元魔王だけれど現魔王と戦うために召喚された件
葎璃蓮
第1話◆元居た世界に異世界転移した……だと?
◆◇◆
微睡に揺られ続けたのどかな午後の授業が終わり、ホームルームが終わるとそそくさと帰る支度をすませる。
俺の名前は終王珠理(しゅうおうしゅり)。
今日はろそんの限定スイーツ発売日なのでウッキウキだ。
しかも推しゲームのコラボもやるので早いところそんへ行きたい。
ああ、この世界はなんと平和で素晴らしいのだろう!
少しの理解で得られる知識!
少しの努力で得られる美味なるもの!
少しの労力で得られる日々の糧!
ちょっと前までの生活とは考えられないほどに充実した毎日!
少ししか変化のない日々だけれど、俺は気に入っている。
ちょっと前までの俺はこことは違う世界で魔王という職業をやっていた。
そう、職業。
魔王は魔物を操り~とかいうアレではなく、魔族という社会に於いてちょっとしたまとめ役をしていたにすぎないが。
魔族は人間種以外の亜人と呼ばれる人種の一つで、魔物は魔力が混ざった混沌から生まれる獣だ。
魔物の発生確率や分布、スタンピードなどの予想をするのが魔王の仕事。
そんな感じで人間とはある程度の友好な関係を築いていたはずなんだけれど……。
部下の一人が人間の王族の一人娘と駆け落ちしやがりましてね?
しかも馬鹿親国王が大激怒して色々と難癖つけーの罵詈雑言浴びせーのしてきたもんで、ついうっかり拳で☆OHANASHI☆してしまったのですよ。
そもそも、嫌がる娘さんを隣の国の禿爺王に無理矢理嫁がせようとしなければ良かったんですよ、と言っても聞きゃあしない。
ああ、前の国王は話が解る子だったんだけどなぁ。
『馬鹿で馬鹿でしょうがないんだけれど、あの馬鹿に継がせないと後の世がおかしくなるんだよなぁ。まぁ愚王世代は長くは続かないからちょっとの間だけ我慢してくれよ。なぁに、アンタにも褒美はあるからさ』
と死ぬ間際に語ってくれた。
前の国王は預言者としてのスキルもあったので、色々と視てしまったんだろう。
多分、俺がブチギレた国王に勇者召喚されて殺されるのも、現代日本に転移するのも織り込み済みだったってわけだ。
まぁ、ろそんのスイーツに出会えたから許してやらんでもないがな!
そんなこんなで帰宅途中のろそんに寄り、本日販売のスイーツを一通りと受け取り指定していた書籍やゲームソフト、ご飯類を購入し出た瞬間、既視感に襲われた。
これはあれだ、前にもあったな……こんな感覚。
えーと、あー……あれだ。召喚式の魔力波動だ……。
は?
召喚式……だと!?
深い深い穴に吸い込まれるような感覚を感じた瞬間、俺は強制的に意識を刈り取られた。
◆◇◆
なんか目の前にいる感じたことがある遺伝子から連なる顔の男が、豪華な椅子で踏ん反り返りながら喚いているんですよ。
周りには八人の騎士さんがいて、内二人が俺の両脇にいる。
やれ勇者だのこの国を救えだの選ばれしなんたらだの。
あいつ、これも予想してたんだろうな。
報!連!相!
ちゃんと報連相してくれよ!
なんかまだ延々と話しているので、サミット袋の中に入ってる玉露入り抹茶シュークリームを出して食べる。
ああ、おいしい。
「貴様! ちゃんと聞いているのか!」
とか傍にいた騎士さんに槍を突き付けられたんだけれど、あんまし怖くないのは騎士さんが弱いからなんだろうなぁ。
「聞いてますけれどね、お腹すいてるんですよ」
もしゃもしゃと抹茶シュークリームを租借していれば、国王は深いため息をついた。
「こんな者が勇者だというのか……?」
しらんよ、こちとら元魔王だから勇者とか言われてもなぁ。
職業選択の自由って、この場合あるんだろうか。
「とりあえずステータス確認を……」
と、騎士さんの内の一人がB4サイズくらいの石板を持ってきた。
ステータス転写版の魔道具か。
本来、ステータスは個人にしか見ることができない。
それを強制的に転写させて他人にも見られるようにするのが、あの魔道具の力だ。
見た所ノーマル級のなので見せるだけ、の効力しかないやつだな。
魔道具や武器防具、アイテムにはコモン(C)・ノーマル(N)・レア(R)・スペシャルレア(SR)・スペシャルスーパーレア(SSR)・ウルトラスーパーレア(USR)・ユニークレア(UR)・レジェンドレア(LR)・ゴッズレア(GR)という級位があり、この世界ではユニークまでしか作れない。
素材がないからね。
一部のユニークから上のアイテムは、神様やらそういった上位存在から下賜される数点しか存在していない。
そしてステータスの魔道具はユニーク級であれば、映し出されたステータスの修正や消去も可能。
国家級の犯罪者やら災害指定された人物にしか使われることはない。
レア以下は隠蔽や偽装のスキルを使っても看破できない。
ていうか勇者とか言ってるならSレアクラスを使った方がいいんじゃないか?
俺みたいな偽装・隠蔽スキル持ちにはきかんぞ?
「手を載せろ」
騎士さんがいうので、ろそんでもらってきたお手拭きで手を拭いている間に平凡なステータスとスキルに偽装完了。
手を載せると石板が光り、ずらりと文字が浮かび上がってくる。
その様を期待に満ちた目で見ていた騎士さんは、途中から顔をしかめ始めた。
「国王様、これは……」
恭しく石板を見せる騎士さんと内容を確認して固まる国王。
ははは、ざまぁwww
俺のステータスはモブ村人クラスに偽装してやったわ!
【名前】終王珠理(しゅうおうしゅり)
【年齢】16
【職業】高校一年生
【HP/SP】20/10
【スキル】なし
【魔法特性】なし
【耐性】なし
【STR】10
【AGI】10
【INT】8
【DRX】12
【LUK】6
と、まぁこんな感じで。
大体10がモブの平均値で鍛えていればそれなりに上がっていく。
「·····役立たずはどこへとも行くがよい! 次に備えろ! 次こそ勇者を!」
という言葉と共に、俺は王城から追放されることになった。
次って言ってもお前さぁ、異空間を無理矢理こじ開けて異物を引っ張ってくるような最高火力術式がほいほい出来るとでも思ったのか?
アレ、星の位置とか引力値とか季節方角、魔力の充填やら術式図の書き換えとかかなり面倒だから、再召喚は早くても三年後だぞ?
「あ、路銀ください。あと装備品も。精神的慰謝料は物資で貰いたい。こんな(ろそんのスイーツもない)世界に一人だけ放り出されても生きていけないんですけど」
遠慮なく手を出せば国王はまた深いため息をついた。
◆◇◆
【名前】終王珠理(しゅうおうしゅり)
エンディア・シュリアシュリュージュ
アルファスト・ル・アレスールブ
【年齢】16(1216)
【職業】高校一年生
元魔王
異世界召喚人
アレスアールブ家の養子/懐刀/切り札/交渉人
【HP/SP】***/***
【スキル】気分次第で全部
【魔法特性】ある
【耐性】ある
【STR】???
【AGI】???
【INT】???
【DRX】???
【LUK】???
そこ、随分と大雑把とか言わない。
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