【秋】
①
少し冷えた季節になった。
夏が終わった新学期。
クラスの状況も、俺の立場も変わらない。
俺はまたしても孤立していた。
もちろん、声をかけてくれる人はいない。
彼女と言えば、ただのクラスメイトになってしまった。
席替えで隣ではなくなり、あの日以来話しかけられる事もなくなった。
たまに彼女と目が合う時もあるが、それもどちらかが逸らしてしまい、長くは続かない。
これが正しい反応なのだ。そうでなくっちゃダメなんだ。
俺にはこれで、いいんだ。
※※※
それはあの事件からしばらくした、一年後の出来事。
不意にあるクラスメイトが俺に話しかけてきた。
「あんた、いじめてる子を助けたって?」
彼女とは全くというほど接点がなかったので驚いた。
「……なんでそのことを?」
「えっ、皆それくらい知ってるよ」
皆、知っていたことには驚いた。
だが、知っているからと言って何か変わるわけじゃない。
暴力を振るったことを取り返せるワケではない。
「でさ。それで皆、口には出さないんだけど、あんたが一人ぼっちなのを同情してるんだよね……。謝りたいって人もいるから」
最初は半信半疑だった。
同情なんて上っ面だけで、俺を騙しているのか、そんな事を考えていた。
「放課後、来てくれないかな? 話したいことがあるから」
でも、俺はその言葉に乗った。
何かを信じてみたかった、そんな気持ちもあった。
そして何より、環境を変えたいと思っていた。
その時の俺は、まだそんな事を思っていた。
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