第2話 幽霊が見える人
私は幽霊が見えるんです。
幼少期の頃から見えていた訳では無くある時を境に見えるようになったんです。
そのきっかけは、ある日仕事帰りにふと公園を眺めていたら木に吊るされた人影を見つけた時だと思います。
公園には時間帯もあってかまばらに人が数人居た程度でしたが、首吊りに気付いていたのは私だけの様子でした。
今思えばこの時から既に違和感はあったんです。
それから私は恐いと思いながらも首吊りだったら警察に通報しなくてはならないと思ったので念の為確認しようとその木に近付いたのです。
近付くにつれて人影が揺れながらこちらを見ているよう気がしてとても恐かったのですが気のせいだと言い聞かせて一歩、一歩、ゆっくりと近付いて行きました。
するとどうにもその人影と目が合っている気がしてならなくなり薄気味の悪さを感じていましたが、正義感からなのか興味本位なのか薄気味の悪さを押し殺してまた一歩、一歩と近付いたのです。
もうすぐ触れられる距離まで来たという所で私は背筋が凍りました。
目が合っていたのは間違いなどでは無かったのです。
この感覚をそう説明すれば良いのか分かりませんが、直感的にこの人影はこの世のものでは無いと感じていました。
そこからはもう必死で急いでその場から離れる為に走り出しました。
後ろを振り返る勇気も無く必死に走って、走って、走ってようやく自宅のアパートに逃げ込みました。
その後は数日何事も無く、仕事に行き、いつも通り職場では無視されたりしましたが仕事に対して真剣では無い私を窓際族として空気のように扱うのは仕方の無い事だと割り切っていたので良かったのですが、ある時職場の一人の女性が急に私を見つめながら「めちゃくちゃ見てくる……キモい」と周りの女性にも喧伝していたのが耳に入ってきました。
その時は流石にショックでしたが、その女性の方はその後も私を見つけては何か「寒気がする」だとか「良い加減何処かに行って欲しい」だとか私に対しての罵詈雑言を吐くようになったのです。
その時ぐらいから私にも変化がありまして、幽霊が見えるようになったのです。
というよりかは幽霊と人間の区別がつくようになった、というのが正しいかもしれません。
別段困る事も無いのでこんな事を話す機会も無かったのですが今日は本当に気分が良いので久々にテンションが上がってしまっているんだと思います。
何故気分が良いかですか?
そうですね、その女性が今日でこの会社を辞めるからですよ。
これでまた平穏な日々が戻ってくると思うと少し嬉しくなってしまいました。
貴方も女性に頼まれて来たんですよね?大変ですよね、除霊師?というんでしたか。
あの女性にも変なおじさんの幽霊が憑いてましたもんね。
ですがあのおじさんはここには居ませんよ?
たぶんまだ女性に憑いてるんじゃないですか?
あぁ、それとはまた別件でこちらに?
なる程。
そうかそうか貴方も見える側ですもんね。
ゆっくりしていってくださいね、この部署は私しか居ませんので。
それでは私は仕事に戻りますので。
お茶も出さずにすいませんでしたね。
どうにもここのポットは壊れていてですね、私が押してもお湯が出ないんですよ。
ははは!それではさようなら。
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