色鉛筆

のんびりとした休み時間……に戻りたい。

そう心から思う……

何故なら……




「ねぇ……秋兎くん?」


「何だよ神川?」


「色鉛筆って素敵よね」


「唐突だな」


「だって綺麗じゃない?」


「まぁ、綺麗だが……いつもの感じじゃないな?」


「いつもとは?」


「い、いつもはもっとこう……」


「そうね。ラブラブな話よね秋兎くん。」


そう神川が言うと俺の横にいる

神川の父さんが眉毛をピクッとさせて


「そうなのかね秋兎くん?」


「え、えぇ……まぁ。」


話しにくい!

何だこの状況は!?

初デートで彼女家&お父さんとご対面!

心の準備が欲しかったわ!



「すごくラブラブよパパ…それはそれは濃密に」


「ほぉ……」


「や、やめないか?神川?……この話?」


「私に言ってるのかね秋兎くん?」


「ち、違います!娘さんに言いました!」


「ふむ……そうか。しかし分かりにくいから次から私を呼ぶ時はパパりんと呼んでくれ」


「ぱ、パパりんですか?」


呼べるか!何だ!素なのかボケてるのか分かんねぇ!



「……まだ諦めてなかったの?」


「だって誰も呼んでくれないしな…パパ寂しい!」



「流石に呼ばないと思うわよパパ……」


「ぬぅ……そうか。」


「神川のお父さんはいつから喫茶店をしてるんですか?」



「パパりんと呼んでくれと……」


「パパ?」ゴゴゴゴゴゴ


「す、すまん舞……」


何か申し訳ない気持ちになりながら

娘に威圧されたお父さんを見る


「いつから……か。10年ほど前からだね。」


「確かそうね。私小学生だったし」


「元々親父の店だったんだがね。亡くなってから後を継いだんだよ。」



「なるほど…」


その後もこの奇妙な話し合いは続いた。

気が付けば日が落ちていた。




「すみません。お邪魔しました」


「本当に晩御飯食べて帰らないのかね?」


「はい。俺もまだやることがありますので」


「そうか…まぁまたいつでも来なさい。」


「はい!ありがとうございます。では」


「じゃあ、行きましょうダーリン」


「ダーリンって言うな!」


「あら?嫌なの?」


「嫌じゃないが……」


「いいじゃないパパ公認よ!」グッ!


「べ、別にパパはまだ許してなんかいないんだからな!」



ツンデレみたいに言った!


「ってか本当に送ってくれるのか?危ないぞ?暗いし」



「大丈夫よ。」


「本当か?パパりんも心配だから一緒に……」


「パパはいいの。お店に居なさい」


「……はぁ~い」


娘に叱られてトボトボと帰るお父さん

……なんか切ない!



「ってかやっぱりいいよ。心配だし」


「嫌よ…是が非でも送るわ」


「そうですか」


なかなか意思は硬いようで…これ以上は諦めた俺は帰り自転車でならな!と条件をつけた。

行きは俺が押してるが……




そんなこんなで色々あった今日。

帰り道ではあるが今日も今日とて

となりにいる神川さんは話しかけてきた



「ねぇ…秋兎くん?」


「何だよ神川?」


「色鉛筆って素敵よね」


「綺麗だからか?」


「それもあるけど……」


そう言うと神川は俺の手を握り



「色が加わると鮮やかになってとても……素敵よね」



彼女はそう言うと真っ赤な色鉛筆みたいに

頬を染めて笑った。

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