第19話 ログナドからの協力者

 ガレオス兵の案内で、俺たちは二手に分かれることになった。

 俺とナビナはガレオスが隠していた転移装置の間に。


 ウルシュラとミディヌは、帝国に入るには目立ちすぎる。

 という理由で、外でのかく乱行動を取ることになった。

 

 特にウルシュラは一度帝都を追い出されている。

 それだけに、監視の中を進むのは厳しいというのが理由だ。


「えー!? 私がミディヌと行動するんですか~?」

「……何だよ、あたしとじゃ不安なのか?」

「だって魔法とか使えないですよね? 私は戦えないのに、どうやって宮廷魔術師を相手にするんですか~」

「あたしには剣がある。あんたは……魔道具で何か作ればいいだけの話だ。だろう? それに――」


 確かにミディヌ一人の負担が増える。

 そう思っていたところで、意外な話が舞い込んで来た。

 ミディヌの視線の先にあるのは、"協力者"の姿だ。

 

「久しぶりじゃな。ミディヌ」

「へっ、爺さんもな。とっくに引退してたんじゃなかったのかよ?」

「相変わらず口が悪いのぉ。まぁそれはともかく、そちらがルカス・アルムグレーンさんですな?」


 それが、ミディヌの旧友を紹介する……という話だった。


「え、ええ、まぁ。あなたは?」


 ミディヌとウルシュラはログナド大陸から来た人間。

 かつての仲間や友人がラトアーニ大陸に来ていてもおかしくはない。


「わしはただの爺……いや、元は魔術を少々……といったところですな。ガレオスにはたまたま旅行に来ていたんですが、暇を持て余しておりましてな。少しの助けとなれば幸いですじゃ」


 ログナドから来てるせいもあるのか、素性は明らかにしてくれないのか。

 しかしミディヌを知っているし、今回だけでも協力してくれるならありがたい。


「助かります。ではそちらはログナドパーティーということで、お願いします」

「……ほぅ? ではこちらのお嬢さんもログナドから――おや?」


 ――うん? 

 ウルシュラを見る爺さんの目がおかしいけど、知り合いかな?


「あーあーあー!! ルカスさん、ナビナ! 私、頑張りますから。ルカスさんも頑張って遂げて下さいね!」

「ああ。そうするよ。君も気を付けて!」

「ウルシュラのスキル、最高だしあなたしか使えない。大丈夫! ルカスも期待してる」

「ほ、本当ですか?」


 期待に満ちた目で俺を見るウルシュラは、たぶん褒められると伸びるタイプ。

 そもそもウルシュラが一人でギルドを立ち上げていなければ、仲間になることもなかった。


 ここはやる気を出させる為にも、応援してあげないと。


「本当だよ。ウルシュラの装備のおかげで動けるようになったからね。それに魔道具が作れるなら、十分戦えると思う!」


 俺の言葉に感動してしばらく返事が無かったが、


「ルカスさん! ご安心ください!! ミディヌと一緒に宮廷魔術師たちを改心させてやりますよ!」

「うん、頑張って」


 話を終え、転移の間に行こうとする俺に、

 

「ルカス・アルムグレーンさん。この先、ログナドに来ることがあるのなら、家名を隠さず名乗ることをおすすめしますぞ」

「しかしアルムグレーンは帝国にはく奪を――」


 正確には、兄リュクルゴスが一方的に奪ったに過ぎない。

 名乗るのは簡単だ。

 だが、俺の身分を隠さなければ訪れる村や町に迷惑をかけることになる。

 

「ふむ……帝国支配の大陸に居座るのならばそれでもよいでしょう。じゃが、他ではそうはいきませぬ。今後貴族や高い身分の者と会う際は、家名が武器となりましょうぞ」


 そう言って、爺さんはミディヌたちと外へ向かって行った。

 家名か……。でも今はリュクルゴスのことが先だ。


「ルカス、城にはどれくらいの宮廷魔術師がいる?」

「え? う~ん……城の中に魔術学院があるから、数は相当数いると思うけど……どうして?」

「賢者を外に出したいなら、存在する宮廷魔術師を全て消さないと駄目」

「消す……って」


 もちろん、生命的な意味じゃないと思われるが。

 それも力で何とかするしかないか。


「ルカスは大丈夫。ナビナ、力を使う。使って、賢者以外……全て」


 ナビナは戦えないんじゃなかったのだろうか?

 でも俺と行動をともにするということは、何かしてくれそうな気もする。


「じゃあバルディンに行くよ、ナビナ」

「うん」


 ガレオス兵に見送られながら、俺とナビナはバルディン帝国に転移した。

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