始まり

 これは、どのくらい昔のことだっただろうか。テーネ自身も覚えていないほど昔のことであった。彼は平凡な村の平凡な家で生まれ育った。この村では一般的な丸太の家、それが彼の生家であった。

「よっと……」

 日の出と共に起き、今日の仕事を済ませる。薪割りの家から燃料の薪を貰い、家まで持って帰る。共用の井戸まで何度か往復し、水を汲んで来る。そうしているうちに日が高くなり、村人の多くが追う様に仕事を始める。子供達は遊ぶ時間を確保する為、早起きして仕事に精を出す。テーネもその一人であったが、彼は少し変わっていた。

「母さん、仕事終わったよ」

「よし、遊んでいいよ。断崖には行かないようにね」

「蔵だから大丈夫」

 テーネが向かうのは、好奇心旺盛な子供達が行きたがる川の流れる高い崖ではなく、村に放置された蔵。彼は小さい頃から、他の子供に混ざるでもなくあの蔵に入り浸っていた。

「いってきまーす」

「まったくあの子は……」

 村から出ないので魔物などの危険がないのは母親として安心であったが、別の意味で心配もあった。あまり社交性がないことだ。来年は成人、もうすぐ14歳だというのに幼い頃から変わりがない。

「あれ? テーネはもう行ったのか?」

「いつもの蔵ですよ」

 外で野良仕事をしていた父親が遅れてやってくる。父もテーネの変わった面には心配があった。

「また数学か……建築家の息子でもないのに、何が面白いのかね?」

「危ないことしないのはいいけど、もう少し他の子と遊んでくれればねぇ」

 幼い頃から臆病で引っ込み思案のテーネは、他の子に混じって木登りやチャンバラごっこに興じることがない。大きくなれば治る、と思ったが蔵で数学の本を見つけてからはそれにのめり込む日々。数学など、建築家にでもならなければ金持ちの道楽にしかならない。あの蔵に残っているのも、前に村に住んでいた放蕩者が残した本だ。

 あの蔵は大きさだけで誰も使っておらず、いらないもの入れになっていた。あそこにも危ないものはないので親としては心配する要素はない。

 ただ、やはり人付き合いの悪さは致命的に感じられた。

「しかし村長のとこの息子、どうなんだい?」

 テーネの母、のみならず村人たち目下の問題は村長の息子であった。特にテーネの父は村長と親しいので話を聞くことが多かった。

「働きもせず、家でぐうたらしてるよ。うちの子もああならなきゃいいが……」

 村長の息子は相当なものぐさで、大した娯楽もないというのに一日中引きこもっている。村の金で買った本があるとはいえ、ずっと家にいられるというのは大したものだと村人は皮肉を込めて語る。

 なんでも村の外にある学校でいい成績を収めたが仕事にも就かず遊んで借金を作り、村まで逃げてきたそうだ。村長も頭を痛めており、解決した者に次の村長を任せてもいいと言うくらいだ。

「村長も断崖刑にしたいよってさ」

 断崖刑というのはこの村に昔から伝わる独自の刑罰である。村の外には小高い崖とその下を流れる川がある。その断崖は大人を横にした分より僅かに長い距離で対岸が存在し、村で重罪を犯したものはそれを飛び越えるという刑罰があった。

 飛び越して向こう岸へ行けば無罪放免だが、失敗して落ちれば死は免れない。岩肌の露出した崖の下は流れの早い川。成功して罰を逃れた者の記録はない。

「学があると他人を見下すのかねぇ、テーネが心配だよ」

「今んところは仕事しているが……どっかから学校行かないかって話が出なきゃいいが」

 両親としてはテーネの状況と村長の息子がどうしてもダブってしまう。村長の息子は昔から物覚えがよく、なら村に何か技術を持って帰ってくれないかと学校へ送り出したがこの結果。

