第2話 痛い痛いの飛んでけ
実家を氷漬けにしてやったぜ
「シャバの空気最高!」
氷城家は暗殺家業なんで世間に出せないような書類を持ち出す事ができた
これで僕に危害を加えるようならこの書類をばら撒くという脅しにも使える
それにある程度のお金も拝借していてしばらくの間は金銭に問題はない
ただ家では外出は禁止され外との情報が必要最低限しか入ってこなかった為不安要素は多い
まずこの世界の事を何も知らない
アプリゲーあるあるだがリセマラが終わった後はストーリーを全部スキップしていたし
学園で何かが起こるくらいしか分からない
そしてチュートリアルで狼の様な巨大なボスを倒す描写もあった
そのような生き物がこの世界に居ると仮定して用心するべきだろう
そして僕が家出をした理由にもなる『異能』だ
ザックリいうと魔法みたいなものだが魔法と異能の違いはハッキリしている
魔法使いは火の魔法や回復魔法など色々使ったり多様性があるイメージだが
異能は一貫性の性質を持ち能力も独特な物が多い
例えば火を得意とする五家の紫盛家の者達は火の異能しか使えない
そして何故精神大人の僕が逃げ出すほどの厳しい教育が氷城家であったのかは異能が起因している
優秀な異能持ち者ほど優秀な子が生まれる
そして異なる異能の血が混ざると『濁る』と言われている
異能の相性の悪い
火の紫盛家×氷の氷城家
が結ばれ子供ができた場合に子は火力の低い灯火か溶けかけの薄氷しか作れなくなる
濁りが何度も行われると
多様性のある異能が発現し未知の異能を量産していくとの事
ただし濁りは絡め手が多く火力特化の五家が殺傷能力では勝っている為
この日本では五家が日本を牛耳っていると云われている
だからこそ異能の闇は深い
本家の氷城家では爺婆の数が多く若者は少ない
子の氷を厚く硬くする為に血を厳選しなくてはならない
優秀な者を分家から引き抜き一定の数は保つが
タブーが繰り返し行われており身体が弱く生まれた母親は僕を産んで亡くなったという訳だ
まぁ異能とか前世で憧れた超能力は楽しいし糞みたいな家を差し引いてもお釣りが出るくらいだと思っているから
前世の記憶があった事は不幸中の幸いか
「ふぅ...やっと抜けた」
山をいくつも超えてようやく街が見えてきた
(学園の外は荒廃した世界とかの設定だったら詰んでるからなるべく平和であってくれ!!)
_________________________________________
\めっちゃ平和でした/
今はバスに乗り最寄りの駅に向かっている
コンビニやスーパーも見た事のない店名ではあるものの前世の世界と街の外観はほとんど変わらない
親切な人にスマホで地図を見せてもらうと都道府県がいくつか消滅というか名前が変わっていた
なんでも反組織が県を占領し魔物と呼ばれる化け物を放ち国すら迂闊に手を出せないとの事
魔物とかいう生物はかなり危険のようだ
ていうか僕が受けた教育が人格を破壊されそうになったり精神のコントロールとかでこういう一般常識を教えてもらえなかったのは困る
そして街中にリセマラでよく見た異能学園のキャラが着ていた黒い軍服に白の刺繍が入っている厨二チックな人達が警備をしている
(警察の代わりがこの軍服の人達か?)
県を乗っ取るほどの魔物とやらがいて一般の人達に危害を加える異能者もいた場合、前世の非力な警察が対応出来るわけがない
(異能学園は異能を持ってる人が秩序を守る人材を育てる施設...とか?)
バスから降りてコンビニで食料とお菓子を買い込んで歩みを進めた
雑誌もファッションや漫画などもあったが前世の物と遜色なかった
「この住所ってこの辺りですか?」
「ん?あぁ嬢ちゃん合っているよ」
「ありがとうございます」
(よしメモ通り)
瓦の古き良き日本の家の前で住所の確認をする
(インターホンは無いか)
「御免くださーい!」
「すみませーん!」
「...」
家の中で人の気配はするが...
