第48話 ブレイジング・ボルト

 俺の属性は雷属性が一番強く、次に氷属性が強い。特に氷のほうは中々に珍しいようで、雷との相性もいいので応用も効きやすいというかなり当たりの組み合わせらしかった。


「師匠、それで一番簡単な技とはどういうものなのでしょうか?」

「うむ、第1の技は非常に単純だ。先ほどからお前がやっていた突き、今度はあれに合わせて属性魔装を先端に纏わせるだけじゃ」


 纏わせるだけじゃと言われても魔装なんて今まで使った事が無いのにいきなり出来るわけがない。何度かアリスの技を見ているとは言っても、見ただけで何となく出し方が分かるなんてそんなん天才しか無理だろ。


 と、言ってやりたいのだが、師匠はもうやってみろモードで話しかけられる感じでは無いし、アリスは俺の技を見るのが楽しみなのか若干ワクワクしたような表情で見ている。子供かよ。


 とにかく属性は分かっているので、目を瞑って自分の中に何かあるという事を感じ取取ろうとしてみた。だが何も感じない。本当に俺の中に魔元素なんてものがあるのだろうか。それとも魔力ではなく魔元素という名前なのがしっくり来ていないからダメなのか?


「うーん」


 魔元素が感じられない以上もうイメージで何とかしてみるしかない。

 雷と言われて俺が思い浮かべるのは、前世で台風の夜に見たあの時の光景だ。あれはマジでヤバかった、光ったと思ったら同時に轟音が鳴って、気づいたら家の近くにあった背の高い木が燃えていたのだ。あの時が人生で一番雷の威力と恐ろしさを思い知らされた瞬間だったなぁ。


 轟音と雷光、それと炎か。

 うんうん言いながらしばらく集中していると、突然横から肩を叩かれた。


「うわっ、な、何ですか!?」

「何ですかじゃないわ。槍の先を見てみぃ」


 言われてトライデントの先を見てみると、何とそこには青かった槍の先端の鉄部分が真っ赤に染まり、その上バリバリと音を立てながら目に見えて雷が走っていた。


「お、おお!」

「どうやら出来たようじゃな。それを留めたまま槍を扱えるか?」

「たぶん」


 雷が走っている槍先がちょっと怖いが、そのままの状態を維持するようにイメージして槍を振り回したり突いたりしてみる。

 最初は難しいかと思ったが、一度魔装を出していれば維持するのは思ったより簡単で、いくら振り回しても解けることはなかった。


「うむ、どうやら維持出来ておるようじゃな。では実際に技として放ってみるがよい。技を放つときは技名を言うとタイミングが取りやすいぞ」

「了解」


 技名、技名、それって今からやる技の名前は自分で付けて良いってことなのだろうか。そんな事を考えつつも、もうすぐ3つ目の山に入る手前でさっきまで行っていた反復動作を高速道路の壁に向かって放つ。その瞬間、辺りが白で塗りつぶされた。


 ズガーン!!!


 凄まじい閃光と轟音。なんとなく流れるように突いたトライデントの先端は、溶けてすでに原形を留めていない。そして、その技を受けた高速道路の壁にはぽっかりと穴が開き中は赤々と溶け、周りは放射状にひび割れが出来ていた。穴からは煙とタールの臭いが漂い、しっかりと向こう側の景色が見えていたようだった。


 そんなバカな。高速道路の壁はほぼ無敵と言ってもいいぐらいの強度があるはずなのに、それがあっさり貫通するなんて。と、じわじわと自動修復されていく穴を遠目で見ながら、俺は今見た光景が信じられず唖然としていた。


「いやー、凄まじかったのう今のは。狙ってやったのか?」

「い、いえ、ちょっと考え事をしていたので狙ってないです。たまたまタイミングががっちり合ってたとしか」

「まあそんな事じゃろうと思ったわい。だが今のを見たなら分かったはずじゃ、あの威力、あれならばムーにも容易に傷をつけることが出来るとな」

「はい、十分に」


 槍を使い捨てにしてしまうにしても、あの技はとてつもない破壊力があった。これでまだ1つ目の一番簡単な技だというのだから、この先一体どうなっていくのかちょっと不安だ。


「それで、技名は決まったのかアレン?」

「ああ、槍の先端が赤くなって発熱していたし、『ブレイジング・ボルト』と名付けることにした」


 ブレイジングとは赤々と燃え上がるみたいな意味があったはずなので、ちょっと電撃の技としては変だが、あの時の槍の様子から見てもピッタリなんじゃないかと思っている。


しかしまいった、こんなに威力が強いんじゃ人相手には絶対に使えない。もし使ったら一発で殺してしまう。という事は特に人間を相手にしそうな今回は使えないという事だ。せっかく覚えたのに……。


「師匠。これは人間相手には使えそうにないので、基礎の方を引き続きお願いします」

「それは無理じゃ」

「え!? な、何故ですか!」

「だって槍がもうないじゃん」

「あっ……」



 ……ポティートに着いたら、伯爵様に槍もらおう。

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