 息子の将来に関する心配は尽きない。


 テーネは蔵に行くと、数学の本を引っ張り出す。かなりの巻数があるのだが、全てに目を通している。そして繰り返し、内容を熟読する。まるで物語でも読むかの様に、その内容を頭へ入れていく。蔵は日光が入るので、本を読むのには困らない。

「うん、検算だね……」

 数式を図にする方法、そしてそれを極めれば絵が描けるという魔法の様な話。一つずつ数えなくてもものの数を知る手段。一個ずつ試すことなく、組み合わせの総数を導き出す数式。それらはテーネの興味を大いに引いた。

 バスターの加護、というものを受ければ高級な道具を使わなくとも魔法が使えるらしいと彼は聞いた。だが、この数学は知ってさえいれば魔法の様に数を操ることが出来る。練習すれば自分にも出来る、習得を実感できる、それが魅力的であった。

 友達も誘ってみたが、みんな数ページめくっただけでやめてしまう。文字を読める者自体少ないが、テーネは一部の村人が読めるのを知って、そこから学んだ。その大人が村に届く知らせを皆に読み聞かせるのを見て、後からその文章を読んで勉強した。

 思えば、こんなことをする時点で他の子供とは興味の範囲が大きく違ったのかもしれない。


「ねぇ、せめて加護を受けて騎士にでもなれば絵にもなるんだけど……」

「うちの子ももう少し落ち着けばあれば……」

 夕暮れ時、母親たちは井戸端会議に花を咲かせていた。それぞれの子供が大きくなった後の進路について話しをしていた。テーネの母は彼の目鼻立ちが整っており美しい銀髪をしていることがちょっと自慢だった。家族から見れば心配になる大人しさも、他所からみればうちの子も少しは、と思ってしまう。

「ただいまー」

「あらおかえり」

 村の中で過ごしていたテーネは他の子供に先駆けて戻ってくる。

「うちの子も連れ戻さないと。最近魔物が出てね」

 外で遊んでいる子供の母親は魔物のことを心配していた。

「また? ナッツイーターじゃなくて?」

「牛みたいな魔物だよ、早く退治してほしいねぇ」

 バスターからすれば危険もなく弱い魔物であるが、何の力もない村人にとっては無条件で恐ろしい。魔王の隆盛と滅亡も、決して過去の話ではない。

「街へ依頼出しに行ってる最中じゃないか」

 この村では読み書きが出来る人物が限られる。魔物が出る度に街へその人物に行ってもらうのだが、その間を縫う様に新しい魔物が出ると、言葉に出来ない不安が大人たちを包む。

 こうして村の平和な一日が終わる。あとはいつもの様に夕飯を食べ、ささっとベッドで眠る。また日が出る前に起きる為に。灯りが貴重なこの時代と村では、日没と日の出に合わせて暮らしている。

 テーネはこの平穏がずっと続くと、何の根拠もなく思っていた。それはどの村人も同じだっただろう。あの事件が起きるまでは。


   @


 ある日、村に来客が現れた。遠くの街から来たという男は小奇麗な格好をしており、村長の家に案内された。そして、何故かテーネの一家も呼ばれることになった。

「私は村々を回って教育の発展に勤めるものです。孤児を保護し、手厚く支援するザナリウム園も活動の一つです」

 大きな村長宅、その応接間に村長とテーネの一家が集まり男から話を聞く。この部屋には質素な田舎の村には似つかわしくない調度品が多くあった。田舎だからと舐められない様に、市販品の剣や兜をさも豪華な置物かの様に飾っている。

「識字率の低さは将来、不利な契約を交わさせられる危険があります。また知識がないことで多くの命が失われています」

 男は教育の重要性を解く。だが村長の方は以前から男と面識があったのか、今回も男の話を聞かずに追い出そうとしていた。

「この家族を同席させろと言ったが、結局言うことは同じじゃないか!」

「大事なことなので、何度も言うのです。それに今回は、見どころのあるお子さんとぜひ直に話しをしたいと思いまして」

 男は村長を軽くいなし、テーネに問いかける。

「君は数学が好きだそうだね」

「うん」

 見知らぬ人なので緊張していたが、数学の話となると目を輝かせる。

「一人で勉強しているそうじゃないか。えらいね。どこか分からないことはないかい?」

「えっと……、サインコサインとかがあまり……」

 テーネは文字が読める様になるところから、ずっと一人で勉強している。そのため当然、何度読み返しても理解できない部分が出てしまう。もちろん、教えてくれる大人はいない。

