第2話◆さてと、どうしますかね

◆◇◆


 王城を出たら先ずは城下町散策しようと思っていたので、そのままふらふらと人波に吸い込まていく。

 いやー、俺と交渉してくれた騎士さんから色々と聞き出せたんだけど、俺がいた時代から200年経ってたわ。

 城下町も区画整理がされてから150年くらいだっていうし、数々の新魔法や魔道具、職業なんかも増えたらしい。

 着実にアップデートされてるね。

 とりあえずゴネにゴネて我儘言い放題ぶつけてみた結果、肩掛けマジックバック(中・10M立方・重さ5トン迄)と騎士見習いに支給される城下町の鍛冶屋御用達の武器数本(打刀ありましたよ!打刀!)、軽装革鎧、周辺地図、路銀に金貨50枚を貰いました。

 路銀を多くするか、武器アイテムで相殺するかで半々にした結果だ。


 さて、幾多の異世界小説を読んでいる皆々様方はお気づきだろうが、ここで少しの種明かしをしよう。

 俺は死ぬ間際、現代日本に転移した。転生ではなく。

 勇者の放った一撃で死を覚悟したが、ダメもとで座標指定なしの転移魔法を使った結果、勇者が居た国……つまり日本へ転移してしまった。

 理由はわからんが、勇者から日本への転移パスがまだ繋がっていて、それに乗っかってしまったのだろう。

 現代日本に転移した俺はすぐに傷を癒すと1番デカくて大きな建築物に姿を隠して潜り込み、しばし人間達を観察した。

 そこで偉い人を見極めて洗脳魔術を施し、日本での身分証明書をゲット。

 ついでにその人間……栩原翔太郎(とちはら しょうたろう)に空間収納に入ったままだった適当な宝石類を売らせ、日本円をゲット。

 さらに身元保証人として翔太朗の嫡外孫として幼稚園から大学院・研究所までエスカレート式の学校に入学した。

 幼稚園から始まった寮生活ではあったが、知識を貯めるには良い期間だった。

 魔法は明確なイメージ、と言うが知識もあれば尚良い。

 これがこうなってそうなった結果、科学的にアレソレ、というやつだ。

 俺の魔法もかなりグレードアップしたし、更なる研鑽を積んできた。


 そして、人生を変えるモノに出会ってしまったのだ·····。

 学校と寮を繋ぐ道には色々な生活補助施設が充実されていた。

 医療施設はもとより、娯楽施設や知的好奇心を満足させる為の図書館や本屋、映画館。服屋に文具屋に飲食店。

 そして、ろそん·····。

 ろそんは主に飲食類を取り扱う全国展開の小型店舗で、俺が身元保証人にした翔太朗の傘下グループが運営しているものだった。

幼稚園児ががま口財布を握りしめて感動していた様は当時からの店長はよく覚えていて、高校生となってからでもちょくちょくネタにされていた。

 だって、宝の山に見えたんだもん!! 

 こんなの元居た所に……あったがグレードが違うんだもん!!

 有名店協力だという甘味の数々。

 店舗内出作られたコロッケやソフトクリームにラーメン。

 これが日本·····、日本素晴らしい! と感動して何が悪い!

 俺がろそんの虜となり、新商品が出るとすぐ買いに走るのは仕方がないといえよう。


 閑話休題。ろそん万歳。


 とにかく、俺は俺のまま現代日本に転移して素晴らしき新世界を満喫していたのに、また元の世界に転移させられた、という訳だ。


 それも、勇者となって魔王を討ってくれ、だと?

 お前何言っちゃってんの?? と言うやつだ。

 しかし、何にしても情報が少ない。

 少ないなら得れば良いじゃなーい?

 よーし! 元魔王、どっかのお人好し貴族を味方につけて情報収集しちゃうぞー!


 そして早いとこ現代日本に帰ってろそん三昧したい。

 ろそんカードに溜め込んだポイントが期限無効になるのだけは避けたいからな!

 あと1か月後には推しゲーのコラボアイテムも売られるしな!


 俺は足取り軽く、城から城下町へとつなぐ大橋をるんたったと歩き去るのであった。




◆◇◇




 さて、皆々様方ご推察通り、冒険者ギルドまでやって来ました。

 よくあるじゃないですか、ギルドマスターが貴族と繋がってて·····てやつ。

 事前にちょっとした買い物のついでに店員に色んなことを聞いたんだけど、ここ王都のギルド本部には五公爵の内の1つ、アルジェント家の前当主の御落胤が副マスターをしているんだってさ。

 本人は元Aランク冒険者でパーティリーダーを務め経験もあるし、貴族との渡りも付けれる。

 そんな人材が副マスターということは、いざって時に権力的にも身軽に動けるようにしてるんだろうな。

 俺の元右腕だった魔族も、駆け落ち騒動起こすまでは色んなところに飛んでいっては仕事して即決裁してたもんな·····。

 重度のワーカホリックで仕事大好き魔族だったのに、突然人間の姫さんと駆け落ちとかびっくりだわ。

 さてさて、冒険者ギルドに来たらまずは登録ですよ!

 昼過ぎても程よい活気のある店内に、俺は意気揚々と足を踏み入れた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る