俺は舌が普通の人より短い。特に不便とかはないし、人生の最初の17年間は気づいていなかった。17歳のとき、初めて彼女ができて、数ヶ月付き合っていて、ディープキスをしてみたら、その彼女が「貴方舌が短いかも」と言ってきた。

そして彼女の舌と比べて、たしかに短い。ネットで検索してみたら、何らかの病気か、病気まではないがちょっと異常みたいなものだった。生活に支障はないから、気にしていないが、お互いも初恋なので、舌が短いの第一発見者として彼女は嬉しかった。


やがてその彼女と別れた。間に他の彼女もできたが、ディープキスに至らなかった。そして次の彼女ができて、同棲していた。やっぱりディープキスのとき舌が短いことが気づかれた。その時もやっぱりその彼女が興奮していて、俺はその雰囲気を破りたくないから、初めて知ったフリをしていた。彼女は大喜びして、舌が短いの第一発見者として嬉しかった。


でもまた別れた。


で、今の彼女と付き合うことになっている。だんだん親しくなってきたので、そろそろのディープキス。またその小芝居をやらないといけないかなと思って、彼女をキスしたら、あれ、今までとは違うかも。相手の舌も短いぞ。俺よりも短いかも。一瞬頭がうまく動かなくて、「Honey、舌が短いのでは?」と言ってしまった。


そしてその彼女は、「あら〜本当?やばい、あ、本当だ。今まで気づいていなかったわ。貴方とキスして初めて知ったの!」と明らかな小芝居を始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る