となりは君に居て欲しい(終)
それから俺はただ毎日を過ごした
朝御飯を作り舞を起こして学校に行かせ
家事をある程度終わらせてから
喫茶店を開けて仕事をし
コーヒーと食事をひたすら作り
夕方に店を閉めて夕飯を作り
舞にお風呂と宿題を終わらせるように言って
その後一緒に夕飯を食べ
お風呂に浸かり洗い物を終わらせ
洗濯機を回しリビングで眠りにつく
それの繰り返し。
…たまにお義父さん達が様子を見に来てくれる
大丈夫だと笑顔を忘れずに作り
気持ちを込めて食事を用意する。
…今思えばどれだけ周りの人に救われただろう。
そんなある日の夜だった
「疲れた…けど、動いてるときは何も考えなくていいから楽だな。」
止まると考えてしまう
考えてしまうから酒を飲む
まったく酔えない酒を
「こんなに不味かったかな?」
思えば最初の酒は旨かった。
別にとてつもなく高いわけでもない
今、買おうと思えば買えるレベルの酒
「…誰といるかって大事なんだな。」
俺は苦笑いしながら安いつまみを不味い酒で
流し込んだ。
「……どうして酔えないんだよ」
俺、こんなに酒強かったか?
確かに弱くは無かったが…
「舞が居なかったらと思うとゾッとするな。」
本当に舞の存在がでかい
あの子が居なければ俺はこの世を簡単に
諦めていただろう…そして
あの世で今まで見たこと無いレベルで
ママ姫に怒られるんだ。
「…母さん、俺はいい父親やっていけるかな?」
俺がボソッとそんなことを言うと
壁にかけていた写真が大きな音を立てて床に落ちた
「ビックリした…心臓が鼻から出るかと思った…」
俺は写真を拾い上げた
「…幸せそうだな」
落ちた写真には笑顔の俺達3人家族が写っていた
「…呑気に笑っちゃって」
うらやましい…その感情しか出てこない
「姫…」
俺は涙を抑えることが出来ず
何とか声を圧し殺して泣いた
あぁ…ダメだ…しっかりしないと…
姫を…母さんを安心させないと
俺はそのまま眠ってしまった
「おい」
声が聞こえる
「おい」
聞き覚えがある声
「無視すんなパパりん!」
俺は目を開く
「やっと気付いたか…相変わらず鈍いわね?」
そこには姫がいた。
「え?え?な、何で!?…俺、死んだのか?」
「舞がいるんだから死んだら殺すわよ?」
「やめてくれるかな!?」
「まぁ、ここがあの世か夢なのかはさておき…」
「さておかないで!?大事だよ!?」
「小さいことを気にする男ね…気にするのはアソコだけにしときなさい?」
「俺のは小さくないぞ!?」
「知らないわよ…比べる相手がいないんだもの」
「お、おう」
「それより、はい!罰ゲーム!」
「は、はぁ!?」
「だってママ姫って呼んでなかったでしょ?」
「あ、あぁ…いやいやいや…それなら君も」
「私はちゃんと呼んでましたぁ~霊感が無い君が悪いんですぅ~」
「いや、意識無かったけど生きてたじゃん君?」
「幽体離脱を習得してましたぁ~」
「幽体離脱!?」
「何回か家にも憑いて帰りましたぁ~」
「肩が重いなぁ~って日があったけどまさか…」
「正解!」
「何かアクションしてよ!?」
「したじゃない今日」
「な、何を?」
「写真、落としたでしょ?」
「あれ、母さん!?」
「あぁ!またママ姫じゃなくなってる!」
「うぐっ…い、いいだろ?母さんって呼びたいんだよ」
「えぇ~…ちなみに何で?」
「舞と話すときにさ母さんって話しに出せばすぐに頭に浮かぶだろ?」
「た、確かにママ姫って娘との会話に出てくるの恥ずかしいわね」
「そうそう…それで母さんが癖になってな…」
「寂しいけど仕方ないわね…ねぇお父さん?」
「なんだい母さん」
「お願いするわよ?」
「そう言えばそうだった…何が望みだい?」
「そうね…一週間に一度お供え変えて欲しいのと…お線香は毎日やって欲しいのと~」
「おいおい…それくらいやってるぞ?」
「知ってるわよ…このお願いが本命よ」
「…何かな?」
姫は少し声を震わせながら
こちらを笑いながら見つめて
「私のこと忘れないで?最後まで…愛していて?そして…舞を幸せにしてあげて?」
姫はそう言って消えてしまった
「姫!!」
俺は汗ぐっしょりで目を覚ました
「…夢か」
俺は洗面台に向かい顔を洗った
鏡を見つめた俺は自分の顔をパン!パン!と叩き
「……しっかりしろ、神川 凛!姫が愛している男がこんなだらしない男でいいのか?良いわけ無いよな?」
俺は大きく息を吸いおもいっきり吐き出した
「よっしゃ!生き抜いてみますか!」
俺はそう決意した。
「そうだ…あの時、写真が落ちたんだった」
11話くらいかけて思い出した俺は
納得しお酒を口に含んだ
「うん、今日も元気だ酒がうまい!」
…また、母さんが来たのかな?
舞の彼氏をいじめたわね!?って
「いや、母さん…いじめたわけじゃないんだ…いや、いじめたのか?」
何だかよく分からなくなってしまった…
「秋兎君と舞が結婚か…」
正直寂しいが普通に応援したい
何回も言うが別に秋兎君は好きだ。
俺が女性なら抱かれたいし
秋兎君が女性なら抱きたいくらいには好きだ
また、写真が落ちた
ごめん母さん…
「まぁ、人間変わるときは変わるもんだしな」
それがいい方に行くか悪い方に行くかの
違いだけで…そして
「いい方に行くように導いてあげるのが周りの…俺の役目だよな!」
よし!明日からがんばるぞ!
秋兎君を立派な花婿にしてやる!
花婿修行編開幕じゃ!
俺は勝手に宣言した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます