第8話「洋子さん好きっス! ってまじですか?」
顔を赤らめて唐突にもじもじとしだす亮太きゅん。
なんでだろ~と思って、「案内するね。こっちよ。」と声をかけると手首をつかまれた。
あら?
そのまま壁際に押し付けられる。手首を纏め絡めとられ、足は身動きが出来ない。
「洋子さん……俺、洋子さんのこと諦めないっスから。好きっス。」
「はい?」
顔を近づけられる。唇が迫る。ぎゅっと目を瞑るがその衝撃は来なかった。
あれ? と思い目を開けるとそこには肩を掴んだ洋一きゅんがいた。
「亮太君! 洋子ちゃんのことは諦めてって言ったよね!」
「あー? 聞く謂れはねぇ。」
ぼりぼりと頭を掻く亮太きゅん。どきどきした……。
「あのぅ、二人とも……。」
「洋子さんは黙ってろ!」
「洋子ちゃんは黙ってて!」
「はい……。」
ギャーギャーと言い合いを始める二人。それを眺めながら考える。
『洋子さん……俺、洋子さんのこと諦めないっスから。好きっス。』
ぽっと顔が赤くなる。熱意を見せられるのは、二人目だ――。
転生する前の私じゃ上手くいかなかっただろうに。
『あんなブス遊びだよ。お前が一番に決まってる。あーあ、アクセサリー欲しさに付き合ったけどよ、つまんねぇわ。暗くて根暗で何考えてるか分かんねぇし』
どくりと心臓が鳴る。思い出したくない……。
ぎゅっと胸を抑える、収まれ、収まれ。
「大体! 洋一お前暗すぎ! なんでお前も洋子さん狙いなんだよ! ブスだろ!」
どくん――!!
「はぁ……っ、はぁ……っ。」
「洋子さんを悪く言わないで! 僕のヒーローなんだから!」
心臓の早鐘が止まらない。二人の声が聞こえなくなる。
言い合いは止まらない。心臓が、痛い。
ぺたりと座り込む。洋一きゅんが、こっちを向いた。
途端真っ青な顔になり私に駆け寄ってくる。
「――さん! よ――さん!!」
私の肩を優しく抱き留める。ぎゅっと力を籠められる。
私はそのまま意識を手放した。
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