22、ご褒美は如何ですか?
三回戦を突破した後、俺はすぐに帰宅していた。
寝不足もさることながら、殴られたりしたので身体の調子もそんなに良くない。
ウェンディ先輩の部屋に行って話したいことはあったが、また後日でも大丈夫だろう。
ちなみにウェンディ先輩のクラスも無事に勝ち進んだようで、準決勝を戦う4チームのうち事務クラスが半分の2チーム。
───ざまあみろ。
シャーロット様をはじめ、国の偉い方達がイライラしてる姿が目に浮かぶ。
俺たちだってやれば出来るんだ。
うちのクラスは準決勝で敗退しちゃいそうだが、ウェンディ先輩なら決勝まで残ってくれそうな気がする。
マナ対ウェンディ先輩。
───やばい、物凄く見たい。
まぁ、その前に自分の準決勝に備えてまずは休むことかな。
明日は学園自体が完全に休みで、準決勝は明後日行われる。
グランドに砦や観覧席の設営などの為、明日は立ち入り禁止だそうだ。
睡眠不足解消と体力回復の為に、俺にはとてもありがたい休日。
「ご褒美は如何ですか?」
「‥‥‥どこの店員さんだ?」
ご機嫌に部屋に入ってくる美女。
「カイト、準決勝進出おめでとう!」
「ありがとう。マナも圧巻の勝利おめでとう」
完全に力でねじ伏せた勝利だと聞いた。
「私はいいのよ。それよりカイト達の三回戦でなんか色々あったって聞いたけど‥‥‥大丈夫?」
‥‥‥どの事だろう。
「色々とは?」
「なんか女子生徒を襲って、退学になった人が数人出たって」
「あ、退学になったんだ」
哀れ先輩方。
サラの望んだ転落人生の始まりです。
でもまるで同情はしない、自業自得。
「何故か、ソイツら自身がかなり怪我してるみたいで、本人達は『風』がどうのこうのと言ってるらしいわよ」
「へぇー」
先輩方にも俺のせいだとわからなかったようだ。
もしかして、コッソリ使えば意外と実用可能か?
「‥‥‥で、大丈夫なの?」
「あ、うん。女子生徒は無事だった。『風』ってのは‥‥‥ちょっと何言ってるかわかんないな」
なんとなく女子生徒がサラだと言わない方が良い気がした。
本人は気にしてなかったとしても、かなりデリケートな問題だと思う。
『風』については知らない振りで‥‥‥。
「ふーん。で、カイトは近くにいたの?」
「‥‥‥まあ、同じクラスだからね。側ってわけじゃないけど、近くには居たよ」
「で、ここまでが、学園で噂されてる内容で。私が王国の人に教えてもらった情報だと、女子生徒はサラちゃんなんでしょ?」
「‥‥‥知ってたのか、性格悪いぞ」
「私の情報網を舐めたカイトが悪い。後、サラちゃんと一緒に居た小さな男子生徒も暴行を受けたって聞いてるけど?」
小さなってなんだよ‥‥‥俺を形容する言葉は他にないんですか?
「誰だろうね」
「カイトの顔についてる
「‥‥‥え?」
思わず頬をさする俺。
‥‥‥おかしい。
さっき鏡で確認した時は何もなかったんだけど‥‥‥時間が経って変色したか?
「そう。頬を殴られたの‥‥‥」
「あ‥‥‥謀ったな」
「やっぱり現場に居た男子生徒はカイトなんじゃない‥‥‥大丈夫なの?」
「この通りピンピンしてます」
まだ少し痛いが、何日かしたら治るだろう。
「大丈夫なら良いんだけど、なんでそんなつまらない嘘をついたの?」
‥‥‥えっと。
「サラのプライバシーの為かな、あんまり人には話さない方がいいと思って、なんとなく」
「まあ、確かに女の子にとってあんまり人に話されたくない事かもね‥‥‥」
「だろ?」
「ところでさ、結局ソイツらを叩きのめしたのは誰なの? サラちゃんとカイトじゃ普通に戦っても倒せないでしょ?」
「俺は気絶しちゃってて見てないんだけど、サラの話だと急に竜巻が起こって先輩方は吹き飛ばされたらしいよ」
「‥‥‥何それ?」
「さあ? おかしな事もあるもんだな。まさに神風!」
「竜巻がそんな都合良く、サラちゃんとカイトだけ避けて吹くわけないでしょ‥‥‥」
いちいちごもっとも‥‥‥。
「‥‥‥事実起こったんだから、俺に言われてもな」
「嘘ついてたら、今日のご褒美はお預けになるわよ?」
‥‥‥なんだその複雑な質問は?
「えっと‥‥‥」
「いるの? いらないの?」
趣旨が変わってる。
なんて答えれば正解なんだろう。
「‥‥‥」
「‥‥‥答えてくれないの?」
悲しい顔で俺を見てくるマナ。
答えるってのは、嘘をついてるかついてないかを正直に話せって事か?
いるかいらないかの質問に答えろって事か?
わからん。
そして話がちらかってきた。
なんかもう隠すのめんどくさいな‥‥‥。
───マナには話しとくか?
すでに怪しまれてるし、どうせいつかバレそうだしな‥‥‥何よりなんとなく胸が痛い。
「マナ、今から俺が話すこと、他の人に絶対に言わないで欲しいんだけど」
「‥‥‥話してくれるの?」
「心して聞いてくれ」
「良かった。カイトがご褒美を欲しがってくれた!」
「‥‥‥マナ、その話は一回置いとこうか」
「駄目よ、こっちの話の方が大事なんだから」
「はい?」
「サラちゃんを襲った人達は、私が思い付かないような方法でカイトが倒したんでしょ? そんな事はお見通しよ」
「‥‥‥ほう」
俺の顔を掴み、顔を寄せてくるマナ。
やはり隠しても無駄かもな。
「そんな事より、自分で言っといてなんだけど、いらないって言われたらどうしようかと‥‥‥とりあえず、話をする前にご褒美一回イッとく?」
「‥‥‥いや、後にしようか」
果たして、たった1日の休日で俺の睡眠不足解消と体力の回復は出来るのであろうか‥‥‥。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます