⑤
「俺は優しい人じゃない。ただの……最低な小心者だ」
苦笑ぎみで告げる。なんて、自分は弱い生き物なのだろう。
「この夏は、本当に楽しかった。俺にとって大切な思い出になったよ、ありがとう」
「だったら───」
彼女の言葉を遮って、俺は告げる。
「 ダメだ、これでお別れしよう。俺と会ってるのを知られたら、きっと君は傷つく。そんな姿、俺は見たくない」
とてつもなく、ちっぽけなやつだ。
「……」
彼女は何も言わず、俺の腕から手を離した。
涙でいっぱいの目を擦り、彼女は振り返る前に俺に告げた。
「わかった。……ばいばい」
今にも消えてしまいそうな、小さな声だった。
俺も去って行く。彼女とは違う方向へ。
これは間違っていたかもしれない。しかし、後悔はしてなかった。
お互いの為。仕方のないことなのだから。
でも彼女に会えて、本当に良かった。
上空の空に向け、ため息をこぼす。
オレンジ色の光はそれをかき消すように、微笑んでくれている。
公園の側の木々たちは、今から徐々に色を変えていくようだ。
何もかも変化していく。普遍のものなど存在しない。
あるとしたら、俺くらいか。
夕暮れ時。夏の終わり。
俺はまた一人になった。
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