第2話 明日、雨降ればいいのに

俺が勝手に考えた

妄想みたいな

肝試し的な感覚なのか?


そう思うと

じんわり怒りがこみあげてくる


シャワー浴びて

頭冷やそう・・・




髪の毛をタオルで拭きながら

窓の外を見る

明日も

雨が降ればいいな・・・カーテンを開けて空を見る

キラキラと星が輝いている


俺は“フン”と声になるほどのため息をつく



【俺の妄想】


それはもう

酷く雨がザザ降りで

列席者の裾は濡れ

微妙な匂いと不快感が式場中に広まっており


「こんな日にこんなに降るなんて

あいつら行い悪すぎ」


なんて、その場にそぐわないジョークがちらほら聞こえたりして


それに対して

親族が不愉快な視線をそちらに向けたりするけど

目があったら

やはりホスト側の弱みで

会釈したりして・・・



当人たちも

この雨のせいで起こった事故での渋滞に巻き込まれてしまい

会場入り時間は大幅に遅れて式場入ったため

新婦の髪型は

打ち合わせ通りには行かず

美容師のアシスタントも新人なのか?

焦っているのが手元に現れていて

何度もピンを落とし

その都度、小さな部屋で


「すみません・・・すみません・・・」


と、いう声が繰り返される


それを聞くたびに

新婦の苛立ちが募らせていき

幸せいっぱいの笑顔とは程遠く

“ふ~”っと、心を落ち着かせようと深呼吸の様なため息をつく

そして

眉間には一本のしわが寄る


新郎に呟く


「だから前もってここに泊まろうって言ったのに・・・」


すると新郎は

大きな窓の外を見つめながら


「結婚式当日は実家から出たいって言ったじゃん

だから

朝早くに迎えに行ったんだろ?

お前の希望だったよな?」


新婦とは目を合わすことなく冷静を装って

内心は新郎だって苛立っていたが

自分がそういう態度をとってしまうと

こんな晴れの日に泥を塗る結末を自ら作り出すようなものだから

できない

しない

あいつは

そういうやつだ

だから精一杯

優しい口調で

彼女の気持ちをなだめる

だけど

新婦はまるで新郎に責任があるかのように見つめる

新郎は新婦から

そんな責める様に見つめられても

あいつにはには、雨を止ますことなんてできない

偶然に遭遇した事故での渋滞を予測し

遠回りしてでも回避することなんてできなかったし

昨日に戻って

式場の宿泊施設に泊まる事だってできない

今更

この状況は変えられるわけではない


それよりも

式の開始時間を30分も遅らせてしまっている事の方が気になっていて

親戚や友人はともかく

会社の上司や父親の関係で列席してくれている

お偉いさんもいるから

そんな人たちを

この不快な状況で待たせていることが気がかりで

新婦の愚痴にまともに付き合う気にはなれはしない


まさに

“気も漫ろ”


【俺の妄想(完)】



な~んてね


そんな妄想は、少し意地悪かな?

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