第11話「過去を思い出しました。3」

目まぐるしい日々を送っていた中悲劇は起きた――。

それはある日のこと、氷川さんと町田君がよそよそしくなった。

なんでだろう、話を聞かなきゃ。なのに怖くて足がすくんだ。

私はまた一人ぼっちになった。

とぼとぼと一人で帰り路を歩く。するとたったったっと足音がする。

くるりと振り返れば氷川さんの姿があった。


『唯ちゃん! 話を聞いてほしいの! あのね――。』


その時、きゃははと笑い声がした。振り向けば私を快く思ってない女子三人組だった。

足がすくむ。氷川さんは顔を真っ青にした後私に向き直る。

そして――。


『友達ごっこやめよっか? あんたなんか友達なわけないじゃん! あんなのごっこだって。芋相手にするわけないじゃん。』


そういった。顔面から血の気が引いていくのを感じる。目から涙がこぼれた。

そんな私を氷川さんは見ないように顔をそむける。そっか、私嫌われたんだ。

その場から私は逃げるように立ち去る。『傑作~!』という笑い声があたりに響いた。

もう、友達なんていらない――。そう思ったのに気が付いたら町田君の家にいた。

ふぅふぅと肩で息をして、チャイムを押す。中からバタバタと足音が複数した。


『多田野……なんで。』


町田君はそういった。その後ろから鏡音さんが顔を出し。


『あっれー多田野じゃん。町田。そういう仲だったの?』


『はっ!?』


『噂持ちきりだぜ~お前が多田野と付き合ってるって。』


『ちげぇよ……。』


『じゃあなんで家知ってんだよ~。』


にやにやと鏡音君は笑いながらそう言う。やめて、これ以上聞きたくない言葉を言わないで。


『こ、これは……っ。あんなブス遊びだよ。お前が一番に決まってる。あーあ、アクセサリー欲しさに付き合ったけどよ、つまんねぇわ。暗くて根暗で何考えてるか分かんねぇし!』


どくん――。心臓がうるさいくらい早くなる。心が痛い。もう何も、誰も信じられない。

そう思った私の足は止まらなかった。後ろも見ずに私は走り出す。

頬からは涙が伝っていた。河川敷まで走ってくると私は肩で息をし、座り込む。


『二人に嫌われたら……私どうすればいいの……。』


一人、河川敷で泣いた。

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