願いを叶える流れ星の魔法少女スターコ

けろよん

第1話

 星の綺麗な夜。流れ星に願い事を3回願うと願いが叶うという。

 小学生の少女みはるは夜ベランダに出て空を見ていた。今日は星の綺麗な夜。もしかしたら流れ星が見られるかもしれない。

 すると『キラッ』流れ星が現れたではないか。

「流れ星さん、みはるの願いを叶えてください!」

 みはるは急いで3回願った。すると流れ星がこっちに向かって突っ込んできたではないか。

「え!? なんでこっちに来るの!?」

 みはるは驚いて目を見開いてしまった。輝きを増しながらこっちに向かってくる流れ星。逃げる場所なんてどこにもない。

 そして……ドッカーン!! 大きな音と共に爆発してしまったのだ。

「きゃあああ!!」

 みはるは爆風に巻き込まれて吹き飛ばされてしまった。そのまま地面に倒れ込んでしまう。

「いったーい! 何が起こったの?」

 みはるが起き上がるとそこには人影があった。星のような輝きと黒い衣装を着た少女だ。手には杖を持っている。どうやらこの子が魔法を使ってみはるを吹き飛ばしたようだ。

「あなた誰? どうしてこんなことするの?」

「それはね、あなたのことが大嫌いだからよ!」

「えっ……」

「わたしはね、あなたみたいな弱虫で泣き虫な女の子が一番嫌なのよ! そんな子にわたしの邪魔をされてたまるもんですか! いい気味よ! アハハハハッ!」

 高笑いしながら去っていく謎の少女。一体何者なんだ?


 次の日。学校では昨日のことについて話されていた。

「ねえ、知ってる? 昨日の夜のこと」

「知ってるわよ。あの子よね? 魔法使いみたいな格好してたって噂の子」

「そうそう。その子がね、うちの学校の子を1人病院送りにしたらしいの」

「ええっ!? 大丈夫だったの?」

「命に別状はないみたいだけど、怪我をした子の家族から苦情が来たらしくて、警察沙汰になってるんだってさ」

「怖いね……。でも、なんでその子はうちの学校に恨みがあるのかしら?」

「それがよく分からないんだけど、なんか昔いじめられてたとか何とか」

「そうなんだぁ……。」

 どうやら謎の少女は悪い奴らしい。このままだとまた誰かが被害に遭うかもしれない。どうにかしないと!


 みはるはその日から学校でも警戒するようになった。怪しい人物が近づかないように注意している。しかしなかなか犯人らしき人物は見つからない。


 そんなある日、帰り道でみはるが歩いていると後ろから声をかけられた。振り向くとみはると同い年くらいの少女がいた。髪の色は水色。目は青くて肌の色も白い。まるで外国人のような見た目をしている。

「こんにちは」

 少女に声をかけられたので返事をする。

「はい、こんにちは」

「いきなりごめんなさい。あなた最近何か事件に巻き込まれたりしなかったかしら?」

「いえ、特にないですけど……。」

「本当? よかったわ。それなら安心ね」

「はい……」

「じゃあ私急ぐからこれで失礼するわね。バイバーイ!」

 少女はそのまま走り去っていった。一体何だったんだろうか?

 不思議に思いながらもみはるも家に帰った。


 次の日、いつものように登校してみるとクラスの雰囲気が変わっていた。クラスメイト達がピリピリした空気になっている。

「ねぇ、みはるちゃん」

 友達のあかりが話しかけてきた。

「どうしたの?」

「あのね、実は昨日先生たちが話してるの聞いちゃったんだけど、今朝校門のところに不審者がいて、生徒たちを怖がらせているんですって」

「ええっ!? それ本当なの?」

「うん。それでね、その不審者は校内に侵入しようとしてたらしいの。幸い警備員さんが気づいて止めてくれたみたいだけど、もし入ってきていたら大変なことになっていたかもね……」

「そっかぁ……。でもなんでそんなことをするんだろう?」

「さあ……? とにかくみんなも気をつけてね」

「分かったよ。ありがとう」


 それからというもの、みはるは学校にいる間はずっと警戒していた。すると下駄箱の前に怪しい人物がいることに気づいた。

 あれは……まさか……?