「そうか、学校に行けばもっと詳しい人が教えてくれるよ。もっと難しい問題も出来る様になる」

「ほんとう?」

 彼は当然食いつく。ただ、村長は立ち上がって男を怒鳴りつけた。

「学校なんて、ろくに働かない怠け者を作るだけじゃないか!」

「それは個人の資質の問題で、教育そのものが悪いものみたいに言うのは早計だね。街では学校を出たあと、仕事をしている者も多い。バスターをする子もいるよ」

 村の学校に対するイメージは、村長の息子一人の為に最悪だ。だが、男は怯むことなく教育の重要性を訴えていく。

「村のみんなが文字を読めないのは不便だろう? 読める人が毎回、読んでやらねばならない。みんなが読めれば、看板に貼って置くだけで済むんだ。魔物が出ても、すぐ依頼がバスターに出せるよ」

「騙されないぞ! この香具師め!」

 テーネへの話を遮り、村長が怒鳴りつける。彼らは子供をたぶらかす男をもう信用できないと強引に村から追い出した。

「学校に行くのってダメなことなの?」

 あまりにも大人たちが強く男の提案を拒絶するので、テーネは学校というものが悪いものなのか両親に聞いた。男の言う通り、読み書きが出来る人が村に増えれば便利だろう。文字を読める少数に、魔物退治の依頼をするため遠くの街への往復を強いることもなくなる。

「村長とこのせがれを見てみろ、学校なんかいくと人を見下す怠け者になるんだ」

 だが、大人たちの意志は固かった。彼らが学校や勉強というものに馴染みがないのもあって、村長の息子一人の悪印象が強く出てしまっていた。


 それから数日経ったある日、平和な村を揺るがす事件が起きた。大人たちのざわめきは日の出前から聞こえており、テーネも目を覚ましてしまった。彼は非常に繊細なところがあり、嵐や雷雨の日は眠りが浅い。元々早起きなのが、大人の声で余計に目が冴えてしまった。

「あれ? 何これ?」

 ベッドの脇に、濡れた剣が置いてあった。剣なんて家にあったかな、と彼は少し考えたが、大人たちの騒ぎが気になったので起きてその方へ向かった。

「村長の息子が殺された?」

 話題の中心は、村長の息子だった。しかも殺されたとのこと。テーネは面識が無かったが、殺人なんてこの村で聞いたことがない。それも、家に籠っている息子のこと、きっと魔物ではあるまい。人が人を殺すという事件への恐怖で、彼の胸はざわついた。

「応接間から剣が無くなってる。きっと凶器はあれだ」

「じゃあ、あれをどこかに隠している奴が犯人か」

 村長によると応接間を飾っていたあの剣による犯行なのだとか。村人は無くなった剣を探すことに決め、散らばった。一体どうすればいいのか分からず、テーネはその場に留まっていた。こんな村で人殺しなど、顔見知りの誰かが剣で人を殺したという事実は子供が受け止めるにはあまりに重い。

