第4章 回想と予見 その1
素空は
『これまでこんな想像をしたこともないのに、目の前にハッキリ浮かび上がるのはどう言うことだろう』素空はいつしか、1日目の夕刻に出会った武士と、京を
『愉快なお方だった…』
素空は
3本の経が終わると、釈迦三尊像の検分を始めた。3体共20年ほど前に作られたようだが、その時に師の思いが強く念じ込まれたのだろうと思うと、その手法が如何なるものだったのか、考えない訳にはいかなかった。素空は自分が彫った薬師如来像に未だに魂が込められていないことを思うと、夜通し掛けてもその手法を習得したかった。しかし、先ほど金色に輝いたことで薬師如来像に仏の
薬師如来像には
素空が検分していると、1人の武士がお堂の中に入って来た。素空を見ると
武士の名は
崎田小平は
今日は
「御坊は飯も食さず平気なのか?」
素空は検分を中断して答えた。「私はこの3体の御仏像の検分をしているのですが、この検分が実に楽しく、食を選ぶか検分を選ぶか問われれば、迷うことなくこのまま検分を続けます」
「ほほう、御坊はお若いようだが、まるで
「はい、これはわが師が彫りたる御姿で、この御姿には御仏の御心が込められているのですが、如何にすればこのような真の御姿になるものかと思い検分しているのです」
「ほほう、それでこの小さい御仏は御坊の物で、御坊が作った物には御心とやらが篭っていず、真の御姿ではないと言うのかな?」崎田小平は、素空の薬師如来像をしげしげと眺めながらそう言った。
『どう見ても同じでき栄えのようだが、この坊様は何故そう言うのだろうか?』
崎田小平は
『きっと、この坊様は窮めた先を求めておいでなのだろう。ひょっとして、そこが仏の世界なのか?』崎田小平はその先を考えることはなかった。
そこに遣って来たのが、
「御坊、腹は減っていないか?御坊が
『坊様を使いに出すなんぞ、
崎田小平は
「御坊は食には執着しないようだな?」崎田小平は穏やかな声でもう1度同じ質問を始めた。
素空は、武士が別の答えを求めていると知ると、先ほどと違った答え方をした。
「ほほう、御心を込めるとな?どのようなことなのかな?」崎田小平は五助を待つ間の時間潰しのつもりだったが、素空の若さに似合わない物腰に興味を持ち始めた。
「御坊はどのようなお方であろうかな?」崎田小平の疑問は素空の根源から明らかにしたいと言う構えだった。
素空は
崎田小平は、素空のことを
その時、五助が酒と飯を持って来たので話の途中で
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