(居留守だな)
鍵穴に冷気を送り氷で型を埋める
カチャ
「失礼します」
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「とおちゃん!!かあちゃん!!」
「信二郎、地下に隠れてなさい!!」
「嫌だよ!行かないで!!」
(...またあの夢か)
「ん?...」
おかしい
俺の家に誰かいる
即座に刀に手をかけ抜刀すると
10歳にも満たない幼い少女が目の前に現れた
(白髪に着物姿...只者じゃないな)
「誰だてめぇ」
「勝手に入ってすみません、僕に敵意はありませんので」
「親に教えてもらわなかったのかぁ?人の家に勝手に入っちゃいけねぇ」
「まぁまぁ、日高信二郎さん僕と取引きしませんか?」
一瞬で距離を詰め剣先を少女の首元にあてがうと薄皮が切れ血がツーっと流れる
「なぜ俺の名を知ってる?」
「五家の回し者ですよ、もっとも実家すら裏切りましたが」
「俺に何の用だ」
「僕に刀を教えて欲しい、見返りに貴方の両親を殺すよう依頼した人物を教えます」
刀を握る手に力が入る
「その情報の信憑性は?」
「僕の家の者があなたの両親を殺したからです、依頼書を確認しました」
「アンタらの家族が俺の両親を殺したのか」
「僕は家族とは思っていないですけど」
血を飛ばして納刀し少女を観察する
(大した胆力だ、首を切られ殺気にあてられても動揺すらしねぇ)
「依頼者の情報だけ教えろ、そしたら命だけは取らないでやる」
俺は腰を深く落とし
いつでも首を落とせるよう刀に手を添える
「はぁ交渉決裂ですか...では肉体言語しかないですね」
俺の異能は刀身の長さを調整できる
少し離れた位置でも斬りつける事が可能だ
(このガキも両親を殺した連中だ、腕の一本切り飛ばして分からせるか)
少女が手をかざした瞬間に左肩目掛けて刀を振り下ろす
ガギィッ
「!!」
(見えない壁!!いや違う氷!!)
「本気で僕の事を切ろうとしたぁ!?」
「さっきも切っただろうがぁ!」
「あれは殺気が無かったもん!!」
「うるせぇ!!」
少女の四方八方に現れた氷の壁を切り付けるが全く刃が通らない
(業物だぞ...冗談きついな)
一本下がり刀を正面に向け突きの構えをとる
【瞬突】
自身の加速と共に刀身を伸ばす事で威力を上げる
剣先が厚い氷の壁を貫通し少女の肩に突き刺さる
「死にたくなきゃ情報を教えろぉ!!」
「この世界ってほんと子供に容赦しないね!」
(子供...)
「終わりです、日高信二郎さん」
(腕が!?)
剣先に着いた血から一瞬にして刀が凍りつき俺の右半身まで氷が広がった
「僕の話を聞いてくれないならそのまま左半分も凍ってもらいますけど?」
チッ...
ここで死ぬのも忍びねぇ
「分かった、お前の話は聞いてやる」
_________________________________________
包帯と消毒で応急処置だけ済ませた
肩が痛い...ぴえん
まさか氷を貫通するとは思ってもいなかった
動きも目で追うので精一杯だったし僕の予想通り剣の腕はかなりあるみたいだ
「お前は俺の弟子になりたいと?」
「はい」
「俺が刀使いの名家、日高の生き残りだからか?」
「生き残りというより生かされていたが正しいですね」
「どう言う事だ?」
「だって信二郎さんの住所が僕の家に残っていたんですよ?6回引越ししたようですが全て記録に残ってるんでずっと監視されてますね」
「なんだとっ!?」
「力のあった日高を間引き貴方が偶然残された、血を完全に途絶えさせないのは何かの保険でしょう」
「外道が...」
「僕もどうかと思いますよ」
「それでお前はどこの家の者だ?」
「氷城家、五家からの暗殺依頼を受ける事を生業としています、ちなみにこの情報はトップシークレットで五家ですら僕達の家の事は知りません」
「んでお前は嫌気がさして家出したと」
「そういう事です」
「大体分かった、剣は教えてやるが条件がある」
「なんでしょう?」
「俺の両親を殺した氷城家の奴の場所も教えろ」
「いいですが僕の修行が終わってからでいいです?復讐はその後いくらでもしてもらっていいんで」
「お前の家族を根絶やしにすると言ってもか?」
「もう家族じゃないのでお好きにどうぞ」
「よし分かった、弟子にしてやる」
「やった!よろしくお願いします!」
よしっ!!
これで暫くは安泰だ!!
_________________________________________
山の小屋の前で激しく木刀を打ち合う音が鳴る
「ゼェ...ハァハァ...師匠...ちょいたんま...」
「甘ぇぇぇぇ!!」
脳天に木刀の一撃を貰い
頭を抱える
「師匠のバカァァァァァ!!!!」
あまりの痛みに生まれ変わって
初めてマジ泣きした
【異能学園ロワイヤル】リセマラ1位のキャラに転生した @piyoko_1
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