おいかけるもの

バブみ道日丿宮組

お題:フォロワーの暗殺者 制限時間:15分

 人を追いかけてる。ずっとずっと追いかけてる。

 発見しては、殴りつけてそして開放する。

 それは一般的な復讐とは違う。

 終わらない闇ーー絶望を胸に抱かせる。

 敵に回したのはいったい誰で、自分が何をしてしまったのかを理解させる。

 今は10回目の鬼ごっこの捜索タイム。

 相手に発振器を植え付ければ、簡単に発見することはできるだろう。

 しかし、それでは相手は必死に逃げない。

 わからないからこそ、スリルがあるのだ。相手は苦悩を抱き続ける。

「……」

 手帳の中身を確認する。

 そこには生きてた頃の彼女の写真が入ってる。

 

 ーー笑ってる。

 

 血を吐き出しながら、生死をさまよってる彼女の姿はそこにはない。

 殺してと最後に彼女は言った。

 それを僕は、できなかった。

 愛する人を殺すことなんてしたくなかった。

 辛い声を出し続ける彼女は、やがて帰らぬ人となり、体温を次第になくした。

 ひどいことをしてしまったと思うのは、後になってだ。

 もう遅い。

 楽に死なせてあげればよかった。

 彼女の親には、どうして守れなかったのかと罵倒された。本当にその通りだと思う。

 彼女を死なせたのは、通り魔や凶悪犯じゃない。

 僕たちの友だちだった奴だ。

 彼女に欲情し、レイプし、傷を負わせた。

 同じようにしてやろうかと思ったが、考えを改めた。

 殺人犯になったら、きっと彼女が怒る。

 そう思い、半殺しにして開放することを思いついた。

 人を殺して指名手配されてるそいつが警察にいくことは死を意味する。だが、僕にあっても死に近い。

 悩むに悩むだろう。

 どうすればいいのか困惑するだろう。

 殺してくれと、5回目で言われた。

 8回目からは、姿を見せるだけで尿を撒き散らした。

 今回はどうだろうか。

 見ただけで発狂するか、あるいは失神するか。

 ツイッターを更新すると、発見したとか見かけたとかの情報が入ってくる。

 いい時代になったものだ。行方不明になったと伝えれば、誰かが教えてくれる。

 何をしてるかは誰も考えない。

 一種のゲームがソーシャルメディアでは起こり続ける。

 今度は北西に行ってみようかな、とつぶやく。

 あいつも見てるかもしれない。それで南東に向かうかもしれない。

 真実はわからない。

 だからこそ、あいつは必死になる。

 いっそのこと、死ねたらいい。

 そんなことを思ってるかもしれないが、知ったこっちゃない。

 復讐を完了させる気はない。

 いっしょうくやめ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おいかけるもの バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る