③
もし、俺と彼女が違う出逢い方をしていたら、今頃どうなっていただろうか。
今年の夏は本当に楽しかった。
ずっと、夏が終わらなければいいのに。そんな風に思っていた。
行きたい場所はもっと他にあった。
二人で遊園地や水族館、秋には紅葉、冬にはスキー。来年には海に行こうと約束もしていた。
その全てを潰したのは俺自身だ。
彼女の想いから逃げて、
クラスの皆から逃げて、
現実からも逃げて、
あの日から俺の時間は止まったまま、動かない。
動きだそうにも、最初の一歩が踏み出せない。
ずっとずっと俺は一人だった。
そんな俺に彼女は言った。
一緒にご飯を食べようと、
笑っていた方が楽しいよ、と。
……なんでこんなに優しいんだよ。俺はたいした人間じゃないのに。
今頃になって彼女の言葉、仕草、全てが脳裏に浮かびあがっていく。
涙が出そうなくらい想いが溢れてくる。
また友達になんて、無理だよな……。俺はもう、取り返しのつかないことをしてしまったんだから。
誰もいない屋上で俺は一人寝転がり、そんな事を考える。
もう隣に寄り添って、あの晴れた大空のように笑ってくれる彼女はいないんだと。
俺の手を優しく握り返してくれる彼女は遠くにいったんだと。
想像して胸が痛んだ。
はりさけそうなくらい痛んだ。
そこで自分の気持ちがはっきりとわかった。
あぁ、そうか。
俺はこんなにも彼女に恋していたのか。
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