「大変です村長!」

 解散からすぐ、テーネの父が剣を持って駆け付けた。それは彼のベッドの脇に何故か置いてあったものだ。

「これがテーネのベッドの近くに……」

「まさか……」

 村長がテーネを見る。その視線の意味を即座に理解し、彼は否定する。

「違う……ボクじゃ……」

「じゃあこの剣はなんだ? なぜうちの剣がお前の家にある? 濡れているが、これは血を洗った痕じゃないか?」

 元々口が上手くないテーネは、大人にまくし立てられて反論する力を持っていなかった。

「蔵の本を全部読んで、村長のとこの本が欲しくなったんじゃ……」

「勉強なんてやってるもんは人を見下すからな、そこでせがれと言い合いになって殺したんだろう」

 周囲の大人たちは勝手なことを言う。村長の家に上がったのは先日が初めてで、せがれが自分の興味を引く数学の本を持っているかなどは全く知らない。

「あ、あの……ボク……」

「大変だ! 井戸のつるべに赤い水が!」

「ここで剣を洗ったのか」

 何かを言おうとすると、示し合わせたかの様に不利な証拠が出てくる。まるで最初から、そうしようと決めていたかの様に。

「ボ、ボクは……」

「捕まえろ! 罪を認めさせるんだ!」

 テーネは忽ち大人たちに捕まり、拘束されてしまう。使われていない蔵、彼にとっていつもの場所に腕を上げる形で吊るされ、尋問が始まった。

「ぐ、ぅうう……」

 脚が付かない高さで吊るされ、体重を支える肩や縄で縛られた腕が痛む。味方をしてくれる両親はここにいない。村長が主導になり、結論ありきの問答をする。

「白状しろ! うちのせがれを殺したのはお前か!」

「ち、違う……」

 正直に否定する度、拳で顔を殴られる。悪い子への罰で行われる平手打ちなどとは違う。

「ぐはっ……」

 繰り返し殴られ、腫れあがるどころか青くなってしまうほどであった。鼻が折れ、唇を切って血を流すほど執拗な暴力に襲われた。脳が揺さぶられ、意識が遠のく。だが、自分はやっていないという事実だけは揺るがない。来客の男に呼ばれて以来、村長の家には上がっていないのだから。

「ぎゃぁあっ!」

 だが、これでもかと口を割らせるための苛烈な暴力は続く。角材で背中を殴打され、激痛に声を上げる。鞭の様な、丁度いい痛みを与える道具もそれを適切に扱う者もいない。ただ決めつけと無秩序な暴力だけが尋問の場を支配していた。

「ぐ、うぁああっ!」

 錐で太ももを突き刺され、鋭い痛みと血の温かさが全身を襲う。丁寧なことに両足ともに行い、あの手この手で自白を引き出そうとした。

「ぅ……ぅうう」

 長時間に渡る尋問で意識を失いかけると、水を掛けられて現実に引き戻される。

「ぷはっ……けほっ、けほっ……」

 こんな苦痛の時間が三日三晩続いた。テーネはそれでも全く罪を認めようとしない。そもそも自分がしていないのだから白状しようがない。村人が代わる代わる尋問するので、まるで休む暇がない。

「ぅ……ぐ……」

 長い間飲まず食わず、眠らずで暴力に晒され、テーネは衰弱し始めていた。流石にマズイと思ったのか、村長たちも相談を始める。

「このままではな……。またあの男が来た時に尋問で死なせましたでは何を言われるか……」

「せめて刑罰を受けさせてでないと」

 変なところで世間体を気にしており、テーネがこのまま死ぬのは都合が悪い様だ。村長は彼にある提案をする。

「テーネ、このままではお前の家族も殺人犯を家から出した罪で村八分にせねばならない。お前が罪を認めれば、家族は助けてやる」

「……っ、う」

 さすがに家族を引き合いに出されては敵わない。殺人などしていないが、家族まで村八分はどうしても避けたいところだ。

「それに、お前もただ死罪にするのではなく断崖刑にしてやろう。生き残るチャンスがあるぞ」

 そして飛び越えれば免罪される断崖刑の提案。家族の事もあり、これは飲むしかなかった。

「はい……ボクが、やりました……」

「よし、いいだろう」

 テーネは無実の罪を認め、罰を受けることにした。長い苦痛の時間は、彼から正常な判断をする能力を奪っていた。


 テーネの断崖刑には殆どの村人が詰めかけていた。近づくなという言い付けを守り、一度もここへ来たことのない彼は初めてこの断崖を目にする。向こう岸に渡る為のつり橋があるものの、深い谷の下に激しい流れの川。下を覗くと足がすくむほどの高さだ。対岸への距離は短く見えるが今のテーネには何より遠く感じた。

