第10話「過去を思い出しました。2」

『……町田君、それってどういう……。』


『普通に! 見返してやろうってこと。嫌?』


『私にそんな権利あるのかな……。』


『権利とかじゃないだろ?』


『……。』


スカートの裾をぎゅっと握る。そんなことしていいのだろうか。そんなことをして生意気だと思われないだろうか。

でも私の答えは決まっていたのかもしれない。だって見返したいと思ったから。


『町田君……私、やるよ。見返したい……。』


『よくいった多田野! なら、いろいろしないとだな~!』


嬉しそうにスマホを取り出し何かを操作する。

真剣に考えてくれる彼がとても嬉しくて。

少し顔を綻ばせながらそれを見ていた。

まさかあんなことになるとは思いもしなかった――。


提案された案はこうだった。

まずは髪を切る。長く顔を隠している髪を取り除くといったものだ。

そして簡単なメイク。素材は悪くないと言われ照れたが、女子はメイクをするものらしい。

制服の着崩し。これは任意だと言われたがなじむためにはそうした方がいいだろうとのことだ。

挨拶・会話の練習。明るくはきはきと喋れるようになれば友達もつくれるだろうと。

やることは多いがやってみせるぞ! と意気込んでいると町田君は笑ってくれた。頑張れよ、って言葉が暖かくて。支えるよって言葉がうれしかった。

次の日、学校に行けば教室がざわついていた。

理由は簡単だった。私の見た目が変わったからだ。

男子は少し頬を紅潮させ私を見ている。女子は驚いた顔でこちらを見ていた。


『あ、多田野さん、おはよ?』


一人の女子がおそるおそるといった様子で話しかけてくる。名前は確か――。


『おはよう……氷川さん。』


『うんっ、ねーねーおしゃべりしよ!』


『は、はい!』


もしかしたらお友達になれるかもしれない。そんな淡い期待を私は浮かべていたのだ。

人生第二のトラウマになるとも知らず――。


それから私の毎日は楽しかった。放課後や日中は氷川さんたちと遊び、時折放課後に町田君とも会ったりした。気付いたら恋までしていたのだ。

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