれたのであった。
◆◇◆
「よし、市場にいくぞ、アリス!爆買いだ!」
「はい、メル様!不詳アリス、個人的にも爆買いいたします!」
イエーイ!とハイタッチをしつつ俺とアリスは市場へ向かった。
「結構いろんな国の特産品も売ってるんだな」
「そうですね、船や日数がかかるものは割高になりますが、5か国分くらいは集まっていると聞きます」
「旅費が上乗せされてるし、その分劣化しないものしかないけれど、香辛料や保存食、乾物はありがたいな。あ、おばちゃん、この赤身魚の干物を中くらいの麻袋いっぱいに下さい」
「あいよ、金貨1枚と銀貨2枚だよ、これオマケしておくね」
「ありがとう」
俺は川に棲む赤身の大きな魚を干し、ブツ切りにしたものを購入した。
大量に購入したせいか、小さな細かい端切れをオマケしてもらった。
そのままあぶって食べてもいいが塩辛いので、根菜や葉物野菜と共にシチューに入れたのが好きなんだよね。
支払いはアリスがする。
さっき両替で得た貨幣は俺のお小遣い用のがま口財布にすべて入れ、アリスに持たせてある。
曰く、高貴な方は財布なんか持たないんだってさ。
大体は家名を名乗って回収に来させるか、お付きの者が支払うのだ。
えー、自分で買いたいのになぁ。
小さながま口財布を握りしめてろそんに入った時を思い出した。
ろそん……行きたいなあ。そろそろ次のコラボ商品はでるんだよなぁ。
「空間収納にしまって……と、次にいくぞ、アリス」
「はい、メル様!」
その日、俺は昼前まで市場を堪能した。
両替した分のほとんどが消えたが、後悔はしていない!
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