美食家なんてクソくらえ ②
テーネは問題の美食同盟を追っていた。ダイナ―のマスターによると、急に押しかけてその店の料理を批評するのだとか。そして酷評しては自身の発行する新聞などで広めるというわけだ。
片付けを手伝った時に話を聞いたところ、連中のきな臭さが垣間見えた。
「でも地元の人が使っているなら外からのお客さんがいなくても……」
「それがな、美食同盟のシンパは過激で酷評された店をどれだけ迫害してもいいと思っている節があるらしくて地元で愛されている店が焼き討ちされたとか……」
「え」
とんでもない話である。魔の加護に関しては実際に人間への裏切り者として用意されたものだけに警戒されるのはさもありなんだが、自分の住処から離れた場所にある料理屋を攻撃するなど異常でしかない。
「おいしい」
「ちょ、ちょっと、落ちたものだよ?」
「それが気にならないくらいおいしいんです」
旅の最中で食料に困ったことがあり、よほどのことがないなら食べられる。この店の料理はおいしいので、乾いた砂の地面に落ちたくらいは気にならない。
というわけで美食同盟の後を付けているのだが、街を跨いでもなかなか好評を出す店がない。迂闊に手を出せば、過激なシンパが犯人を決めつけて暴れてしまう。よその町であってもその被害を避けるには、好評を出した町を後にしたところを襲うしかない。
「ん?」
そんな時、ある町の店ではさも来ることが分かっていたかの様に美食同盟が応対される。外ではなく、店の中での接待だ。そして案の定、良い感想を述べる。テーネは遠くからその様子を見ていた。気配を消して民家の屋根からレストランの中を見つめる。
「ええ、ええ、ではその様に」
「よろしくお願いします」
店の奥では何かをやり取りしている。箱に入ったあれは、予想するに金貨かなにかだろう。どこまで正当な美食家としての実力があるのかは知らないが、今の美食同盟はすっかり権威の張りぼてとなっていた。
「あれは……」
そのレストランのはす向かいに焼け落ちた店があった。テーネは以前来たことある旅人を装い、何が起きたのか聞き出すことにした。
「あれ、ここ何かあったんですか? また食べたくて来たんですけど」
「それがな、さっきはす向かいの店に美食同盟来ただろ? あれがうちの店をこき下ろしてからというもの、あいつらの信者に店を襲われてしまって……」
「なんてこと、さっきの街で似た様な被害があったので追ってみたら……」
美食同盟に中傷されればどうなるかというのも刻銘に見る羽目になった。はす向かいで美食同盟に賄賂らしきものを渡していたのを見ると、もう金を貰って信者を操って競争相手を暴力で潰すのが仕事だ。
「あれはどうにかしないと」
テーネは自分の手を汚さず利益の為に悪事を働く美食同盟の卑劣に我慢ならなかった。
街を出た美食同盟をテーネは追う。気配消しの程度は低いので一般的なバスターであれば看破出来るのだが、奴らの連れている護衛はかなり腕が悪い様でまるでこちらを見つけられない。
(うーん、あの町に酷い目にあった人がいるとなると……)
チャンスかに思えたが恨みを買う要素があるので手が出せない。
「あ」
その時、魔物の群れと彼らがバッティングしてしまう。その魔物は強いとはいえない上、本来大人しいタイプの毛むくじゃらな動物っぽい大柄の魔物だ。
「どけ!」
「あ」
が、よりにもよって子供を狙って攻撃をする。この魔物は子供を攻撃されると一気に狂暴化する。
「よし、これで」
危険度が低い魔物だが、怒らせると当然危ない。テーネはその辺の木を倒したり岩を動かして逃げ道を塞ぐ。美食同盟がどうなったのかは言うまでもない。
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