21、タフネスサラちゃん。
「カイト君!」
「‥‥‥あ、サラ大丈夫だった?」
俺が目を覚ますと、目の前に涙ぐむサラの顔があった。
「ごめんね。私は大丈夫」
「それは良かった‥‥‥あ、ごめん!」
どうやらサラに膝枕をされていたようだ。
慌てて飛び起きたのだが、少し身体が痛い。
「‥‥‥動いて平気?」
「うん。‥‥‥俺どのくらい寝てた? あの後どうなった?」
辺りの様子を確認すると、少し離れた所に敵の先輩方がノビて転がっていた。
「カイト君が気絶してからそんなに時間は経ってないよ。どっちが勝ったか分からないけど、鐘の音がさっき聞こえたから、試合は終わったみたいだけど」
「そうか‥‥‥勝ってるといいな」
ラール達上手いことやったかな?
とりあえず、確かめに戻ろう。
「あ、まだ動かない方がいいよ! そのうち人が助けに来てくれると思うし」
歩き出そうとした俺の腕を掴むサラ。
「平気平気。ちょっと寝てただけだから」
むしろ少しとは言え、寝たことで頭はスッキリしていたりする。
「‥‥‥あのね、あんまり言いたくなかったんだけど、カイト君殴られて倒れた後、変な奇声をあげてたの‥‥‥多分、頭を強く打ったんだと思う」
「変な奇声?」
「なんか‥‥‥デュフデュフジュルジュルみたいな、かなりキモ‥‥‥怖かった‥‥‥」
‥‥‥。
「ねえ、ちなみにあの先輩方はなんで倒れてるの?」
ノビてる先輩方。
もちろん俺が『新たなる力』で倒したのだが、もしかしたらサラの目には違うように見えていたのかも‥‥‥。
「あ、そうか、カイト君は気を失ってたから見てないんだよね。凄いのよ、急に竜巻が起こってあの人達、空に飛ばされたんだよ!」
「ほー」
「地面に叩きつけられて、皆気絶しちゃった。助けに来てくれた男の子が最弱のカイト君だった時は、かなり絶望したんだけど、まさか自然現象に助けられるとは思わなかったわ‥‥‥」
サラッと酷い事を言うサラ。
「そうか、竜巻か‥‥‥」
やはり俺が起こした風だとは気付かれていない。
そして『新たなる力』の呪文は人から聞いたらかなりキモい?
‥‥‥まあ、そりゃそうか。
俺はあのキモいオッサンの真似して発音してんだもんな‥‥‥。
「殴られて倒れたと思ったら、急に『デュフデュフ』って‥‥‥多分カイト君が何やっても大概大丈夫なマナさんが見ても、ドン引きするくらいの異常さだったよ。だから、あんまり今は動かない方がいいと思うの」
‥‥‥。
「サラ、俺はもう大丈夫だから、とりあえず広場に戻ろうか‥‥‥」
あまり聞いてると悲しくなりそうだったので、俺はサラを強引に引っ張って広場に向かうのだった。
───まあ、バレてないならいいや‥‥‥。
広場に戻ると、どちらが勝ったのか一目瞭然だった。
喜び騒ぐ事務クラスの一同と、崩れ落ちている先輩方。
「あ、カイト! やったぞ、準決勝だ!」
ラールに抱きつかれた。
「そうみたいだね」
「確実にあっちの大将が一人になるタイミングを待ってたから、少し時間はかかっちゃったけどな」
いや、それが正解。
無理に大将を狙って、人数を揃えられたら此方が負けていた可能性もあったんだ。
ラールは出来る子。
「あれ? サラは何やってんだ?」
俺達が居た辺りの森の方を指差しながら、審判教師と何か話しているサラ。
あ、忘れてた。
先輩方がまだ森の中でノビてたんだよな。
救援を出せと言ってるのだろう。
自分が襲われた相手だってのに‥‥‥。
たまに口は悪いが、サラはやはり良い
教師と話し終えて、ニコニコと此方に戻ってくるサラ。
「ちゃんと説明できた?」
「‥‥‥どうかな、上手くいくと良いんだけど」
「場所が正確にわからなかったんなら、俺が話してこようか?」
「ううん、場所は大丈夫。とりあえず騎士道精神に反する行為だって先生も言ってたけど‥‥‥」
「‥‥‥ん? 何話したの?」
「あっちに強姦魔がいるから、早く処罰しろって。学園側がちゃんとしないなら、後で騎士団に話に行くって脅しといたよ」
‥‥‥あ、そっちか。
そうだよな。
今日のアイツらのやった行為は許される事じゃない‥‥‥。
「サラ、俺も証言してくるよ」
「あ、やめてカイト君! ちょっとありもしない事をかなり大袈裟に話してるから、話が食い違っちゃうの‥‥‥お願い、私の楽しみを取らないで。こんなチャンスは滅多にないの‥‥‥」
「‥‥‥ほう」
「未遂とは言え私にあんな事したんだから、アイツらには地獄を味わって貰わないと。エリートコースから、一気に転落する人間の人生が見れるなんてゾクゾクするねカイト君」
ニヤリと嬉しそうに笑うサラ。
そう言えば、サラの父親は裁判長だったっけ?
ちなみにモスグリーン王国の裁判長は国の重役が就任し、好き勝手に判決を言い渡せると言う噂を聞いたことがある‥‥‥。
‥‥‥もしかしてサラって最強?
まあ、タフな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます