第4話 不図

警察が来るまでの間、重苦しいが現実感のない不思議な感情を城嶋は味わっていた。きっとこんな時に煙草が吸いたくなるのだろう。非喫煙者の城嶋には不思議とそう思われた。

警察が到着し話を聞かれる間も、現実を感じられなかった。上司から理不尽に咎められてやっと事の重大さを理解し始めた。

「ついてない。」

城嶋は自然とつぶやいた。すぐに我に返る。隣にいる少女に聞かれてはいないだろうかと。幸い少女はずっと沈んでいて城嶋の言葉に気がつかなかった。ふと城嶋はまだあどけない横顔に浮かぶ焦燥とした顔の似合わなさに見惚れた。

そして、今すぐにでも抱きしめて大丈夫だと言ってやりたい気持ちになった。


解放された時には午前1時を回っていた。城嶋は沈んだままの少女に話しかける。

「よければ、家の近くまで車で送っていこう。煙草臭くて悪いんだけど。」

「いいえ。むしろありがとうございます。」

少女は力なく、しかしはっきりと返事をした。

「私は城嶋和也というんだ。君の名前も教えてくれるかい。」

「はなかです。草木花果です。」

「そうか、やっぱりいい名前だね。花果ちゃん、助手席にお乗り。」

城嶋は微笑んで花果を助手席に乗せると、ドアを閉めニタリと笑った。

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