「ちょっと待ってください!」

 みはるは大きな声で叫んだ。すると相手はびっくりして振り返ってきた。そこに立っていたのはやはり予想通りの人物だった。

「あなたは……?」

「あなたがやったんでしょう? 昨日学校に侵入しようとした人ですよね?」

「あら、バレてしまったのね。残念だわ」

「どうしてこんなことするの? こんなことしたら皆困っちゃうよ!」

「それはね、あなたみたいな弱い子が嫌いだからなの。わたしが気に入らないのよ! だからあなたを痛めつけてあげるの」

 そういうと彼女は杖を取り出して呪文を唱え始めた。まずいと思ったみはるは慌てて逃げ出した。しかしすぐに追いつかれてしまう。

「逃がさないわよ!」

 彼女が杖を振りかざすと魔法弾が飛んできた。みはるは必死に逃げ回った。しかしついに追い詰められてしまい、逃げ場を失ってしまった。

 もうだめだ! みはるが諦めかけたその時、突然大きな爆発音が聞こえた。そして目の前にいたはずの相手が吹き飛ばされていくではないか!

「大丈夫かい?」

 そこには1人の青年がいた。年齢は20代後半といったところだろう。黒髪で青い瞳をしている。黒いローブを着ており、手には剣を持っていた。

「あなたは誰ですか? どうしてここに?」

「俺はこの学校の教師だよ。君を助けに来たんだ」

「助けてくれるの……?」

「ああ、もちろん。ところで君は魔法少女かな?」

「えっと……一応そうです」

 なぜ彼が自分の秘密を知っているのか分からないが、誤魔化す場面でもないだろう。みはるは正直に答えておく。

「じゃあ変身してみてくれないか? 君の力が見たいんだ」

「分かりました。やってみます」

 言われた通りに変身するみはる。光に包まれた後に現れた姿は……魔法少女そのものの姿だった。白いワンピースにピンクのマントをつけており、頭にもリボンがついている。胸元に大きな赤い宝石がついていて、足はブーツを履いている。

「へえ、可愛いじゃないか」

「あの、それであたしは何をすればいいんですか?」

「そうだね、とりあえずあの子をやっつけてほしいんだ」

「ええっ!? あたし1人で戦うんですか?」

「大丈夫。俺もサポートするからさ」

「はい……。頑張ってみます」

「よし、じゃあ行こうか」

 こうしてみはると教師は謎の少女と戦いを始めた。


「覚悟しなさい!」

 杖から魔法弾を発射してくる少女。それをジャンプして避けると、みはるは空中で回転しながら蹴りを放った。少女はそれを受け止めようとしたが勢いが強く、そのまま地面に叩きつけられてしまった。

「ぐあっ!」

「まだです!」

 さらにみはるは追撃をかける。少女は慌てて防御するが、攻撃の威力が高く、耐えられず吹っ飛んだ。

「すごいな……」

 その様子を見ていた教師は感心していた。

「今度はこっちの番よ。」

 少女は立ち上がると呪文を唱えた。

「スター・ブリザード!」

 すると杖から輝く星のつぶてが大量に飛び出してきたのだ! みはるは咄嵯に避けようとするが、数が多くすべてを避けることはできないようだ。

「きゃあああ!」

「みはるちゃん!」

 男はすぐに駆け寄ると、少女に向かって突進した。そして剣を突き出す。

「ぐふぅ……」

「どうだい? 降参するなら許してあげよう」

「誰があんたなんかに……」

「そうか、じゃあ仕方ないね」

 男は剣を抜くと少女にとどめをさすために近寄っていく。このままでいいのだろうか。みはるは迷ったが体は正直に動いていた。

「待ってください。この子を殺さないでください」

「何を言っているんだ。君はこの子に襲われたんだろう。学校のみんなも怖がっている」

「何か理由があるんでしょう? 話してください」

「ふん」

 みはるが少女に話しかけると、彼女は不満そうに鼻を鳴らして目を逸らしながらも話してくれた。

「わたしは流れ星の魔法少女スターコ。図々しいのよあいつら。流れ星を見たら願い事ばかり。最初はわたしも願いを叶えるのが楽しかったさ。でも、段々と噂が広まって面倒な事になってきて」

