第7話 ゴミ掃除
俺のスキル『ロード』は、開始地点と終了地点を設定して道を作っていくという物だ。その道中には当然のように岩や石、木などの障害物があることもある。その中でも最も嫌なのはゴミだ。特にゴブリンの腰布の切れ端の臭いと言ったら、前世で見た汚いドブがいい匂いなんじゃないかと錯覚するほど
今目の前に野盗が居るわけだが、恰好を見てみればレベル上げの時に見つけたゴブリンの腰布とどこが違うんだと言うぐらい汚い服を着ている。
あー、やだやだ。こんなのが今から作ろうとしている俺の道に居座って女を襲おうとしているなんて、女はともかく道が汚れるのは我慢ならん。
「オイお前ら」
「ああ? 何だてめえ?」
「へへっ、こりゃいいや! こいつ近くの村から出て来た世間知らずのガキだぜ! てことは食料たんまりもってんじゃねえか?」
「お、そうか! 俺ちょうど腹減ってたんだ。女も手に入ったし、宝石も金もたんまり入るし、今日は最高の日だぜ! ひゃっはは!」
そう言いながら一人の野盗が俺に躍りかかって来る。俺はそんなノロノロまな野盗の剣を、左手でバシッと掴んだ。
「なっ!?」
それを見て驚く野盗に、俺は一言つげる。
「俺はここを真っ直ぐ通りたいんだ。それなのにゴブリンの腰布みたいに臭いおっさんがこんなに居たんじゃ通れない。分かったらさっさと消えてくれないか?」
そう言うとみるみるオッサンたちの顔が紅潮し始め、次の瞬間には奇声を上げて一斉に切りかかって来た。
「ふざけんなこのガキがぁ!!」
「てめえばらしてゴブリンのエサにしてやるぞコラァ!」
あーあ、めんどくさ。
適当に避けながら父さんにもらった剣を使おうかなと考えていたが、こいつらも一応人間ではある。いきなり人間を切り殺すのはちょっとハードルが高いな。それに血で道が汚れるし。
「避けんなやクソガキ!」
避けるに決まってんだろ馬鹿か。
それにしてもどうやってこいつらを倒そうかな。剣が使えないとなると素手で殴り飛ばすことになるんだけど、ばっちいから触りたくないんだよなぁ。
こういう時、背中の剣が片刃の剣だったらなと思う。この世界じゃ両刃の剣の方が一般的だから片刃の剣を手に入れるならエルフの国に行くか、たまたま流れて来た者を運よく買うしかない。だがまあ、せっかく剣を振り回せる世界なのだから1回ぐらいは使ってみたいものだ。刀もあるらしいしな。
そうそうエルフと言えば、何でも彼らは森で暮らしてるからか身体能力が高くて、トリッキーな動きで舞うように戦うんだとさ。一度見てみたいもんだなぁ。
「オラァ! なんで当たらねぇんだ!」
それにしてもこいつらの動きときたら、戦いなんか殆どした事も無い素人の俺から見てもかなりお粗末だな。大振りで単調だし、レベル10ぐらいの時でも簡単に避けれそうだぞこれじゃあ。
いや待てよ、もしかしたらこの臭さがコイツ等の最大の武器なのかも。実際鼻がもげそうなくらい臭いし。
「くっ、卑怯だぞ! そんな臭いにおいで鼻をもごうとしてくるなんて! うえぇ、きもちわるっ」
「そんなに臭いのっ!?」
「自分の臭いは自分じゃわからないって言うしなぁ。風呂入ったら?」
「……かえったらはいる」
よし! ぶっ飛ばそう!
何か無いかな。いい感じの木の棒でもあればそれでぶっ飛ばせるんだけど。
「うーん……おっ!」
倒れている騎士の近くにある剣。あれもしかして片刃の剣じゃないか? てことはこの人もしかしてエルフ? まぁ何でもいいや、ラッキー!
「まずはあれを拾わないとな。それっ!」
「な、何だ!?」
「小僧がスゲー速さで滑ってったぞ!?」
何のことは無い、ただ『動く歩道』で剣まで近づいただけだ。けどおっさんたちの驚き様はちょっと気分いいな。
しゃがんで手を伸ばし、そのまま剣を取る。
思った通りこの剣は片刃の剣だった。見た目はちょっと長めのサーベルってところかな。
「おい、小僧が剣を取りやがったぞ!」
「早く殺せお前ら!」
あー、遅いねぇ。ノロノロ過ぎ。これじゃあ亀にだって追い抜かれちゃうよ。
「じゃあお前ら今からぶっ飛ばすからな。覚悟しろよ!」
「ふざけんじゃねぇ! てめえ!」
ふざけてねぇよ。馬鹿みたいにまあ全員でかかって来てくれちゃって、いちいち探す手間が省けたな。さて。
「素人一刀流、峰。流れ切りッ!!」
「「「ぐはぁっ!!!?」」」
『動く歩道』を使いながらサーベルの峰を次々とおっさんたちの腹に打ち込んでいく。切ってないのに技名に切りってつけるなって? いいじゃんか別に。『流れ打ち』より『流れ切り』の方がちょっとカッコイイし。
「はー終わった終わった。弱かったなー、おっさんたち」
よし、これで後はこいつらを投げ捨てて馬車をどかせば真っ直ぐ進めるぞ。早速やろう!
「あの……」
「ん?」
……だれ?
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