第3話 差出人
招待状の差出人である
新郎とは、中・高の同級生で
ずっと仲が良かった
中学では
よく一緒に部活をさぼって
学校近くのラーメン屋さんでダラダラして
先輩に見つかって怒られたなぁ
中三の時、志望校も
「お前・・・どこ校受ける?」
って、あいつが聞くから
俺は自信なさげに
「公立は南校
私立は城東と立花
三校とも普通科かな~」
そう言うと
ニッコリ笑って
「マジで
お前なら特進いけるだろ?」
あいつは自頭が良いから、特別な勉強をしているところを見たことがない
でも
いつも俺はテスト前
あいつのまとめたノートで助かっていた
今思うと
俺が分かりやすいノートを作ってくれていたのかな?
そういうとこあるから・・・
「お前は受かるだろうけどさ
俺は無理無理
っで、お前はどこうけるの?」
気になった
だって
仲良かったから
正直、離れると・・・淋しかった
あいつは不敵な笑いを浮かべて
「ん~内緒」
そう言って教えなかった
「おまえ~聞くだけ聞いて!!」
と少しむくれる俺を見て
「ま、南高・・・普通科受かるよ
頑張れ!!
受験にビビって志望校変更すんなよ!」
そう言って
俺の肩をポンポンと叩いた
そして
何だよ
その上から目線な
意味深にまた笑った態度
ま、いつもの事だから
あいつらしいと言えばあいつらしかった
その笑顔の意味が分かったのは
受験日当日
受験会場に集合したら
あいつがいた・・・
俺はあっけにとられる
奴も同じ南校を受験することにしたと
その時に知った
たぶん
あいつなら
もう一つ、二つ上の高校か
特別進学科でも受かりそうなものなのに
なぜか
俺と同じ
南高の普通科を受験した
「おはよ」
“おはよう”じゃねーよ
普通に挨拶するあいつに
俺はキョトンとした顔で
「お前、ここ受けるって言ってたっけ?」
あいつは
ニッコリ笑って
「言ってなかったっけ?
俺はお前と同じ高校で青春するつもりだからさ
絶対に受かれよ!
もし落ちたら
キレるぞ!!」
“キレるぞ”
って
お前が怒ってる顔すら見たことないよ
いつも一個上の方から余裕な顔ばかりしててさ
なめた奴だよ
お前は・・・
それに
そんな粋がったセリフ
マジで似合わないけど
ちょっと
カッコよくは見えた
男同士でなにドキドキしてるのやら・・・
俺はヤツの言葉で奮起して
テストを受け
無事に合格
そして
高校では三年間、クラスが同じで
部活も一緒のバレー部
昼飯はいつも学食で同じものを食って
バカらしいことに夢中になって・・・
あいつの言った通り
俺たちは青春を共にした
その場面を切り取っても
笑っている顔が浮かぶ
全部ではないけど
ある一部を除いては・・・あいつと俺は
笑っていた
俺たちは親友だった
だから
色んなあいつを知っている
笑った時の顔
ふざけた時の顔
感動した時の顔
・・・嘘をついた時の顔・・・
・・・恋をした時の顔・・・
・・・俺を裏切った時の顔・・・
どんな顔で
この招待状に俺の名前書いたんだろう?
これって
あいつの字か?
これって
普通じゃないよな
あいつらしくもない・・・こんな非常識
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