第3話 驟然

学習塾を就職に選んだのは、多少なりとも勉学に自信があったからだ。それでいて人を垂らしこむ会話が上手だったので城嶋は順調に業績を伸ばしていった。


ある突然の雨の日、授業が終わると一人の少女がどうするわけでもなく入口のすぐ外におずおずと佇んでいた。

保護者にしては若すぎるし生徒にしては細いとはいえ体が育ちすぎているようだったから城嶋は戸惑った。しかし、恐らく用がある少女を放っておくわけにもいかず、垂らしこむような笑顔で少女に話しかけた。

少女は意外にもはっきりとした声で、妹の鈴蘭に傘を渡しに行くように言われたことを述べた。その様子に感心しつつも一方で城嶋は、鈴蘭という生徒が欠席であること、そしてそれを少女が知らないことを疑問に思った。


不信感を募らせつつも、一応父親から欠席連絡があったことを伝えると瞬く間に少女の顔から年頃の血色が消えた。少女は城嶋を気にする余裕もなく、電話を掛けると恐らく母であろう相手に向けて震える声で言った。


「恭一に攫われた。」

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