「これより、我が息子の命を奪った者とその凶器を断崖刑に処す!」

 村長の号令で刑罰は実行される。

 断崖刑はこの谷を飛び越えること。助走はなし。逃亡防止に両腕は縛られており、落ちれば間違いなく溺れ死ぬ。加えて、尋問で受けた暴力によって全身が痛み、特に錐を刺された脚には歩くだけで激痛が走る。おまけに重い剣も背負わされている。

(飛べばいいんだ、飛べば……)

 何度も自分に言い聞かせ、成功するイメージを頭に浮かべる。だが、下の川が誘う様に唸りを上げる。

 あまりの恐怖に歯の根は合わず、両目から涙がボロボロ零れる。何で自分がこんなことに。数日前まではいつもと変わらない毎日だったはず。だが飛べば、いつもの日常に戻ることが出来る。飛べばいいだけだ。飛んで向こう岸に行けばいいだけなのだ。

(お、お願い……なんとかなって……!)

 こういう時何に祈るのかテーネには分からない。だが、何かに祈りたくなる。足の痛みに耐え、助走もなしに渾身の力で跳ぶ。これでもう二度と歩けなくなってしまっても構わない。今だけ、自分の出せる以上の力を出して欲しい。

「っ……!」

 目を強く閉じ、脚に走る衝撃と痛みを感じる。それは落下したにしては短く、濡れた様子もない。ゆっくり目を開けると、地面に立っている。谷は背後にあり、飛び越すことに成功したことを理解するのに時間は掛からなかった。

「……やった!」

 成功したのだ。これで無罪放免、全部が終わった。喜びに再度、涙がこぼれる。その時、前から何かに押された。

「え?」

 テーネは後ろに倒れ、谷底へ落ちていく。彼を突き飛ばしたのは父親であった。頭に疑問が浮かぶより先に、頭部が岩肌にぶつかり強い衝撃に襲われる。それからしばらくして冷たい水に落ち、勢いのまま流される。

「げほっ……が、がっ……」

 両腕は縄で縛られており、泳ぐことが出来ない。流水が削った荒い岩石に流れのまま身体を打ち付け、少ない酸素が身体から吐き出される。入れ替わりに水が身体に入り込み、沈むのを手助けしていく。もがいてももがいても水面は見えず、体温を奪っていく。

(え……? ボク、死ぬの?)

 視界が暗くなる。もう、どうやってもここから助かる方法はない。諦めかけたその時、声が聞こえた。

『生きたいか?』

(誰?)

 誰か分からない声。あの祈りが今さら通じたのか。それとも自力で乗り越えたが理不尽にも突き落とされたのを見て助けにきたのか。

『生き残りたいのなら、加護を受けると誓え!』

 だが、その要求は単純。加護というのを受ければ、助けてくれるらしい。テーネに迷いはなかった。考える余裕もない。

(加護を受ける! だから助けて!)

『契約は成った!』

 声が去ると同時に、左頬に熱い痛みが走る。気づくと、見知らぬ河原に打ち上げられていた。全員は痛く濡れた身体は寒いが、死んではいない。縛られていた両腕も、縄の痕が残るが解放されていた。川は浅く、流れが緩やかになっておりかなり下流まで流されたことが伺える。

「これは……」

辺りを見渡していると、川面に自分の顔が反射する。痛みのした左頬には、黒地の模様が刻まれていた。その周囲は赤くぼんやり光っており、ただならぬものであることを感じさせる。


 こうして稀代の殺人者、テーネがこの世に生まれることとなった。大人の思惑がこれから、人類に深刻な出血を強いることになる。彼らはまだ、そのことに気づいていない。

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