第13話 クリミヤ併合とプーチンの愛国

クリミヤ(自治共和国)併合

ソ連時代にフルシチョフは同じ連邦内だからと、構成国ウクライナ共和国に「同胞への贈り物」として移管した歴史がある(プーチンは誤った選択と批判している)。今にしたら迷惑な贈り物をしたものである。小さな島4つ、どこかの国に贈り物してくれていたら、シベリア開発なんかでお互い利益になったのにと思うのだが・・。

ウクライナ独立後の1年後、クリミヤ州議会はウクライナからの独立を宣言し、ロシアに支持を求めた(クリミアはロシア人が6割占める)。チェチェン共和国の独立要求にロシアが武力鎮圧を開始すると、一方で自国からの独立を禁圧しながら、他方でクリミアの独立を支持するのは自己矛盾であるとの国際的批判が高まり、ロシアはクリミア独立への支持を取りやめた経緯がある。ウクライナ、クリミヤの双方の話し合いがあって、高度な自治が認められた自治共和国としてウクライに留まった。


クリミヤ半島は黒海の要衝である。半島の先の都市セバストポリにはロシア黒海艦隊の基地があり、ロシアとウクライナの共同管理であった。ウクライナの親欧米派政権が出来て、プーチンは危機感を募らせて、電撃的併合となったのである。歴史的な事情があるにしても、武力を背景にした国境の現状変更には違いない。

ドイツのメルケルはクリミヤ併合に対して、「今は21世紀である。それにも関わらず、モスクワは19世紀や20世紀の方法を用いて、非合法的な振る舞いを行っている。すなわち法の支配ではなくジャングルの掟に従っている」このフレーズは一躍有名になった。クリミヤ併合によってロシアはG8から排除された。


プーチンの愛国主義

ソ連時代は多数民族であったロシア人が、ソ連邦の崩壊によって、ロシア以外の国では少数民族として存在することになったのである。プーチンはこれらのロシア人を、経済的な支援を含めて見捨てることはないとしている。

南オセアチ紛争(ジョージア戦争)などもソ連崩壊が残した民族問題と云える。これにNATO加盟や石油・天然ガスの資源権益が絡んで複雑なものとなっている。

社会主義という共通イデオロギーで辛うじて多民族モザイク国家を繋ぎとめてきたのである。それに変わるものをプーチンは愛国主義とした。三色の国旗と双頭の鷲の国章は帝政時代のもの、スターリンも祖国大戦争での勝利の面が強調されるようになった。歌詞は変えたが国歌は歌い慣れたソ連時代の曲を採用、ソ連時代に否定されたロシア正教、帝政時代の歴史上の人物の復活、コサックの再評価、使えるものは全てであった。プーチンの愛国は便法でないだけに・・愛国の希薄な私は何も言えない。

民族自決主義はレーニンやアメリカのウイルソンが唱えたものであるが、帝国主義時代の植民地からの独立がテーマとされたものである。民族共存の新しい概念が出来ないものかと私は思う。習近平の夢は中国の統一であるが、今となっては一民族が必ず一つの国家である必要もないと思う。

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