「なるほど、つまりあなたの力を利用したい人達が現れたということですね?」

「そう単純な話じゃないのよ、お馬鹿さん」

「お馬鹿!?」

「あなたも流れ星に願ったでしょう? あなたもあいつらと同じなのよ!」

「そ、そんなぁ……」

 みはるはガックリとうなだれた。確かに自分は流れ星にお願いをした。しかしまさかそれがこんな結果になってしまうとは思わなかった。

 落ち込むみはるを教師が肩に手を置いて慰めてくれる。

「まあまあ、そう落ち込むなよ。俺だって昔は君みたいに流れ星に願ったものだ。そのおかげで今の生活が送れているんだぜ」

「そうなんですか?」

「ああ、だから気にしない方がいいと思うぞ」

「うーん……分かりました」

「それより、そろそろ時間切れだ。もうすぐ変身が解けてしまうよ」

「えっ!? 大変! 早く戻らないと!」

 慌てて戻るみはるだったが、途中で転びそうになる。それを見て男が手を差し伸べた。

「ほら、掴まって」

「ありがとうございます」

 手を繋いで2人は歩き出した。すると少女に呼び止められた。

「待ちなさいよ」

「何ですか、スターコさん」

「まだこの子を襲うつもりなら相手になるぜ」

「教師は呼び止めてないわよ。みはる、あんたには助けられたわ。だから願いを叶えてあげる」

「いいんですか? 願い事をされるの嫌がっていたのに」

「借りを作るのは好きじゃないのよ。いいから言いなさいよ」

「えっと……じゃあ友達になってくれますか?」

 みはるの答えを聞いてスターコは驚いた顔をしたが、すぐに微笑むと彼女の手を握った。

「分かった、それがあんたの願いならね」

「これからよろしくね」

「あんたって変わってるわね。もっと大きい願い事をしてもいいのに」

「じゃあ、学校のみんなと友達になって」

「やっぱり人間って図々しい」

 みんなで笑い合う。こうしてみはるとスターコは友人になった。


 その後、みはるは学校でいじめられなくなり、魔法少女として戦う必要もなくなった。だが、みはるにとって彼女は大切な人になっていた。

「今日も会えるかな?」

 授業が終わると、みはるはすぐに教室を出た。そして階段を登って屋上へ向かう。ドアを開けるとそこには満点の星空。そして、光に照らされて彼女が立っていた。

「うわあ、まだ夕方なのに満点の星空」

「あんたに綺麗な星の光を見せてあげようと思ってね」

「いらっしゃい、学校のみんなとは友達になれた?」

「無理に決まってるでしょ。あんたが友達だからいいのよ」

 2人が仲良く会話していると、下の方から声が聞こえてきてあかりがやってきた。

「みはるちゃん、こんなところにいた。もう、最近不審者がいて危ないから一緒に帰るよ」

「うん、ちょっと待っていてね」

「あれ? その子は誰?」

「あ、紹介するね。あたしの新しい友達」

「スターコよ。あなたも何か願い事をしたいのかしら?」

「うーん、願い事が叶うなら不審者をやっつけて欲しいかな」

「もう、人間は難しい願い事ばかり。本当に嫌になる奴らだわ」

 不満を言いながらもそこに険悪な雰囲気はない。

「じゃあ、一緒に帰ろう」

 みはるは笑顔になりながら二人の手を取って歩き出す。

 夕方になった空にまた星が輝き出すのだった。

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願いを叶える流れ星の魔法少女スターコ けろよん @keroyon

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