鳳来山天安寺 その3
瑞覚大師は
『本当に立派な御姿をしていなさる。
それから、寝間に運び込み、枕元の
床に横たわり、ぐっすり寝入っている自分を部屋の隅に立って眺めていた。枕元の文机を見ると薬師如来像がなかった。『いつの自分だろうか?昨日か一昨日か?』考えながら
『と、すると…如来様を持ち出した者がいるのか?そんなことはない筈じゃ』瑞覚大師が思いを巡らしていると、その右手後方から声がしたかと思うと、部屋の中がフッと明るくなった。
《瑞覚よ、私はここです。この部屋から消え去ることはありません。安心しなさい》ギョッとして背後を見ると、
『ああ、ありがたいことじゃ。御仏に導かれてこのままお召し頂きたい』
瑞覚大師は、座して金色の光を仰ぎ見ると、目から大粒の涙を流して歓喜した。それは老婆の
《瑞覚よ、そなたは3年の後に
「
瑞覚大師がおずおずと質問した。
《そうです。素空と名付けなさい。これはずっと以前から決められたことです。…明日正式な僧として認可し、7日後に宿坊に移し、3年の間天安寺でなくてはできない修行を存分にさせなさい。また、明年建立される新堂の守護神を彫らせなさい》
そう言うと、光と共に消え去った。
瑞覚大師は枕元に戻り、文机の上を改めた。如来像は戻っていない。そして、己の寝顔をジッと見た。と、いつの間にか意識が遠のき寝ている自分の上に倒れ込んだ。
翌朝、お付きの僧、
「お大師様、お体の具合が悪いのでしたら、朝のお勤めはお休みしては如何でしょう?」瑞覚大師は、栄垂の勧めを断り、着替えを始めた。
忍仁堂は天安寺の中心となるお堂で、忍仁大師を祀る神聖なお堂だった。ここで、
朝の勤めが終わると、瑞覚大師は栄信を呼び、この日の指示を与えた。
「
興仁大師とは天安寺
瑞覚大師は、興仁大師に昼食を共にしたい旨を伝えるよう、栄垂に指示を与えていた。この日から素空の存在が天安寺に広く知られるようになるのだった。
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